非常に楽しかった作品です。
「ランチ酒―おかわり日和」
原田ひ香著 祥伝社文庫
(345頁)
主人公・犬森祥子(イヌモリショウコ)が「見守り屋」になって一年―。
かつて、交際という期間を殆ど経ずに出来婚し、離婚した祥子。
“出来婚”ですから、彼女には子共がいます。しかし―
本作では小学三年生になった娘・明里(アカリ)となかなか逢えなくて、モヤモヤしています。
離婚時の取り決めでは、月に一度は逢える筈なんんです。祥子ならびに、元夫、そして新しい母親と、全員にとってデリケートな問題でしてねぇ‥‥‥。
―申し遅れました。「見守り屋」というのは、夜10時から翌朝5時まで依頼者を寝ずに見守るのが仕事です(なお、時間は前後します)。
依頼内容は色々でして―、
一番最初のお話は、国際結婚した娘からの母の見守り依頼―。
日本に住む母親を朝の6時に病院へ連れて行くというモノでした。
最初は赤の他人である祥子を、(当然ながら)警戒していたその老女―。ですが、次第に心を開き、逆にフランスで“事実婚”をしている娘へに対する“不満や不安”を話すようになります。
※
―この辺が、祥子の特殊能力と言っていいのですが―、
依頼者との距離感が絶妙なんです
見守りの相手は―殆どの場合、何かしら事情を抱えていたり、傷ついていたりします。
一晩寄り添うけれど、決して深入りはしない。そんな赤の他人の祥子だからこそ、依頼者達はふと、本音を漏らしたり出来るんです。
ただし、これは前作までのお話
※
祥子も、色々あって傷を負っている身です。そんな彼女をリピーターの依頼者達が支えてくれるのです。そして祥子も、見守り屋としてのこれまでのスタンスから少しだけはみ出していきます。
※
前作でも登場した、“エリート・クソ野郎”から再び依頼が来ます。
年収が3000万弱というその男は、とにかく相手を徹底的に見下し、馬鹿にしてかかる男。
前作で祥子に”しでかした事”を詫び、通常料金の倍でならという条件も飲みました。
※
立て続けに部下が辞めてしまい、お見合いにも次々失敗したらしいその男―。
でも、再びまみえたクソ野郎は、やっぱりクズでした‥‥‥それはもう、痛々しいくらいに。
祥子にメチャクチャな条件で契約結婚を持ちかけ、脈ナシと解ると、結局朝まで部屋に閉じこもったその男―。
祥子としては、朝が来て時間になったら、「それでは、さようなら」良かったのです。
しかし、彼女は、簡単な朝食を準備してから男の家を去りました。
※
―周囲から色々とアドバイス貰い、少しずつその恩を今度は他者へ返そうとする祥子。
終盤、少しずつ加速していく祥子の物語は、彼女の生涯において記憶にもない“モテ期”へと突入します。前述のクソ野郎の他に、二人の男性から好意を寄せられるんです。
ですが、今一番に彼女が考えなければならないのは、娘・明里の事‥‥‥。
※※※※
なお、この作品でも飯テロ描写は、ゴリゴリに健在です。
巻末の解説では『エロ小説のよう』と紹介されてます(笑)。
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前作のレビューの冒頭で、私自身はたいして食に興味がないと書いた憶えがあります。
だから、飯テロは平気!!
ってな具合
ただ、今作はちょっと厳しかったです。
実はこの本を読んでいたのは、健康診断の合間でございまして―。
あるお話では、ふわとろ卵の角煮カツ丼なるメニューに、赤ワインを合わせる祥子。
それを読んでいる私は、前日の飲酒NGに加え、胃カメラの為に朝食も抜いている状態です。
『あぁ、このコッテリした料理なら、重めの赤ワインは間違いない!』
(結局私はお酒なんです)
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‥‥‥その後、私が実際に口にしたのは―
胃を綺麗にするお薬と、内視鏡でしたけど
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明らかに読書のスケジュールを間違いました。
飯テロというより、単なる自爆です
《前作はこちら》