市民の皆さまや企業等と公共データを共有することは、市や地域、市民生活の課題を協働で解決するための基盤となります。行政だけでなく、企業やNPOなどの民間においても、子育てや医療・福祉、交通、観光など他分野で、市民生活の利便を高める新サービスの創出や災害時に有用な情報提供されることが期待されます。したがって、市に対して積極的なオープンデータの提供(公共データの民間開放)を提案しました。(末永けい 本会議一般質問)

末永けい

 オープンデータとは,国や地方公共団体等が保有している公共データを社会で効果的に利用できるよう,機械判読に適した,例えばXMLやCSVなどのデータ形式でかつ二次利用可能な利用ライセンスにより公開することで,住民や事業者等のさまざまな主体による新たなサービスや事業の創造を目指す取り組みのことを言います。オープンデータの推進により,行政の透明性の向上や経済の活性化など多方面への効果が期待されており,国や地方自治体において積極的な推進が期待されます。
 国においては,平成24年に高度情報通信ネットワーク社会推進本部が決定した,公共データは国民共有の財産であるとの認識を示した電子行政オープンデータ戦略等に基づき,オープンデータの取り組みが推進されてきました。続く平成27年には,新たなオープンデータの展開に向けて及び平成28年にはオープンデータ2.0がそれぞれ決定され,データの公開を中心とした取り組みから,データの活用を前提とした課題解決型のオープンデータの推進に発想を転換する方向が示されました。
 そして,平成28年に公布・施行された官民データ活用推進基本法は,官民データ活用の推進により,国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与することを目的としており,国,地方公共団体,事業者が保有する官民データの容易な利用等について規定されています。
 国のオープンデータ基本指針,平成29年5月30日によれば,国,地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち,国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工,編集,再配布等)できるよう,1,営利目的,非営利目的を問わず,二次利用可能なルールが適用されたもの,2,機械判読に適したもの,つまりコンピュータプログラムが自動的にデータを加工,編集等できることに適したもの,3,無償で利用できるもののいずれの項目にも該当する形で公開されたデータをオープンデータと定義しております。
 また,同基本指針では,公共データの二次利用可能な形での公開と,その活用を促進する意義・目的を国民参加・官民協働の推進を通じた諸課題の解決,経済活性化,行政の高度化・効率化,透明性・信頼の向上などとしています。
 また,オープンデータに関する基本的ルールとして,公共データは国民共有の財産であるとの認識に立ち,法令,予算を含む政策の企画・立案の根拠となったデータを含め,各府省庁が保有するデータは全てオープンデータとして公開することを原則とするとあります
 地方公共団体の取り組みについては,官民データ法第11条第1項では,地方公共団体は,国と同様に保有するデータを国民が容易に利用できるよう必要な措置を講ずるものとされており,地方公共団体は,官民データ法の趣旨及び基本指針を踏まえてオープンデータを推進することが求められるなどとされています。
 市としてオープンデータを推進する意義を整理すれば,次のようなことが考えられると思います。
 1,行政の透明性の向上
 2,市民や民間団体等との公的データの共有及び協働による地域課題の解決です。市民や民間団体等と公的データを共有することは,市の課題を官民協働により解決するための基礎となります。また,民間のデータと組み合わせることで,民間からも生活利便を高めるサービスや,災害時に有用なサービスを提供できるようになります。
 3,地域経済の活性化です。市内で活動する企業やNPOなどが公的データの編集,加工,分析などを行い,市場経済の幅広い段階で活用することで,子育てや医療・福祉,観光など多彩な分野において,市ならではの資源及び人材を生かした新たなビジネスまたはサービスが創出され,経済の活性化及び市内中小企業の振興に寄与することが期待されます。
 4,行政における業務の高度化・効率化です。政策の計画立案や決定過程等において,公的データを効果的に分析することにより業務の高度化が図られます。
 オープンデータの民間活用が広がり,市民や民間企業の利便性向上が期待されている中で,春日井市の現在公開しているオープンデータを確認しましたが,自治体がオープンデータを推進する趣旨や国の動き,他の自治体との取り組みとの比較,公開しているデータの数、種類などを鑑みますと,本市はもっと努力が必要だと感じ,全庁的に推進体制を構築するところから必要と考えますので,質問します。
 (1)オープンデータの提供についてです。
 まず,春日井市のオープンデータの提供の現状と今後の取り組みの考えについてお尋ねします。

(市の答弁)

オープンデータ提供についての現状と今後の取り組みでございますが,本市では,愛知県を初め県内54の自治体が参加するあいち電子自治体推進協議会においてオープンデータの研究を行っており,協議会が試行運用中のオープンデータカタログサイトで,現在,人口,バス時刻表,AED設置場所など7種類のデータを公開しているところでございます。
 オープンデータは,これまでデータ項目,名称などについて統一されたルールがありませんでしたが,昨年12月22日に国から,地方公共団体オープンデータガイドラインにより,推奨するデータやデータ項目の標準様式が示されましたので,全国統一的なデータ整備が可能になることから,本市といたしましても公開可能なデータについて整備を進めているところでございます。

