ロックダウンから始まるエッセイでございます。

 

「オーストリア滞在記」

中谷美紀著 幻冬舎文庫

(462頁)

 

 著者は、女優の中谷美紀さんでございます。

 ‥‥‥本当に、天から二物以上を与えられている方っていらっしゃるんですねぇ。

 

 これまでも、絵本やエッセイ、それに旅行記なんかを書かれています。

 当然なのでしょうけど、とっても素敵な文章でございます。すいすい読めるのに物凄く品を感じるんです(←私の主観です)。

 

 日記形式となっている本作のスタートは2020年5月1日でございます。

 得体の知れない新型コロナウイルスに全世界がテンヤワンヤとなった頃です真顔

 

 3月18日に羽田発ウィーン行きの直行便に飛び乗って以来、人生初のロックダウンを経験し、ザルツブルグの自宅にこもっていた。

 

 旦那さんのティロ・フェヒナーさんはドイツ出身でして、ウィーンフィルなんかに所属するヴィオラ奏者でございます。そして―、

 

 既に2ヶ月程休業状態にあります。

 

 ―日本でも、イベントやコンサート等が軒並み中止となりましたよね。

 私も参戦しましたPerfumeさんのドームツアーのファイナル公演(2月26日東京ドーム)も急遽中止となりました。発表が当日(っていうか数時間前)であった為、知らずに地方からかけつけたファンの映像がニュースで流れておりました‥‥‥。

 

 それでね、ご夫妻はロックダウンのお籠もり時間にガーデニングに精を出されるんですが―、

 

 それが物凄く本気なのよ真顔

 

 ※※※

 

 こういうエッセイなんかは、自分の知らない世界や、違う視点を楽しむモノだと思っています。

 

 私はガーデニングには全く疎(うと)いもので、色々と勉強になりました。

 

 とにかく、中谷さんとフェヒナーさんは、庭に植える草でさえも吟味されてるんです。

 

 ハイ、お花ではなく"草”です‥‥‥確かにグラス(grass)と言ってますから真顔

 

 それらの苗が、育ち、繁り、さらに枯れた後の姿までシュミレーションしてます。

 そして―、

 この"枯れた後”というのに関係してくるのが宿根草(シュッコンソウ)という種類の植物―。

 

 冬期間などは、不要な地上部分を枯らし根だけで過ごす種でございます。

 

 私は本書でもって初めて知った言葉でございました。

 なお、地上部分をそのまま残すのが"多年草”でございます(こっちは聞いた事ありました)。

 

 とにかく、この宿根草による冬枯れの景色も考慮されるんですよ。さらには木陰なんかの日陰に育つ陰生植物(シダとかですかねぇ?)も、種苗屋さんでアレコレ選んでおられました。

 

 なんかこの辺は、日本の"侘び寂び”にも通ずる気もいたします。

 

 管理は最低限にとどめ、自然の植生に近づけつつ、なおかつ花々のグラデーションも計算する‥‥‥何だか目指すゴールは、とっても遠いみたいですニヒヒ

 

 ただ、どんなお庭でも共通しているのが、余計な雑草との戦いでございます。

 その辺はご夫妻もご苦労されておりました(でも、楽しそうでしたけどね)。

 

 ※

 

―ちなみに、"私の島”の花壇はひたすら種類を植えております真顔

 

 こちらは"秋の庭園”っぽくしたつもりですが、何分季節が冬なもので‥‥‥。

 

 ※※※※

 

 今回は、ガーデニングというごく狭いテーマを切り取りましたが、本書には異文化世界で暮らす上で避けることの出来ない事が色々書かれています。

 

 本書の中で、中谷さんはドイツ語の習得を目指しておられます。

 英語であれば、ご夫婦間のコミュニケーションに問題はないのですが、義理の娘さんの為に、日常会話くらいは出来るようになりたいのです。

 

 この娘さんとは頻繁に往き来があり、さらにその母親(旦那さんの前妻)とも親しくつきあいがございます。

 

 そういう家族の形は、欧州では別に珍しくはないそうなんです。

 

 その辺の事も含め、とにかく中谷さんの凜とした文章が楽しめる一冊でございます。

 

 

 

 

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