私は海外のミステリーに甚(はなは)だ疎いので、存じ上げませんでした。
「毒入りチョコレート事件」
アントニイ・バークリー著 藤村裕美訳 創元推理文庫
(309頁)
今回は、普段は滅多にやらないんですが、季節的な事で本書を選びました。
一応、バレンタインデーを意識してみたんです……通常は、アップするまでのラグがあるんで忘れているんですよね![]()
この「毒入りチョコレート事件」は、本格ミステリーの古典的名作なのだそうですが―、
そもそも私は、"本格”と言う冠のついた作品をあまり読んでいません。
これは全くもって個人的嗜好の問題なんですが―、
私はミステリーであっても、それなりのリアリティーが欲しいんです。
本書を例に出せば―、
警察の捜査が行き詰まっている難事件に対し、有識者で結成された《犯罪研究会》なるグループがその謎を解き明かす。
そこに警察(スコットランドヤード)の首席警部なる人物も顔を出しているんですから、もはやファンタジーの部類。
……まぁエンタメなんですから、ぶっちゃけそれで良いんですよ![]()
実際、結構面白かったですし![]()
※※※※
何者かが毒物を混入したチョコレートを食べ、資産家・グレアム・ベンディックスの妻・ジョーンが亡くなりました。
このチョコレートは、グレアムが、所属するクラブ《レインボウ》で、知人から貰いうけたモノで―、
甘いモノを好まず少量しか食べなかったグレアム自身は、一命を取り留めました。
そして、グレアムにチョコレートを渡した知人というのが、サー・ユースタス・ペンファーザー准男爵という人物でございます。
彼はとかく噂の多い男でございまして、特に女性絡みで色々とおイタを繰り返しておりました。
そんな彼の元へ、お菓子メーカーから"お気に召したら、宣伝してくださいませ”的な手紙付きで届けられた試供品。それが件(くだん)のチョコレートでございまして、その中に毒物が混入されていたのです。
つまり、元々はペンファーザー氏が狙われたのであり、ベンディックス夫人は不幸な被害者でありました。
ペンファーザー氏の関係者―例えば離婚係争中の妻なんかには明確なアリバイがあり、それらを除くと容疑者が判然としません(多すぎるのかな?)。
女性を取っ替え引っ替えし、金銭的にも色々と問題を抱えていたペンファーザー氏は、悪い意味でも有名人![]()
警察の捜査では―、
ペンファーザー氏の悪行に腹を据えかねた人物の犯行で、おそらく面識のない人物という"うやむや路線”での決着(=迷宮入り)となりそうでした。
数少ない物証である手紙(に使われた便せん)や包装紙は、そのメーカーが普段使用しているもので、それらの入手経路から犯人の絞り込みは可能かと思われたのですが―、
まぁぶっちゃけ、これがどうとでもなるんですよ![]()
そこで、作家であるロジャー・シェリンガムが会長を務める《犯罪研究会》の出番という訳でございます。
※
現在《犯罪研究会》の会員は6名で、法廷弁護士や小説家、劇作家という"有識者”が揃っております。
彼らはそれぞれが独自に捜査&推理を行い、くじ引きで決まった順番で自説を発表していくことになるのですが―。
※※※※
法廷弁護士はペンファーザー氏を狙った動機を重視し、劇作家は同氏の周囲の女性を疑い、推理小説家はその独自の視点から……てな具合に各人がそれぞれに推理を展開していきます。
中には幸運(?)に恵まれ、貴重な証言を得る者もいたりしまして―、
発表の都度、容疑者が浮かび、そして消えていきます。
ともかく―、
視点をどこに置くのか―つまりどこをスタートにするか―という事で、推理の帰結が劇的に変っていく点が興味深かったです。
エンタメとしては充分に楽しめました![]()
