この4月に娘は高校生となった。

教科書を入れ替えると共に使わなくなった本やノートを整理することにした。

本を整理していくうちに、衣類やら文房具やら使わないモノやらと、目に入るものを整理し始めた。

なかには想い出の品もあり、捨てる決断を強いられるモノもあったようだ。
こうして娘の断捨離もどきが始まった。

 

 

断捨離とは、モノ、情報、人間関係など、不要品や多すぎるものを断ち、捨て、離れることで、身の回りや心を整理して自分の生き方を見直す意味があるという。

「部屋の乱れは心の乱れ」という言葉をよく聞くが、たしかに部屋を片付ければ気持ちもさっぱりする。

 

ある説によると、断捨離は心を整理する以外に決断力を養う意味もあるとか。

「こだわりを捨てる、執着を捨てる」という概念だ。


ありふれた情報、モノ、食べ物によって決断が鈍るという。

思えば私もメニューの多い飲食店では、なかなか注文が決められない。

 

モノ以外にも、お金に対するこだわり、異性に対するこだわり、見た目に対するこだわり、自尊心に対するこだわり…。

そんなこだわりが決断力を鈍らせる。

 

 

 

アドベンチャーレースでは決断を強いられる場面が多い。

ルート選択、装備選択、睡眠の時間や場所の選択、食料選択など、あらゆる場面で選択が要される。
この選択が勝敗に大きく影響するのだ。

 

「本当に強いチームは装備も食料も少ない」
長年アドベンチャーレースを経験している田中正人は言う。
 

ある外国強豪チームのレース食料はジャーキーとポテチのみ。
わずかな種類の装備や食料しかない、つまり選択肢がないのだ。
そうなるとかえって思考がシンプルになり、決断が速くなる。

ノーチョイスという事態を自ら作り出し、考える時間を省く戦略だ。

 

もちろん装備の軽量化は命に係わるため、そのためのトレーニングを充分に積んでいるのは言う間でもない。

 

睡眠時間も極端に少ない。
眠気は人によって異なるが、全員で「ここまで行こう」と決めておけば、どんなに眠くても自分たちで決めた以上、そこまで行くしかない。

 

余分なモノは削ぎ落す。
強いチームは、それができるだけの決断力が備わっている。

 

 

ふと考える。

ネットに溢れる無駄な情報も、それを見ている時間も、過去の辛い出来事も、人と比較するだけの自尊心も、マイナスに働くだけの人間関係も…すべて断捨離し、身の回りを必要最低限なモノだけにし、正しい情報を見極め、本当に大切な人との関係を温める。

 

そう思うと、なんて心が豊かになるんだろう。

 

本当に大切なモノは何?

富? 名誉? 自尊心? 名声?

ずっとずっと笑いあっていたい人、友達、仲間は誰?

高価な品を購入すると、その時は満たされるがその満足は長続きはしない。
衝動買いをすると、その時は満たされるが長くは使わない。

「いつか使う」は永遠に使わない。


削ることによって心が豊かになる。
一見相反する行為だが、これが断捨離だ。

 

次々と溢れる出る情報やモノに囲まれた社会の中だからこそ、自分にとって本当に大切な「ノーチョイス」という事態を作り出すことが求められるのかもしれない。

 

とは言いつつも・・・
モンブランか、チーズケーキか、フランボワーズか
やっぱり今日も決断できないのである。