2018年に観劇したはずなのに、覚えているのは1幕の最後のワンシーンだけ。
夜長姫の16歳の誕生日、仏師3名人が、3年かけて彫った仏像を披露するシーン。
あの頃は、まだ演劇脳が鍛えられていなかったから、
舞台美術と衣装の美しさにやられて、頓智のようなセリフが
ひとつも理解できなかったんだろう。
また席も悪かったから、全体が見れなく記憶に残らなかったんだろうな。
こうして映像で見直せるのはありがたい。
録画ストックから。
舞台いっぱいに花を咲かす一本の桜の大樹の美術はほんとうに美しい。
姫なのに鬼女の夜長姫の衣装と、侍女(鬼)たちの衣装も舞台映えをする美しさ。
そして大量に舞う桜の花びら。
堀尾幸男の美術と、ひびのこづえの衣装の相性は、最高である。
舞台ではあるが、アートライブとしての楽しみもある。
とはいえこの舞台は、深津絵里演じる夜長姫に尽きる。
少女のような甲高く甘ったるい声で、とてつもなく残酷なことを言うかと思えば、
ものすごく低音の声で、耳男にとてつもない命令と要求をする。
終始、狂気の中で耳男を翻弄する姫。
姫の姿は、耳男にしか見えないかのように、二人は残酷に傷つけあいながら愛し合う。
2幕からは、天海祐希演じる天武天皇(中大兄皇子)が、
鬼を恐れるがあまり、鬼を生み出す狂気に走る。
天海祐希の天武天皇の勇ましさと、凛々しさも見どころ。
国が鬼を恐れるがあまり、狂気にまみれる中、
俗物を演じる古田新太と、鬼の手下演じる池田成志、秋山菜津子、大倉孝二、藤井隆が、ひょうひょうと泳ぎ渡る。
観劇したときは気づいてもなかったが、
けっこうな豪華キャストで、こんなにも面白かったとは。
覚えてないことが、もったいなさすぎる。
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2018年
作・演出:野田秀樹(『贋作 桜の森の満開の下』)
原作:坂口安吾(『桜の森の満開の下』『夜長姫と耳男』を下敷き)
劇団・企画:NODA・MAP(野田地図)
美術(装置):堀尾幸男
照明:小川幾雄
音響:高都幸男(音響補:高橋功亘)
衣裳:ひびのこづえ
出演(2018年再演メインキャスト)妻夫木聡、深津絵里、天海祐希、古田新太、秋山菜津子、大倉孝二、藤井隆、村岡希美、門脇麦、池田成志、銀粉蝶、野田秀樹、
池田遼、石川詩織、織田圭祐、神岡実希、上村聡、川原田樹、近藤彩香、城俊彦、末冨真由、手代木花野、橋爪渓、花島令、藤井咲有里、松本誠、的場祐太、茂手木桜子、吉田朋弘、六川裕史
上演時間:第一幕 約75分+休憩15分+第二幕 約55分=計約145分
📝 あらすじ
深い桜の森で王に召集された三人の匠―耳男、マナコ、オオアマ―。娘たちを守る仏像を三年かけて彫る使命を帯びるも、彼らは素性を隠す裏の思いを抱え…。完成の時、彼らの思惑は交錯し、妖しさと狂気に満ちた極北の心理文学が舞台上に広がる
▼2018年観劇の感想



