父親は、痴呆症を発症してずいぶん前に死んだ。
痴呆症を考えると初期と後期に分けられる。
痴呆症の初期は、父親が病院に入院した時に病院側で痴呆症の疑いがあったのか検査して病院から痴呆症だと言われた。その時、痴呆症には思えなかった。
痴呆症には思えないから普段の日常での父親の行動に腹が立ったりもした。
そんな初期段階が過ぎるといよいよ痴呆症がよくわかるようになる。
介護と言っても、飯を食べさせたり、危ないところに行ったら見てやるなどをしたくらいだ。
初期と後期での介護は大きく異なる。
後期になっても歩ける状態だと困った問題を起こす。
後期になると、下の世話ーーー排便などは母親がやったからよかったが、おむつ交換などやり気にもならない。
しかし、痴呆症の後期だとそれが必要になる。
痴呆症後期でも歩けるうちは、本当に大変なのだ。
ある時、朝方、排便を台所を中心にしてやってしまった。ストーブなしでは寒い時期ゆえ、本当に朝飯前の・・・・
痴呆症後期になると排便するトイレがわからなくなる。
そんなこんなでようやく死んでから、今度は、母親が痴呆症だと言われた。
母親は、入退院を繰り返す中で入院時にタバコを吸うのを止められるから退院後タバコをやめてしまった。「もう吸わないからこれ全部やる」とタバコをもらった。
すると、タバコをやめたことで痴呆症の度合いがひどくなってきた。親父同様の排便問題。ーーー今のカーペットは捨てたよ。
そんな排便時でも、本人の様子をうかがう限り、ぼけているようには思えないのだ。
それから、母親からタバコを吸いたいと申し出てきた。望み薄だとしても、もしやと思い吸わせることにした。
タバコは、なんだかんだと有害だと言われているが、ニコチンが脳に作用する点は、有益なところがあるというのが本当だった。
タバコを吸わせるようにしてからボケの度合いがゆるくなった。だいたい1日10数本くらいのようだ。
タバコをやめていた時、杖をついて歩くようにしていたところが杖を使わず歩くようになったり。
他には、入院時に、息子、つまり私の弟だが、面会した時忘れてしまって「誰だ?」と言っていたそうだ。その弟、心配顔でその足で訪問してきたくらいだ。
息子の顔を忘れたことでボケが始まっていたのは本当だったとわかった。それまで懐疑的に見ていた。
ボケの初期は、分からない。そういわれればそうかもしれないと思うくらいだ。天然ボケを見てきたらそう思うだろう。
タバコを吸わせることで脳を活性化するのが狙いだったが、一応見た限りでは、現時点でボケだといえるものは軽微なものに限られている。
軽微なものと言えば、不思議だが、直近のことを忘れているような感じだ。たまに訪問してくる町内会の人など違和感なく面会している。忘れているようには思えない。天然ボケの一種か?
タバコを吸わせた以降に別の弟とスカイプでおしゃべりを見ていた感じだと、タバコを吸い始めた以降に見聞きした相手は覚えている傾向があるのがわかった。
但し、数か月くらいたつと忘れている傾向があるかもしれないが?
ところで、80過ぎにもなるとボケ症状が残っているためか、指の力が弱くなるようだ。ぼけていると病院から言われてから指の力が入らない様子だ。なぜなのかよくわからない。
タバコを吸うのは一人で勝手にやっているからライターをどうするのか問題になる。
普通の100円ライターの類のこすって着火するタイプ、ボタンを押して着火するタイプは、ダメだった。
問題は、ライターが使えなくなるとガスコンロでタバコに火をつけようとしてガスコンロの火をつけっぱなしで忘れる場合があることだ。一度あった。
ライターをどうするか、ネットで検索したが、指で押すタイプで指だけの力、そのタイプは力が必要なため使えないことがわかった。
探し当てたのが「ともしび」。
そのライターは、小さなボタンを押すのと異なり、大きいボタンを握るように力をくわえて、ボタンを押す力も少なくて済む。
現在それを使わせている。
電子ライターの類でプラズマライターだったか、炎を出さない、ぱちぱちと火花の出るタイプも使えないことはないが、ちょっと重いと言われた。
重い?むっと来たが、そのタイプは好まれない以上に扱いにくいのだろうな。
そんなわけで指の力が弱くなった親のためのライターの推奨品。
「東海 ライター チャッカマン ともしび」