糖鎖とナノバイオテクノロジーに基づくウイルス高感度検出法の開発 | 糖鎖研究受託ならスディックスバイオテック

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シュガーチップを用いて糖鎖-タンパク相互作用の測定、解析を行う受託サービス。
タンパク質等の解析対象物と、47種類の糖鎖に対する網羅的相互作用測定、または1種類の糖鎖との速度論的解析を行う2種類の受託解析サービスをご提供。

第30回日本糖質学会年会

-糖鎖機能解明のブレークスルーを求めて-


糖鎖とナノバイオテクノロジーに基づくウイルス高感度検出法の開発

隅田泰生
鹿児島大学大学院理工学研究科・(株)スディックスバイオテック

Development of high sensitive diagnostic method of viruses based on nano-glycobiotechnology

Yasuo SUDA
Graduate School of Science and Engineering, Kagoshima University
SUDx-Biotec corporation


Sugar-chains are increasingly being recognized as important partners in receptor-ligand binding and cellular signaling, and also known as receptor molecules for the viral infection. We developed sugar chain-immobilized chip, named Sugar Chip, and sugar-chain immobilized gold nano-particle (SGNP). Sugar Chip can be used for the sensor chip of surface plasmon resonance apparatus for high-throughput screening to find the receptor sugar-chains of viruses. The SGNP can be used for the visual detection, since SGNPs lose the plasmon absorption when the interaction occurs between sugar-chains on SGNP and analyte, such as proteins or viruses, in solution. Capitalizing on this property and the receptor sugar-chin of virus, we have established a high sensitive detection system of viruses using SGNP and real time quantitative PCR. By this system, influenza viruses including 2009 H1N1 pandemic strain in the clinical samples were concentrated and diagnosed at very low concentration of viruses, which was under the detection limit of regular PCR. An application for KOI herpes viruses will be also discussed.


糖鎖は生体内で多彩な機能を示し、生命現象に不可欠な役割を演じる。一方で、細胞表層の糖鎖はウイルスにはレセプターとして利用され、その感染を仲介する。我々は糖鎖を固定化したバイオデバイス「シュガーチップ」および「糖鎖固定化金ナノ粒子(SGNP)」(下図参照)を開発した。前者は表面プラズモン共鳴を利用した測定に使用することによって、後者は目視による観測によって、糖鎖が結合する蛋白質やウイルスなどの対象物との相互作用を無標識で迅速・簡便に測定できる。またSGNPはレクチンの1ステップ精製なども可能であり、さらに糖鎖固定化磁性ナノ粒子(SMNP)に発展させた。これらデバイスとリアルタイムPCRを組み合わせ、検体中の極低濃度のウイルスを濃縮することによって、従来の方法では検出できなかった超低濃度のウイルスを検出し、罹患の超早期に診断可能な技術を開発した。
インフルエンザウイルスのレセプター糖鎖は、宿主やウイルス株ごとに異なる。そこで、8 種類の糖鎖に対する相対結合性から株の分類をおこなうためのデータベースとアルゴリズムを開発し、昨年流行したH1N1パンデミックウイルスの類縁株を推定した。また、糖鎖結合活性の解析からどのウイルス株にも結合する糖鎖を選び、それを固定化したナノ粒子を調製した。このナノ粒子はウイルスに結合するので、遠心分離や磁性を使ってナノ粒子が結合したウイルスを集め、リアルタイムPCRで測定すると、約10サイクル早く検出できた。この系を、H1N1パンデミックウイルスの臨床検体を用いて感度比較をすると、普通のPCRでは 1/100 に希釈すると検出できなくなったが、我々のナノ粒子を用いた濃縮法では 1/1000 に希釈しても検出され、感度は100倍以上であることが実証された。イムノクロマト法による簡易キットと普通のリアルタイムPCRの感度差は5000倍以上あるので、我々の方法は、簡易キットの50万倍以上の感度があることになる。この方法によって、2009年夏には、インフルエンザ不顕性感染者の特定を行えた。
この系を、鯉ヘルペスウイルス(KHV)に適応した。KHVは鯉(錦鯉、黒鯉)にのみ感染し、その致死率は90%である。観賞用の錦鯉(原産地は新潟県長岡市山古志村)は高価であるため、被害は深刻で大きな問題になっている。病気の発症には、水温が大きく影響し、KHVの増殖適温外では、鯉がKHVに感染しても発症せずキャリアーになる場合がある。このキャリアー鯉(感染耐過魚)が感染源になる。しかし、キャリアー鯉が放出するウイルス量は極微量で、従来の方法(PCR)では検出が困難であった。KHVの糖鎖パターンはヒトヘルペスウイルスに類似し、ヘパリンに強く結合した。そこで、ヘパリンを固定化したSGNPを調製し、KHVの高感度検査に使用し、KHVで死亡した鯉のえら組織からも高感度でKHVを検出することに成功した。現在、この技術とストレス負荷と組み合わせることで従来の検査技術(PCR)では全く不可能だったKHV感染耐過魚のKHV検査を新潟県内水面水産研究所との共同研究として行っている。さらに、研究に協力いただいている養鯉場からの実検体の検査を行い、本法の実用化を図っている。


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