わたしが舞台をみて「おもしろい!」って思う理由に、
人間の本音がみえた時がある。
多方面に配慮しないといけないTVではもう聞くことができない、
人間の本音が伝わるキワドイセリフや演技をみせられると、
その舞台にリアルさを感じて、魅せられてしまう。
そういう意味で、この舞台にリアルさが感じれなかった。
自殺願望のある男女三人、
自殺してしまった高校生。
自粛警察に抗う元感染者、と思ったら元自粛警察だった男。
という、この新型コロナ禍で書き下ろされた鴻上尚史の新作。
12月になってしまったので、自粛警察ピークはもう半年前の話。
ネタとして古くなってしまった以前に、
蒸し返されたカンジがあって、正直、うんざり。
自粛警察を、バッシングする風潮ももう終わったし。
いろいろと傷ついたのは分かるが、どうにも表現がダイレクトすぎて引く。
この秋公演された舞台は書き下ろし新作が多く、
なにがしかこの新型コロナ禍のメッセージが見え隠れするが、
こうもダイレクトに表現した作品ははじめてみた。
このダイレクトさが私の好みじゃなかった。
恨みがましいと感じてしまうのだ。
わたしは柿澤勇人が好きで、チケットを買ったのだが、
彼は大阪公演の直前までTwitterで次の舞台「スルース」の稽古に夢中で、
ちょっと不安だった。
でやはり、あまり役に入ってないカンジに見えた。
好きな俳優の一人なんだけど、ピンポイントでしか彼のもっている
やんちゃな個性が開かないのがもったいない。今回は消化不良。
逆に、全力で演じていた石井一孝は、他の役者との温度があわず浮いてたように思う。
わたしは2階席でみたのだが、この演出は2階席を置いてけぼりにされたように感じる。
東京の劇場は紀伊国屋ホールで2階席はないから、2階席想定してなかったんだろう。
演者たちの目線が二階席をまったく無視してて、まったく入り込めない。
そのせいかは分からんが、客席で居眠りしている人が多かった。
わたしも、大詰めで居眠りしてしまった一人だ。
あまりにも退屈で、大千穐楽のスペシャルカーテンコールを観ずに席を立った。
中止にならず、大千穐楽を迎えられたことは奇跡だが、
奇跡と、仕上がりは別の話なのだ。
ただ、楽しんでいた人もいたから、
単に私の好みに合わなかっただけだと思うけどね。
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2020年12月6日
作・演出: 鴻上尚史
出演:柿澤勇人、南沢奈央、須藤蓮、石井一孝
二階席に限ったことかもしれないが、40~50代の男性が7割いた。
結婚前、小劇場の芝居を観ていた人たちが、
この新型コロナの旅行自粛で、劇場に戻ってきたんちゃうかと思う。
むかし観た鴻上の舞台を思い出しきたような感じがする。
それは演劇界にとって、いい兆候に思う。
でも劇場に、ほんま後期高齢者が減ったわ。
二階席は6割程度の埋まり具合。