不納欠損(役所の内部的処理)したからといって債権回収を怠れば、税負担公平性や行政の信頼性を損なう

(春日井市議会 本会議 末永けい)

先の本会議において問題のある春日井市役所の債権回収・債権管理のあり方について市長に認識を問うたのですが、要領を得ない答弁でしたので、委員会において再度取り上げました。

また、本来こうした問題を指摘することは、議会はもちろんなのですが、本来は監査委員の仕事であると痛感しました。監査が機能していれば行政運営上極めて重要な債権管理の問題などがうやむやになることはないはずです。

令和元年度春日井市公営企業会計決算審査意見書その1 より)

認定第11号 令和元年度春日井市水道事業会計決算

(春日井市議会 建設委員会 末永けい)

末永けい

春日井市公営企業会計決算審査意見書の39ページですが、不納欠損処分の金額と人数というふうにありまして、税抜きですが、元年度分に関しては404万7,000円、人数は1,004人と記載があります。1人当たり平均約4,030円という状況です。先日の本会議質疑でも申し上げましたが、いま一度、不納欠損処理とは本来どういうものなのかということを申し述べます。不納欠損処理は、既に調定された歳入が徴収し得なくなったことを表示するために行われる会計上の内部的な整理手続きであり、それ自体は何らの法的効果を有するものではありません。  そこで、私債権である水道料金債権についての本市の取扱いについてですが、不納欠損処理をしたとしても債権・債務は存続しているにもかかわらず、不納欠損処理をしたら運用上もう積極的にその債権の徴収・回収を行っていないということですが、その理由を伺います。

大沢上下水道業務課長 水道料金の未収金の対応といたしまして、夜間折衝や給水停止など、日頃より適正な徴収事務を行っており、その結果、令和元年度の決算では、平成29年度調定分といたしまして現年度から2年経過後には99.88%となり、高い収納率を維持していると考えております。  不納欠損処理の対象は、居所不明、破産、死亡の理由で徴収の見込みがなくなったものであることから、企業会計としての事務コストも考慮いたしまして積極的な回収は行っておりません。

末永けい

水道料金債権は、私法上の原因に基づいて発生する債権とされており、時効期間が経過したとしても、債務者が時効を援用して初めて時効の効力が生じ、権利が消滅します。市税のように、時効期間の経過により時効の援用がなくても直ちに時効の効力が生じ、権利が消滅する公債権とは異なっております。  したがって、市が不納欠損処理をすることによって債権が消滅するわけではありませんので、勝手に原課の判断で徴収を行っていないことは問題があるのではないでしょうか。  しかしその一方で、一定期間十分に徴収努力がなされた債権について一律にいつまでも追い続けるべきだというのも、私からは申し上げにくいです。やはり債務者にも福祉的配慮の観点から考慮すべき事由がある場合があるでしょうし、また、今言われましたように、徴収コストや職員の労力もばかにはなりませんから、新たに発生した債権の徴収事務などにマンパワーを充てるべきだからです。  そこで、水道料金債権について、県内の他の自治体はどのように扱っていると把握されておられるのでしょうか。不納欠損処理の基準、不納欠損処理後の債権管理方法、徴収不能債権について債権放棄を行っているかどうか、債権放棄を行っている場合はどのような基準で行っているのか、債権徴収の専門部局への委託などの状況について伺います。

大沢上下水道業務課長 県内の主要都市ということで、名古屋市・豊橋市・岡崎市・一宮市・豊田市の5市の状況についてお答えをいたします。  まず名古屋市・一宮市につきましては、居所不明、破産、死亡の要件に該当する者を対象といたしまして、不納欠損処理を行い、簿外管理をしております。その後、不納欠損処理をした債権について条例により債権放棄を行っております。  豊橋市・岡崎市・豊田市につきましては、条例により、居所不明、破産、死亡、生活困窮、時効を要件といたしまして、債権放棄を行い、その後不納欠損処理をいたしております。  また、債権の回収を専門部局へ委託している市はございません。

末永けい

ありがとうございます。他の自治体では、徴収努力を行った後に、きちんと債権放棄の手続きを行っているということが分かりました。  一方で本市は、水道事業に限らずですが、不納欠損の考え方や各課の対応がばらばらで、また他市のように徴収不能債権について債権放棄の基準もなく、放棄の手続きも行っていません。不納欠損処理については、債務者が時効の援用や市が債権放棄をしたものについて行われるべきものです。残念ながら本市の職員には、不納欠損処理をしたものはもう徴収をしなくてもいいかのように勘違いされている方も多いです。恣意的な債権管理によって、住民間の公平性が害されてはなりません。これは個々の職員や上下水道部だけの問題ではなく、基準や条例を整備していない市全体の問題です。市全体として私債権の取扱いをどうするべきか考えていただきたいと思います。  それから本来こういうことは、監査委員が市に対して指摘すべきことです。監査委員にお尋ねしますが、こういう問題が本市にあるということは御認識されておられますでしょうか。

森代表監査委員 今、委員の御質問あった内容についてお答えをさせていただきます。監査委員といたしましては、従来より都市監査基準あるいは春日井市が独自に定めております監査基準にのっとり、各部局からの定期監査の場面あるいは今回のような決算審査の場面で、不納欠損あるいは未収額等に関するものについても、適宜内容について審査をしております。ですから、このような状況にあるということについては十分認識しております。

末永けい

こういう状況にあるということは認識されているということであれば、ぜひ監査意見書とかに記載するべきではないのでしょうか。

森代表監査委員 まず、私がここに出ている立場について、お話をさせていただきますと、監査委員は自治法によって独任制ということになっております。そして、監査の意見あるいは審査の意見というものについては、意見の一致をする必要がございます。その点で、結果を出すにあたっては委員の合議制による意見の一致を見るということが必要になっております。  審査書の意見等につきましては、今回記載のとおりでございまして、そこの中に不納欠損に関する考え方についてしっかり書かせていただいていると思っております。また、現下のコロナの状況下において、納付義務者に対して、市として真摯に対応していただけるようなことも、なお書きとして付記をしておりまして、監査意見書の中に書いた内容が全てでございますので、これも監査委員の一致した意見であるということをお答えさせていただきます。  なお、私個人的な意見については、申し述べることについて差し控えさせていただきます。

末永けい

今は形式論のことで言われましたし、お立場も分かるんですけども、実際の監査の業務においては、定期監査もありますし、行政監査もありますので、簿外債権とか私債権の取扱いに関しては、問題意識を持たれているのであれば、やはり監査の立場から市に対してしっかりと指摘をしていただきたいというふうに思いますし、仮にこの審査意見に書かないにしても、口頭レベルでしっかり原課のほうには、原課というか、市全体に対して、注意というか、指摘していただきたいと。別に文章化したものだけが全てではないと思いますので、しっかり監査の立場からそれを促していただきたいなというふうに思います。以上です。

 

【参考】

令和元年度春日井市公営企業会計決算審査意見書その1 

【末永けい関連質問】

不納欠損(役所の内部的処理)したからといって債権回収を怠れば、税負担公平性や行政の信頼性を損なう