(旧タイトル:『猫は周囲を幸せにしてしまうという好例』
ジャケ買いしました(笑)。こんなの、見ただけで買っちゃうでしょ!
「図書館ねこデューイ 町を幸せにしたトラねこの物語」
ヴィッキー・マイロン 著 羽田 誌津子 訳
ハヤカワ文庫
「ぬこ」が好きです。諸々の事情で飼うことはできませんが、非常に好きです。
このハンサムさんの名前はデューイ・リードモア・ブックス。アメリカ合衆国の中部・アイオワ州にあるスペンサーという町の、小さな図書館に勤務していました。
本書は、彼と飼い主である図書館長の物語です。
愛嬌たっぷりのデューイは、飼い主の家族を含め、図書館を訪れる人達を少しずつ変えていきます。ひいては、良くも悪くも”伝統的な”スペンサーの町までも―。
すなわち―、
モフモフは正義
勿論、ネコですから、当たり前に悪戯をします(でもひどい悪さはしません)。
なお、生涯で一度だけ脱走事件を起こしましたが、数日後に無事帰還します(←発見、保護されました)。
なお、彼なりにかなり反省したようで、後にも先にもこの一度だけです(笑)。
地域社会ですっかり有名になった”図書館ねこ・デューイ”は、地方メディアを皮切りに全米、果ては世界中に、その存在が知られていきます。
遠方から、彼に会うためにスペンサーへやってくる人達―。そして、我らが日本の国営放送も、しっかりドキュメンタリーを撮りに来ています。
※
著者である図書館長のヴィッキーは、割と起伏の激しい人生を送ります。それも、殆どが身に降りかかった(つまりは彼女自身に落ち度の無い)不幸が原因です。それぞれの苦難を彼女は努力と忍耐とでクリアしていきます。その傍らには、最初は犬のブランディが、そしてその後にはデューイがいました。
特に、デューイの存在は彼女の家族達、特に娘のジョディの支えにもなってきます。
この記事の旧タイトルは「ネコは周囲を幸せにしてしまう~」となっていましした。
でも、これは少し違うのかなぁと思っています。
私達の身の回りに元からある”小さな幸せ”を、あのモフモフ達は気づかせてくれるんじゃないでしょうか。ふとした時に寄り添ってくれる存在。人間でもペットでも、ただそれだけで尊いんです、だから―
モフモフは正義
※
本書は素敵な実話です。特にネコが好きな方にとっては、なおさら。
しかしただ、一つだけ皮肉な事があります。
デューイが”図書館ねこ”として、かくも有名になった一因は間違いなく彼のバックボーンにあります。
彼は凍てつく真冬(!)の朝に、返却ボックスで発見された捨てネコなのです。そのことが彼の存在をよりドラマティックなモノにしているのは否めません。
ヴィッキーとの出会いは、確かに運命的な物であったにせよ、やっぱり、どこか胸の奥の方でにチクリとしています。
(なお、本書は2008年にメリル・ストリープ主演で映画化されているそうです)