(旧タイトル:『「後宮」だけれどエロスは皆無?)

 

 この作品を書店で手にした時の事を、正確には最初の一行に出逢った時の事を、私は鮮明に覚えています。ド頭のインパクトに限って言えば、この冒頭十七文字を超える作品にはいまだ出逢えていません。

 

「後宮小説」

酒見賢一著  新潮文庫

 

 すぐに本を閉じて、レジにへ向かいました。なんなら小走ぎみの早足で。

 有名な作品ですから、ご存じの方も多いでしょう。私が手に取ったのも、「何ちゃら賞とかいうのを取った作品」と記憶していたから(この時のザックリした記憶を補足するならば、「第一回ファンタジーノベル大賞受賞作」となります)。

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 本作は、ファンタジーと聞いて真っ先に思い浮かべるであろうRPG的な、つまりはドラクエ的、FF的な代物ではありません。「架空の世界を舞台にしている」という体で言うところのファンタジー。もっと 簡単に言うなら「架空の歴史小説」と言う方がよりわかりやすいかもしれません。

 

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「また一人、天才見つけた!」

 

 自分の無知を棚に上げて、本気でそう思いました。そして、一気読みした後の感想も全く同じ。

 

 全体的なノリはやや軽めだった気がします。だからこそ「物の哀れ」がチクリときました。

 田舎育ちの主人公・銀河の活躍には誰もが胸をすくような思いを抱くことでしょう。決して文量は多くはありませんが、壮大で爽快な物語。だからでしょうか、心地良い読後感には、お得感すら付いてきた気がしました。今風に言うなら「コスパが良い」とでも言うんでしょうかね(←あってます?)。

 

 タイトルに「後宮」とはあるけれど、そこにエロスの要素は殆ど無し。「性=命」という自然界では当たり前のスタンスが、逆に新鮮に感じられた自分を素直に反省したいと思います(猛省)。