市内企業,商店街等における事業承継について、市当局の現状認識と今後の施策の方向性について質問を行いました。

 産業構造の変化やIT化の進展により,企業が置かれている環境は日々目まぐるしく変化をしています。顧客のニーズなど様々な外部の変化に対応できずに,企業や店舗が企業競争の中で淘汰され入れかわっていくことは経済のメカニズムでは自然なこととも言えます。しかし,市民や住民に親しまれている商店街の店舗や技術力のある企業などが,外部の事業環境による要因ではなくて,自社の内部要因によって,すなわち今回議題とする後継者不在などで事業承継が円滑に進まないことで廃業せざるを得ないことは,とても残念なことですし,雇用や技術,ノウハウが失われることは,市内経済や地域にとって大きな損失と考えられます。
 我が国の中小企業経営者の年齢層は高齢化が進み,事業承継に取り組まないと多くの中小企業が事業廃業に陥るという見方があります。そんな中で,中小企業庁は,中小企業経営者の高齢化の進展等を踏まえ,円滑な事業承継の促進を通じた中小企業の事業活性化を図るため,事業承継に向けた早期・計画的な準備の重要性や課題への対応策,事業承継支援体制の強化の方向性等について取りまとめた,事業承継ガイドラインを策定しました。さらに,平成30年度税制改正において,事業承継時の贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制が大きく改正され,10年間限定の特例措置が設けられました。こうした国の後押しもある中で,本市としても自治体として市内の企業や商店街の各事業者が置かれている状況にしっかりと寄り添い,市内の事業者が円滑に事業承継を進められるように後押しする取り組みが必要であると考えます。(末永けい 本会議一般質問)

(経済産業省中小企業庁「事業承継ガイドライン」について)

末永けい
(1)企業,商店街等の状況について

 本市の事業所の開業件数,廃業件数はどのような状況なのかお尋ねします。また,第3次産業振興アクションプラン策定に係るアンケートにおいて,事業承継に関する設問に対する回答の集計では,どのような結果が得られたのでしょうか,お尋ねします。
(2)市の取り組みについて

 事業承継に係る取り組みとして,本市は現在どのようなことを行っているのかお尋ねします。

(市の答弁)

 (1)の企業,商店街等の状況につきましては,平成26年経済センサス基礎調査によりますと,平成24年から平成26年の間における新設事業所数は約1,600件,廃業事業所数は約1,700件となっております。なお,アンケート調査の結果では,事業者及び商店街ともに事業承継が大きな課題となりました。
 (2)現在の市の取り組みといたしましては,研修事業助成金により,事業者が事業承継をテーマとする講座を受講する際の費用を助成したり,まちの担い手養成塾事業助成金により,商店街の若手後継者を発掘・育成するために必要な費用を助成したりしております。

 

末永けい

 アクションプラン策定に係るアンケート調査結果における,事業承継や後継者に係る調査結果の詳細,具体的な分析についてご説明をお願いします。

(市の答弁)

本市の取り組みの満足度につきまして,事業承継や人材育成の支援については,「不満」「どちらかというと不満」の合計が,「どちらかというと満足」「満足」の合計を上回りました。
 本市の取り組みの今後の重要度につきまして,事業承継や人材育成の支援については,「重要」「非常に重要」の合計が,「重要ではない」「さほど重要ではない」の合計を上回りました。
 商店街の大きな問題については「経営者の高齢化による後継者問題」,商店街の後継者対策については「対策はとっていない」,過去3年間に退店した主な理由については,「商店主の高齢化・後継者の不在」の回答数がそれぞれ最多となりました。

 

末永けい

 アンケートの調査結果によれば,事業承継の意向として,「ぜひ事業承継したい」が45.3%,「できれば事業承継したい」が30%になっており,合計75.3%の事業者が「事業承継の意向がある」との結果になっています。一方で,「後継者は決まっていないが候補はいる」が35%,「後継者は決まっておらず候補もいない」が31%になっており,「後継者は決まっていない」事業者が合計66%にも上っております。つまり,75.3%の事業者が事業承継の意向がある中で,66%もの事業者が後継者が決まっていない状況が明らかになりました
 そんな状況の中,春日井市における事業承継や人材育成の支援の取り組みの今後の重要度について,「非常に重要」と「重要」を足した合計が57%,「重要ではない」と「さほど重要ではない」を足した合計が12.7%と,事業承継や人材育成の支援について市内事業者の重要度は非常に高くなっている中で,春日井市における事業承継や人材育成の支援の取り組みに対する満足度として,「不満」と「どちらかというと不満」を足した合計は41.6%,「満足」と「どちらかというと満足」を足した合計は24.3%と,春日井市における取り組みに対して不満が満足を大きく上回っています。事業承継や人材育成に係る現在の本市の支援策や取り組みは,市内事業者のニーズを捉えていないと考えられます。
 したがって,事業承継や後継者育成の市の施策について,支援内容の抜本的見直しや強化,改善が必要な状況でありますが,市は今度どのように対応するのかお尋ねします。

(市の答弁)

アンケート調査の結果から,事業承継などが大きな課題であると判明いたしました。市としましても,円滑な事業承継などによる雇用の確保や事業価値の引き継ぎについて,次期産業振興アクションプランを策定する中で検討してまいります。

 

末永けい

 他の自治体の取り組みを参考にしたり,事業者へのヒアリングなどを通じてしっかりとした施策を講じていただきたいと思います。
 それから,アクションプラン策定に係るアンケート調査において,さらに注目していただきたい点としては,補助金・助成金の活用,公的融資制度の活用で相談した機関という項目です。調査結果によれば,「取引先の銀行」37.3%が最も高く,次いで「春日井商工会議所」34%,「税理士,会計士またはその所属事務所」が27.7%となっています。事業者にとって金融機関や商工会議所,税理士,会計士などが身近な相談先であるとうかがい知れます。これらの機関は,市内の事業環境やさまざまな経営に関するノウハウを保有し,精通していますし,事業承継には税理士など専門家の協力を必要とする場面もあります。
 したがって,市が市内の事業者が円滑に事業承継を行うことを効果的に支援するためには,各金融機関や商工会議所,税理士などの専門機関と有機的な連携を行っていくことが必要と考えますが,所見をお尋ねします。

(市の答弁)

既に金融機関や商工会議所などとはさまざまな連携を行っておりますが,今後の支援のあり方や方向性として参考とさせていただきます。

 

(参考)

事業承継ガイドラインについて(経済産業省中小企業庁)

事業承継税制特集(財務省国税庁)

平成30年度から事業承継税制が大きく変わります(経済産業省中小企業庁)

春日井市商工業振興審議会