(旧タイトル:『お金の苦労するのは、お殿様も一緒』)

「お殿様の人事異動」

安藤優一郎 著 日本経済新聞出版社

 

 ちょっと毛色を変えまして、主に江戸時代に行われた、改易(減封・取り潰し)転封(領地替え)にまつわる悲喜こもごもを扱った本書のご紹介。と言ってもこれまでと同様、あまり内容には触れません(笑)。

 

 江戸時代、全国の大名達は幕府からの転封の命令には逆らうことが出来ませんでした。基本的にそれを拒否すれば、改易という処分を受けてしまいます。

 

 万が一、取り潰しなんて事になれば、藩主は勿論、藩士およびその家族が即刻路頭に迷う事を意味します。ただし、改易と言う強権発動は、幕府への不満分子を大量に生み出してしまう両刃の剣であるため、徳川家の支配が安定してくるとそれ自体が減っていきます。もっと言うなら、転封命令に背いての改易は江戸時代には行われていません(秀吉が織田信雄に行ったのが最初で最後のようです)。

 ※

 江戸幕府で出世し、要職に就くためには、大名であれ、旗本であれ幾つもの難関並びに条件が有りました。特に条件で言うならば、領地が遠国の大名は老中に成れません。その為、就任に伴い、領地替えが行われたりしました。

 胸に野望を秘めた大名なんかは自分から転封を画策したりと、色々あったようです。

 

 可哀想なのは、その為にそれまでの領地から追い出される大名です。ただでさえ莫大な引っ越し費用がかかる上、場合によっては、転封の結果が減収になることもあったのですから。

 

 そして―、

 

 大変なのは領民も同様です。藩は様々な名目で引っ越し費用を徴収しようとしましたし、これ幸いと、これまでの借財を踏み倒そうともしました。幕府内でも現場(それぞれの領地)でもギリギリの攻防があったみたいです。

 

 ―さて、ここで本書を読んで驚いた点を一つ。ちなみにこれも私の無知の故です、あしからず。

 

 私が、高校で習った時(およそ数十年前)は、江戸幕府の要職である三奉行、すなわち寺社奉行、勘定奉行、(江戸)町奉行の中で町奉行だけが格が落ちると教わりました。しかし、本書によれば(つまり、現在の認識では)寺社奉行が筆頭で、勘定奉行・町奉行は共に格下なんですね。

 

 わかりやすく言うと、寺社奉行は大名でなければなれません。勘定奉行町奉行は、旗本が就きます。

 そしてなんなら町奉行こそ、勘定奉行などを経験した者が最後に到達する幕府官僚のトップでした(まあ、確かに今で言うところの都知事ですからね)。

 

 ―歴史は新しい発見が有る度に更新されていきます。この歳になっても学ぶ事は多いですし、新しい事を知ることは楽しい事だなぁ、と強く思った次第です。

 

 最後に、もう一度本書の内容に戻ります。江戸時代の三大改革。これは中学生の時から「テストに出るやつ」でしたね(今もそうですよね?)。その中の天保の改革を指揮した老中・水野忠邦

 この人、老中になる為に色々とご苦労されています。簡単に言うと―

 

 賄賂贈りまくりですわ(笑)。

 

 改革を断行したくらいだから、清廉潔白な人柄だと勝手に思っていました。まぁ、こんなもんですよね。清濁併せのむとも言いますし真顔

 

 

 ※補足

 大名:一国の主、藩主。

 旗本:徳川将軍家の家臣のうち、将軍に直接会う事のできる家柄。