《トロイの木馬》でお馴染みの、トロイ(トロヤ)の遺跡を発掘した"あの偉人”の物語です。

 

「古代への情熱」

H・シュリーマン著 池内紀訳 角川ソフィア文庫

(193頁)

 

 ドイツの片田舎で生まれ育ったハインリヒ・シュリーマン―。

 

 彼は幼い頃から、地方に伝わる伝承や伝説に胸をときめかせる少年でした。

 そして神父であった父が読み聞かせてくれた《トロイの伝説》が、彼の人生を変えました。

 

『その物語(ホメロスの書いた叙事詩『イリアス』の事です)に書かれている場所を深く掘れば、トロイの街が出て来るに違いない』

 

 かつてそこに城塞や門があったのならば、探せば(掘れば)、必ず痕跡くらいは出てくる筈だと考えたのです。

 

 ―"時間”に関しては"過ぎ去る”とか"流れる”なんて表現が用いられますよね。でも、物理的には"重なる”という事も言えるんです。

 

 シュリーマンは自叙伝のようなモノを残していません。

 いつかは自分の体験を綴ったモノを発表しようと思っていたかもしれませんが、病の為に急死してしまいました。

 

 彼の死後、発掘調査による発見や歴史的考察などをまとめた著作『イリオス』の中の自伝的部分を再構成して生まれたのが本作のようです。

  

 それで今回は、発掘調査時の苦労等を豪快にすっ飛ばしまして―

 

 私が1番興味深く思った部分だけ言及しようと思います真顔

 それは―。

 

 シュリーマンが語学の達人であったことです。

 

 ※

 

 彼の習得した言語は以下の通り―。

 

 英語・フランス語・オランダ語・イタリア語・スペイン語・ポルトガル語・ロシア語・ギリシア語・そして、ラテン語―。

 

 まだ他にもあるのかもしれませんが、これは普通に凄い。

 

 若い頃、仕事を変えながらヨーロッパ各地を転々としたシュリーマン―。

 

 生活の為に必要だったのでしょうが、後に彼は日記を母国語(ドイツ語)ではなくフランス語で書いていたりします真顔

 

 そして、そんな彼の勉強法というのが―、

 

 ごく簡単な方法であって、大きな声を出して原文を読む。訳はしない。毎日きっと一時間はあてる。そのことばで自分が関心のあることを書いて見て、先生に直してもらう。直してもらったのを暗唱する。つぎのときに前日直されたところを声に出していってみる。

 

 ―これは言ってみれば暗記の極意な気がします。

 私も暗記が得意でしたので、似たような方法を実践していました。

 

 読む(視覚)、書く(視覚&触覚?)、声に出す(聴覚)

 

 こんな感じで複数の五感を駆使すると頭に入りやすいんです。

 

 ※※

 

 シュリーマンの語学習得の方法は、徹底的に"形から入”るでした。

(文法は後から自然に身につくようです)

 

 暗記して、それをネイティブの人に聞いてもらう。そしてダメな部分を直してもらう。この繰り返しの他に、文章を暗記し、それを復唱する。

(他に小説をまるっと暗記したりもしていたみたいです真顔

 

 シュリーマン「これが最良の勉強法である」と言い切っていますが―

 

 やっぱり、"欧米系の言語だから”という感はいなめません真顔

 

 シュリーマンが駆使した言語は皆、ラテン語から派生しています。

 つまり、文法や単語も結構似ているんですよね。

 

 ですので、まったく異なる系統である日本語を母国語とする我々は、1番最初の"形から入る"という部分のハードルがそもそも高いゲッソリ

 

 ※

 

 なお、本書を読んで私の記憶の曖昧だった部分が訂正されました。

 

 そもそも、シュリーマンの事は学者だと思ってたんですよね真顔

 

 幼い頃に私が好んで読んでいた"世界の偉人をザックリまとめました”的な本(漫画)には、トロイ遺跡発掘の件(くだり)しかなかった気がします。

 しかし史実の彼は―、

 

 実業家として成功し、その財をトロイの発掘調査に投入したんですね。

 

 つまり、アマチュアの考古学者―。

 しかも当時は"発掘調査=財宝目当て”くらいの認識でしたから、彼に対する風当たりも強かったみたいです。

 

 とにかく彼の偉業の根底にあったのは、紀元前に書かれた『イリアス』に対する盲信と言ってよい信念真顔

 

『あるって言ったら、あるんだ!』

 

 みたいな感じで‥‥‥なんかホッコリしました真顔

 

 でもそこには、誰もが一度は夢見る浪漫があります。

 

 (だからきっと、徳川埋蔵金も‥‥‥)