『どこが違うと言うんです?』
「色だよ」
『色……?』
「お前の血は、『赤過ぎる』んだよ」
そう、あまりにも赤い。本来の血なら、こんなにも鮮やかにはならないはずなんだ。『鮮血』なんて言葉もあるが、鮮やか過ぎるのはおかしいんだよ。
「ってわけで、お前はみすみす自分の駒を削ったわけだ」
『あら?血が出たくらいで動かせなくなるとでも?』
「そりゃ、この量だぜ?」
『見下してんじゃねぇですよ。人形はたとえどんな状態になろうとも動かせますよ』
まぁ、考えてみりゃそうだよな。人形という定義にもよるが、最悪パーツ一つになっても動かせるんだろうな。
「じゃあ、そいつで戦うと?」
『えぇ。この体が使いやすいですからね』
使いやすいかぁ。まぁそりゃ、他のやつと比べると、非常に思考も簡単で律しやすい存在ではあるわな。
「簡単なことだ。お前がわざわざ示してくれたじゃねぇか」
『示し、た……?』
無言で、真理の周りに出来た水溜まりを指す。そう、これこそが違いだ。
『この『血』が、何だと言うんですか?』
「これは、『血』なんかじゃねぇよ。ただの『赤い液体』だ」
今までは、この『赤』に漠然とした違和感を覚えていた。状況からしてどう考えても『血』なのに、なぜか『赤』としか表現出来なかったのだ。だが、実際に見て確信した。これは、やっぱり『血』なんかじゃない。
「状況もそうだが、臭いや粘度まで忠実に再現されているのは分かる。けどな、細部に拘るあまり、大きな違いが出来てしまってるんだよ」
そう、どれもこれもそうだが、詰めが甘いというかどこか抜けてる部分があるんだよな。小さいことに拘るのは良いが、それで全体が見えなくなってしまっては、本末転倒だ。
「ホント、知識で知ってるのと現実で見るのは、全然違うよなぁ」
こうしてる間にも、『赤』はドンドン流れ出てくる。いつしか、真理の周りには『赤い』水溜まりが出来ていた。
『これで納得していただけましたか?』
体中から力が抜けているだろうに、口調には一切変化がない。やっぱり、本体に直接攻撃を与えないと意味がないみたいだな。
「あぁ、やっぱり人形だったんだな」
『どうしてそうなるんですか?』
「いやまぁ、良く出来てると思うぞ。本物と見紛う程の出来だ」
でも、それでもだ。いくらクオリティが高かろうが、所詮は偽物。どうしても、本物との間に齟齬が生じてしまうのは仕方ないだろう。
『でも、偽物……人形だと?』
「そうだな。ほんの些細な違いだが、確実に違いがある」
『一体、何だと言うんですか?』