 

末永けい

 市民や事業者などから,利用したいオープンデータや希望するデータ形式等の提供の依頼や御要望があったら,現在春日井市は対応できる状態になっているのかということが気になります。あわせて,オープンデータの推進に当たっては,市民や企業が使いやすい形で,利用者ニーズを的確に反映しながら進めることが重要です。利用者ニーズを把握の上,ニーズに即した形でのデータの公開に取り組むことが求められています。
 オープンデータの市としてのポータルサイトを構築し,市民から見たときのデータを提供する担当の窓口はどこになるのか。相談窓口を明確にして,オープンデータに係る利用者のニーズ・意見を積極的に収集・把握し,個別の問い合わせ等に対応できるようにしていただきたいと思います。
 それから,対応するのはどこの課になるのか。生データを保有・管理している原課なのかあるいはほかの担当課なのか。オープンデータとして提供可能な状態へ加工するのは原課なのかあるいは他の課なのか。
 オープンデータ化に際しては,個人情報保護及び著作権やライセンスについての判断やデータが大きい場合などの提供方法,データの機械判読性の水準についても協議や判断が必要になります。企業や個人からのオープンデータの公開に関する要望はどのように受け付けていくのか。また,データ公開についての判断はどのように行うのかについて,市の考えをお尋ねします。

(市の答弁)

本市では市のオープンデータをまとめたサイトを構築することとしております。その管理は情報システム課が行ってまいります。御質問のオープンデータへの要望を受け付ける申請フォームにつきましても同サイトで作成する予定でございます。また,データ公開につきましては,市のオープンデータ推進ガイドラインにのっとり,データ保有課と情報システム課で協議し,判断してまいります。

 

末永けい
 続いて,(2)推進体制についてです。

 企業や市民の皆様にオープンデータを積極的に提供していくためには,全庁的に取り組み,しっかりとした推進体制を構築する必要があります。つまり,生データを保有しているのはそれぞれの原課ですが,オープンデータに加工する際の技術的なノウハウや個人情報やライセンスの取り扱いなどの運用基準がなければ,各課においてオープンデータ化が積極的に推進されることは難しいと思います。
 したがって,オープンデータを加工,提供するための市としてのオープンデータ推進に係る指針や推進に関するガイドラインを策定する必要がありますが,所見をお尋ねします。
 また,本市においては,自治体がオープンデータに取り組む趣旨や意義を含めて,各課や職員に十分に周知できていますでしょうか。全庁的な普及及び理解を図るための職員に対する研修等は実施していますでしょうか。データを保有する課の職員に対する研修等を充実する必要があると思いますが,全庁的にオープンデータの普及及び理解を図るための推進体制についても,あわせて所見をお尋ねします。

(市の答弁)

推進体制についてでございますが,オープンデータは二次利用可能な形式で公開することが必要と考えており,現在情報システム課におきまして,市のオープンデータ推進方針を定めるよう準備を進めているところでございます。
 また,データ保有課の担当者向けにオープンデータを公開するための情報共有を図るとともに,職員教育を行ってまいります。

 

末永けい

 オープンデータの公開・活用については,オープンデータ・バイ・デザインの推進が求められます。オープンデータ・バイ・デザインというのは,公共データについて,オープンデータを前提として情報システムや業務プロセス全体の企画,整備及び運用を行うことです。
 本市においても,オープンデータ・バイ・デザインの考えに基づき,行政保有データを利用者が活用しやすい形で公開するために,行政手続及び情報システムの企画・設計段階から必要な措置を講じることを全ての部局において意識していただきたいと思います。つまり,日ごろからデータは提供することを前提に加工,管理しておくべきということです。
 生データを保有している各課において,データは再利用することを考慮したデータの構造(例えばタグのつけ方,表の形式)とするよう努めてください。そうしたことも策定するガイドラインにしっかりと盛り込んでいただくよう要望します。

 

末永けい
 (3)利活用推進のための連携についてです。

 オープンデータの提供や利活用の推進については,他の自治体と広域で取り組むことで,よりデータ利用者の利便性が高まると思いますが,所見をお尋ねします。
 また,オープンデータの利活用を推進するためには,自治体以外の企業や大学などとも積極的に連携していくべきだと思いますが,所見をお尋ねします。

(市の答弁)

自治体以外との連携につきましては,これまであいち電子自治体推進協議会を通して県内各自治体との連携を図ってまいりましたので,引き続き連携していくとともに,現在,地理情報システムを使った行政情報の活用について共同研究を行っている中部大学とオープンデータの活用についても研究を進めてまいりますので,よろしくお願いいたします。

 

(参考)

春日井市オープンデータの推進

春日井市オープンデータ一覧

推奨データセット〔内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室〕

尾張旭市オープンデータ