ひょんなことから(笑)、本棚の中にあった変な本をご紹介。
「独立国家の築き方」
非日常研究会 著 同文書院
この本の存在は覚えてはいたのですが、長い事日の目を見る事はありませんでした(どうして本棚にあるのかが、わかりません:笑)。
日本が地域ごとに12の国に分離独立したという仮定の考察本です。
もしも、それらの国の首長となったなら、どうやって新国家を運営していくべきか、という“トンデモ本”です。
結構古い本でして、当然、震災後の“特殊な事情”などは、入っておりません。
まあ、県民性と主要産業、元々の地理的条件、根ざした文化(地域性)なんかが、楽しく学べます。
本編に入る前に、そもそも「独立国家とはなんぞや?」という所から始まるので、国家というモノの基本がわかります。
国家の三原則
- 国土: 国境、および、領海で囲まれた一定の領域
- 国民: その地域に居住し所属する人間
- 統治政府: 憲法策定・自治能力・外交能力などの備わった統治機関
これらの詳細についても解説されているので、もしも皆さんが新興国家の元首となった時には参考になるかもしれません(笑)。
ちなみに、12の新しい国家の名称は以下の通り。カッコ内は首都です。
- 北海民主共和国(旭川)
- トーホグ(秋田)
- カントー合衆国(那須)
- Tokyo
- 中部共和国(名古屋)
- 北陸民国(金沢)
- 関西首長国(大阪)
- 京都皇国(京都)
- 陰陽国(広島)
- 祀国(松山)
- 九州連邦(福岡)
- 琉球諸島連邦(那覇)
- ぱっと見で、元の地域がわかりにくい所もありますが、その辺は首都を参考にしてください(なお、旧山梨県と旧東京都多摩地区はカントー合衆国に組み込まれています:笑)。
ネーミングがなかなか良いと思うんです。
関東や関西でひとくくりにしても、それぞれの個性の強さを尊重すればこういう統治体制にになるのでしょうし、お遍路を前面にだした「祀国」なんてのも面白いですよね。ただ―
「トーホグ」って
国名は美しい東北弁をそのままに(本文まま)、って我らが東北地方は随分ザックリしとるやないか
序盤には、“あなた”の視点で、それぞれの国家が独立を果たした経緯が、見開きで書かれています。
以下はその一つ「カントー合衆国が興るまで」の冒頭です。
貴方は埼玉県在住の大手町方面に通勤するサラリーマン。親の代に今の土地に引っ越してきた、いわゆる生粋の埼玉都民です。しかし長い通勤時間が悩みの種。その悩みを分かちお合うとインターネットのホームページで同じようなサラリーマン達とのコミュニティーを開設したところ、これが他の首都圏通勤者の共感を得て一大ネットッワークに成長。あなたは関東圏ではちょっと名の知れた「○○都民」の代弁者となったのです。
(本文より)
その後―
長い通勤時間をかけ、懸命に尽くした会社の法人税は東京へ行ってしまう矛盾に、“あなた”は独立を決意します。脱サラし、東京中心主義の日本から独立を掲げる党派を立ち上げ、知事戦で圧勝。他県の「○○都民」の支持を得た“あなた”はまず、千葉、神奈川、茨城の三県を巻き込む事に成功します。
という感じで「カントー合衆国」の成立経緯が書かれています。ちなみに“あなた”は初代合衆国大統領に就任します。
- 私には、わからないのですが、今の時代でも「○○都民」なんていうんですかねぇ?
その後、各章で国ごとの運営方法が紹介されていきます。「カントー合衆国」運営の見出しだけでもこんな感じです。
- 各州のプライドを尊重する連邦制、イメージ重視の大統領選挙で国民の政治参加を!
- 政治の那須・経済の横浜・農業の茨城と山梨、役割分担で個性のある連邦を
- 生活改善で新旧住民の対立を解消! 地域密着スポーツクラブの経営で地元の一体感を
これらが、なかなかどうして理にかなっているんです。県民性や地方自治体の抱える問題点をいちいち突いている感じがします。
とにかく、軽い感じで読めて、意外と為になる本でした。ただ、なにぶん古い本なので、人口や各種産業等のデータは、現在には当てはまらないモノが多いと思います。
まぁ、肩の力を抜いて、ゆるく楽しむ。そんな本って意外と大事です(と、強引に肯定してみます:笑)。