Team EAST WIND初参戦となるGODZONE(ニュージーランド)は無事に幕を閉じた。

 

出国直前にぎっくり腰となった隊長。
現地入りしてもなお、鍼治療やカイロプラティックを試みながら、どうにかスタートラインには立てたものの調子は万全ではなかった。

チームは、ある意味ハンディキャップを背負っての戦いとなった。

 

そんなレースを見ているうちに、先月隊長と行った名古屋市の養護学校での講演会を思い出した。

 

始まりは、私の中学時代の同級生からの連絡だった。
現在、彼女はキャリアコンサルタント(全ての生徒が自分らしい生き方を考え、見つけ、幸せな生涯を生きていくための支援)として、その養護学校に配属されていた。

 

同級生には「ほぼ家と学校の往復で生活をしている生徒たちに外の世界を見せたい。チームワークを自分事として感じてもらいたい」という想いがあった。

 

そこでアドベンチャーレースという、生徒たちにとっては未知の世界にいる私たちに声をかけてくれたのだ。

 

しかし隊長に養護学校での講演経験はない。

しかも同級生からは「持ち時間は45分間。ずっと座って聞いていられない生徒もいる。できれば何か体験もさせたい」という要望。

何か少しでも心に残る事を。

少しでもチームワークを体感できる事を。

同級生との話し合いは数カ月間に及んだ。

 

何度も何度も内容を精査し、どうにか本番数日前に講演内容を決定した。

対象は高校生。

持ち時間45分。
前半はアドベンチャーレースについての話、後半はミニレースという内容となった。

 

初めに隊長が体育館二階から懸垂下降で登場。

生徒からは驚きの声があがる。

スライドを使ってアドベンチャーレースの話をし、すぐにミニレースへ。

 

レースと言っても順位を競うのではなく、自分たちのタイムを縮める事への挑戦である。

1チーム4人+4人の8人。

4人が1チームとなりボールを運び、次の4人に渡すという流れ。

最初に出たタイムから話し合いをしてもらい、いかにタイムを更新するかというものである。

 

チームによっては4人に満たないところがあったので、先生方、隊長、私が人数不足のチームに入った。

 

まずはチームに分かれて誰と誰が組むかの話し合いが始まる。

ここは、なんとなく近くに座っている4人が組むことに。

 

生徒たちの状況は様々。
歩行の難しい生徒も少なくない。

車椅子の生徒もいる。
どうなるんだろう・・・。

不安が過る。

 

そうこうするうちに1回目のタイム計測がスタートした。

 

と・・・
レースの様子を見た瞬間、不安は一気に吹っ飛んだ。

 

体力的に進める生徒が歩行の難しい生徒のフォローをしている。

「〇〇、こっちだよ。ここ持って!」

 

車椅子の生徒は、先生が起して肩を担ぎトライしている。

どの生徒も、どんな状況の生徒も参加している。
それぞれが全力で、でもチームを乱すことなく、取り組んでいる。

 

そして2回目の計測をするにあたり、話し合い。

 

私のいたチームにも身体的ハンディのある生徒もいたが、それを指摘する生徒は誰もいない。

というか、そもそもそれは当たり前の事であり、「彼をどうするか」ではなく「みんなでどうするか」を話し合い始めた。

 

結果、若干のチーム編成をして2回目トライ。
タイムは大きく更新された。

 

彼らを見ていて、自分がとてつもない勘違いをしていたことに気が付いた。

ハンディを気にしたのは私であり、生徒たちはそれをハンディではなく、彼は彼自身と捉えていたのだ。

歩けない人がいたら自分が支える。

誰か外にはみ出てしまっていたら、無理矢理引き込むのではなく、自然に声をかける。

 

これは彼らもまた、外の世界では誰かに助けられていることを丁寧に理解しているように見えた。

すべてが自然に出るアクションだったからだ。

 

同じ年頃の私の娘はどうだろう。

こんなにも自然に人を支えることができているだろうか。

こんなにも人に優しくしているだろうか。

この子たちは、こんなにも温かい心をどうやって学んだのだろうか。

 

逆に健常と言われる側の我々。

人の欠点を罵ったり、あざ笑ったり、陰口を言ったりしていないだろうか。

だとしたら、その方が人間として、よっぽど学ぶべきことがある。

 

 

さて、話はGODZONEに戻る。

ハンディを抱えてスタートをしたTeam EAST WIND。

 

隊長はほとんど空荷で、陽希とヨネがそれを背負う。

陽希が体調を崩した時は、隊長が陽希の荷を背負うこともあった。

そして最後まで弱音を吐かず荷物を背負い続けたヨネは、自身も塹壕足になっていた。

 

ハードなレースだったと思う。
それぞれ言いたい事もあっただろう。

しかし互いが互いを思いやった末のゴールテープだったのは間違いない。

 

レースを終えて、4人全員から同じ言葉を聞いた。

「今回はメンバー間のストレスを感じなかった」

 

 

 

できない誰かを責めたところで、何も変わらない。

できない誰かがいるなら、それを嘆くよりも、それを責めるよりも、今自分ができる事を考え、できる事をすればいい。

そうして支え合って進めば、必ずゴールにたどり着く。

 

養護学校の講演とGODZONE。
学びの大きな出来事にだった。
心にほんわかとした、それでもって強烈な物を残してくれた。