ウォーキングの常識? 1万歩の謎
『1万歩』歩くと健康にいいとか、
体にいいとか聞いたことはあるでしょうか。
ウォーキングの話をすると、
「1万歩歩くのですね」
とか言われることが多いですね。
この『1万歩』という数字は、
どこから出てきたのか気になりませんか?
ということで
ウォーキングの常識 【1万歩説の謎】
について書いていきます。
1日1万歩運動の経緯と現状
日本は高度経済成長期。
人々の食も豊になった。
昭和初期 おうちごはんを代表する食といえば、
白米に麦が入ったものや焼き魚、味噌汁、煮物、和物。
高度経済成長とともに食の欧米化が進む昭和後期では、
肉やパンが食生活の中に定着した。
1950年代後半からは
家電 三種の神器 白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫を
人々が手にするようになり、
自動車やエスカレーターの普及により生活も便利になった。
しかし、
その反面、摂取カロリーが増加し、
運動量が激減、国民の運動不足が問題になりはじめた。
1963年に山佐時計計器株式会社により、
医師やジャーナリストが提唱する
「1日1万歩歩きましょう」(1日1万歩運動)を国民的運動にしたいため、
歩く小道具
つまり歩数計を開発して欲しいと言う依頼を受け開発をスタートした。
そして、
1965年に万歩計1号機が山佐時計計器株式会社から発売されました。
当時は、
万歩計ではなく、
「万歩メーター」と呼ばれていた。
ちなみに
歩数計の代名詞「万歩計」は
山佐時計計器株式会社の登録商標です。
そのころ、
『一日一万歩運動を通して、国民の体力向上に寄与する。』
という目的で日本万歩クラブというのも設立された。
このような時代背景によって、
“歩くこと”は生活習慣病の予防・改善、消費カロリーによる
体脂肪のコントロール、運動能力の向上など健康・スポーツにとって最適であり、
いつでも、どこでも、誰でもできる運動として
「1日1万歩運動」が広く定着した。
運動をすることが
健康維持に役立つことは確かですが、
『1万歩』という歩数に関して科学的根拠はない
という論文や意見もあるが、
厚生労働省は2000年から
21世紀における国民健康づくり運動 いわゆる「健康日本21」の中で、
健康寿命の延伸などを実現するために
日常生活における歩数の増加をあげている。
身体活動量と死亡率などとの関連をみた疫学的研究の結果からは、
「1日1万歩」の歩数を確保することが理想と考えられると記載されている。
この中で
「1日1万歩」の根拠として、
海外の文献から週当たり2000kcal(1日当たり約300kcal)以上の
エネルギー消費に相当する身体活動が推奨されているとしている。
歩行時のエネルギー消費量を求めるための
アメリカスポーツ医学協会が提示する式を用いて、
体重60kgの者が、
時速4km、歩幅70cm、で10分歩く場合を計算すると、
消費エネルギーは30kcalとなる。
つまり1
日当たり300kcalのエネルギー消費は、
1万歩 約1時間40分の歩行に相当するとしている。
と国はいっています。
ところが、
1997年に長野県松本市で
「中高年のための健康スポーツ教室」事業として
「1日1万歩のウォーキング」プログラムが開始されましたが、
1年間で1日1万歩を継続できた人は全体の30%で、
生活習慣病の予防・改善効果はみられるものの
体力の向上は認められませんでした。
そして、
2019年、国際的に影響力が強い
医学雑誌ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション『JAMA』に、
「1日1万歩」も歩く必要はない、という記事が出ました。
この調査では、
平均年齢が72歳の女性のグループ16000人を
1日の平均歩数によって4つのグループに分け、
4年余りの間の致死率を比べました。
すると、
1日に より多く歩いたグループの方が
致死率は低いという結果が出ました。
しかし、
その延命効果は
7500歩までは歩数に比例していましたが、
それ以上の歩数では変わりはなかったということです。
最近、日本でも
調査や研究が行われた結果、
歩数を多く歩くよりは、
少し強度の強い速歩などを取り入れて、
「量より質」の歩き方が推奨されています。
インターバル速歩というのが、
能勢博先生によって
科学的根拠に基づき提唱されております。
「さっさか歩き」と「ゆっくり歩き」を
数分間ずつ交互に繰り返すウォーキング法です。
インターバル速歩の詳しい歩き方は割愛します。
こんなところが1日1万歩運動の経緯と現状です。
でも、1万歩にこだわりたい人のために・・・
まずは
歩数計で現状の歩数をチェックしてみましょう。
データは少し古いですが、
平成27年「国民健康・栄養調査」では、
歩数の平均は男性7,194歩、女性6,227歩という結果でした。
あくまでも平均です。
1日の行動の大半を
自宅などで過ごす人は
その限りではありません。
特に主婦の方の
家事中の平均歩数は
平日が約2,700歩、休日が9,600歩であるため、
1日当たり4,600歩から4,700歩となります。
1万歩にこだわるなら、
歩数計で1週間分の平均を出して、
1万歩に足りない分をウォーキングするという手もあります。
平均1日当たり4,600歩でしたら
10,000歩ー4,600歩で5,400歩です。
こんな感じで、歩いていきましょう!
参考資料
●“運動しすぎ”は逆効果?「病気を遠ざけるウォーキング」のコツ
●幻冬舎ゴールドライフオンライン
●戦争から高度経済成長まで!昭和のおうちごはんを知ろう!
●厚生労働省 健康日本21 身体活動・運動
●健康長寿ネット インターバル速歩の効果