今回は、諸事情ありまして、内容のレビューまで行きません(=行けません)。

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 当ブログでは、実生活では馴染みのない言葉がちょいちょい出て来ます。

 

 その中の一つが、今回ご紹介する“ディストピア”です。

 

 簡単に言ってしまえば―

 

 ”逆”ユートピアゲッソリ

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 SF作品において、よく登場する舞台設定でございます。

 

 人類が監視下に置かれる社会であったり、文明が衰退し、世界そのモノが荒廃していたり―、

 

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 今回、私がご紹介するのは、そんなディストピアのお話―。

 

 「華竜の宮」の舞台であります―海面上昇によって陸地の多くが失われた世界。

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 地球温暖化によって各地の氷が溶けて‥‥‥

 

 と、いうパターンではないんです。

 

 一応、その分の上昇も8メートルくらいと言及されてはいます。

 しかし、この世界の海面は最終的に約260メートル上昇しました(温暖化分の8メートル含む)。

 

 その原因は、地球内部の活動によって、海底自体が大規模隆起をしたからです。

 

 単純な話ですが、隆起した海底の体積分、そのまま海面も押し上げられたんです。

 

 殆どの国がその国土の大半(かそれ以上)を失うのです(なお、日本は列島から“群島”になりました)。

 

 その過程で、土地や食料・資源を巡り各地で戦闘(紛争)が多発しました。70億あった総人口は半分ほどに―。

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 そんな状況の中、最初に中国が生物兵器を用い、さらに“殺戮知性体”と呼ばれた人工生命体が放たれました。

 

 各国もこれに倣い、結果的に改造された遺伝子を持つ新たな生命体が世界中にばらまかれたのです。流入してくる難民を死体の山に変え、そこからは新たな病原体が発生して‥‥‥。

 

 こうして、残された僅かな陸地もウイルスや改造遺伝子によって汚染されたのです。

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 勿論、海洋も汚染されています。陸で使用された大小様々な生物兵器が流入しましたし、何よりかつての大都市や化学プラントなんかが全て海に沈んだんです。その為、海中にも変異した危険生物がウヨウヨいます。

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 人類は、海上都市の技術を発展させ、合成食品を生み出し、それらの危機を克服しようとしました。そして最終的には、自らの身体も遺伝子的に改造するまでしました。

 

 そうして陸から放逐されたのが“海上民”と呼ばれる人達―。

 彼らは常に双子として生まれ、片方が人間(海上民)、そしてもう片方が“魚舟”という巨大生物(最大30メートル位の魚です)になります。 

 海上民は、この魚舟の上で生活しておます(居住スペースがあるんです)。

 

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 海面の上昇がおさまり、世界が新しい姿で安定し始めた時、人類に深海由来の新手のウイルスが襲いかかります。

 

 根治する薬はなく、定期的にワクチンを打つしかない“病潮(ヤミシオ)”という脅威―。

 

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 コレが、「華竜の宮」の世界です。

 

 この前読んだ『獣たちの海』はこの世界をベースにした短編集でした。

 

 ‥‥‥そら、わからんよネウインク

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 ちなみに、この海底の大規模隆起を引き起こしたのは地球内部のマントル層の運動でして、プルームテクトニクスなんて呼ばれたりしています。

 

 コレの超大規模なモノが今から2億5千年前のペルム紀という時代に生物の大絶滅を引き起こしたと言われています。

 この時の地殻変動では、現在のシベリア付近で大量のマグマが形成され地表に吹き出しました。

(画像はイメージです)

 

 こういう場合には、噴出した塵等によって太陽光が遮断され、地球規模で気温が低下します。しかしこの時は、大量に放出された二酸化炭素によって気温が上昇し、さらにそれが海底にあるメタンハイドレート(メタンガスの氷です)を融解させました。

 

 ―メタンガスの温室効果は二酸化炭素の約20倍あります真顔

 

 この急激な気温上昇が、生物のおよそ9割を死滅させたと考えられています。

 

 これは有名な白亜紀の“恐竜大絶滅”よりも前で、なんならこの大絶滅時代のお陰で“恐竜”が生まれたという説もあるくらいです。

(地質年代では、ペルム紀⇒三畳紀⇒ジュラ紀⇒白亜紀と続きます)

 

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 本当はすぐにレビューを書きたかったのですが―、

 

 上巻を読み終えた段階で、世界設定をある程度入れ込むと軽~く4千字超になりそうでした。

 

 たぶん、その文量を書くまで2時間位かかって、そこから同じ時間かけてあちこち削るのよ。

(一応、長くても2千字位にはしたいんですあせる

 

 

 

 ‥‥‥うーん、ムリ!!

 

 という訳で今回は、先にこの絶望的な設定の方を書きました。

 

 陸地の大半が沈み、母なる海すらも失った人類の物語でございます。

 

 次回こそ「華竜の宮 上」になる予定です(笑)。

 

《「獣たちの海」はコチラ―》