わたしにとって、西原理恵子は“先生”みたいな存在だった。
1995年から2005年くらいまで、彼女の漫画はわたしのバイブルだった。
エッセイ漫画の中で、怒りと不満をぶちまけながらも、男社会を生き抜く彼女の姿。
そこには、女がひとりで立つための生々しい知恵があった。
男に依存せず、笑って生きる術をたくさん学んだ。
……高須院長と恋仲になるまでは、ね(笑)。
そんな西原が描く『パーマネント野ばら』は、彼女の生まれ育った高知の港町が舞台。
若い女の切ない恋心が描かれていて、
西原にしてはめずらしく、やわらかく、センチメンタル。
最初は正直、意外に感じた。
けれど、思い返してみると、この優しさの裏には、地元の厳しい現実が透けて見える。
西原はエッセイの中で言っていた。
港町では男が突然死ぬことがあると。
酒の飲みすぎ、漁の事故…貧しく荒々しい土地だから、早くに命を落とす人が多い、と。
映画に出てくるのは、20代後半と思われる3人の女と、
その母世代の“女を通り越した女たち”。
おばさんたちの男性観は、もう性欲だけ。笑えるほど潔い。
貧しい土地で暮らす女たちは、男に頼らず自分で生きる性(さが)をみつけ、
逞しくなっていく。
そんな中、菅野美穂演じる主人公は、若干、迷子になっている。
恋した男に、すがって生きたいという弱さが垣間見え、
西原理恵子の中の、もうひとりの人格でもあるのかなとも見えた。
劇中、ところどころチグハグが面があらわれはじめ、
主人公が恋した男の正体が明らかになった瞬間、
なんとも言えない、残酷な運命に言葉を失った。
「うち、狂ってるんやろうか?」
あの短い一言で種明かしする演出は、上手い!残酷すぎる。
西原はきっと、愛する人を突然失い、
人生が真っ白になった女の背中を、いくつも見てきたんだろう。
自信の母の背中、自分の背中もふくめて、
多くの逞しくも悲しい背中をみてきたからこそ描ける世界なんだと思う。
わたしは「愛」をまだ知らない。
だから、幻覚を見るほどの喪失感なんて、想像もできない。
でも、この映画を観て、ほんの少しだけ、その重さを感じた気がした。
海風の匂いと潮騒の音に包まれながら、
愛と喪失は表裏一体なんだと、静かに胸の奥をえぐられた。
今年から物の試しに、「愛」ってものを探してみようかと思う。
愛するカイちゃんを失ったから、少しは何かが入る余地はあるんじゃなかろうか。
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2010年/日本
監督:吉田大八
原作:西原理恵子
脚本:奥寺佐渡子
音楽:福原まり
撮影:近藤龍人
美術:富田麻友美
編集:岡田久美
主題歌:さかいゆう「train」
配給:ショウゲート
上映時間:100分
出演:菅野美穂、小池栄子、池脇千鶴、宇崎竜童、夏木マリ、江口洋介、畠山紬、加藤虎ノ介、山本浩司、ムロツヨシ
📝 あらすじ
離婚して幼い娘とともに故郷へ戻ったなおこは、母と共に小さな美容室「パーマネント野ばら」を営んでいる。海辺の町にあるこの店は、町の女性たちが恋や人生を語る“告白の場”。そこで交わされる悲喜こもごもの話と、なおこの心にある淡い想いが重なり合い、過去と現在、生と再生が交錯する。静かな町の中で、女性たちの生き様が重層的に描かれていく。
ドクター高須との赤裸々な下ネタを晒し始めて頃から、
完全についていけなくなったのでした。



