ドラマ ハンドメイズ・テイル~侍女の物語~ アメリカの近未来の地獄国家 | 気むずかしい いろいろ

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ヘトヘトに疲れているときには、見ると本当に疲れる重たいドラマ。

重いけれど、とてもおもしろい視点でアメリカの近未来を描いたドラマ。

ビジュアル的には、昔の話かと思うが、これは近未来。

 

環境破壊により子供の出生率が落ち、国家存続の危機に陥ったアメリカ。

偏ったキリスト原理主義者による内戦が起き、クーデターが勃発し国家を乗っ取られる。

キリスト原理主義者たちはギレアド共和国を成立。軍国主義と身分主義に基づく社会を作り上げ、女は職に就くことはおろか、本を読むなど学ぶことを禁じられている。できることは男に従う事だけ。

 

身分主義により身分の低い国民は高官たちの奉仕者となる。妊娠可能は女は“侍女”に。妊娠できない女は家事を行う“女中”か、侍女を飼いならす“オバ”か、“イゼベル(娼婦)”に。身分の低い男は、武装して反乱分子を見張る“守護者”か、人々を監視する“目”か、逃亡者を狩る“ハンター”になる。それぞれに仕事でなく、役割が与えられる。

 

 

このドラマの主人公は侍女アルフレッド。

ウォーターフォード司令官の家に派遣された妊娠可能な若い女。

彼女の役割は儀式という名のレイプを受け、司令官の子を授かること。

 

シーズン1では、アルフレッドの葛藤や侍女たちがおかれた状況、

侍女アルフレッドになる前の彼女の生活や家族を描いて全体像をみせている。

 

 

とんでもない世界観!と驚くかもしれないが、そう現実からかけ離れた世界ではない。特にアメリカにおいて。

 

キリスト原理主義については、「ジーザス・キャンプ」というドキュメンタリー映画をみてゾッとしたのを覚えてる。

聖書に書かれていることをそのまま信じるこの宗派は、

人間がアダムとイブからうまれたものだと本気で信じている。

矛盾が生じるため、子どもを学校に通わせられず、自宅学習をさせている。

ビッグバンも、進化論も、地動説も信じない宗派だ。

子どもたちは、神の教えを守るために命を捧げるよう教えられる。

テロリストの洗脳となんらかわらんゾッとする世界だ。

 

シーズン1では、アルフレッドがやっと妊娠したのだが、司令官は子種ナシなことは周知の事実で、

アルフレッドは“目”と関係をもっていた。

妊娠したことで大切に扱われるはずだったのだが、命令に背いたために囚われの身となる。

その命令は、子供の命を危険にさらしてしまった仲間の侍女を、殴り殺すことだった。

仲間を自分の手で殺すことで、罪悪感を負わせて抵抗力を奪う狙いもある。


そして、司令官に連れて行ってもらった娼婦館で、親友と偶然再会。

その後、親友はカナダに亡命し、アルフレッドの夫とも再会をはたした。

ウォーターフォード婦人はアルフレッドが無事出産するまで、

抵抗力をうばうためにアルフレッドの子供を一目だけ見せる。

子どもになにかあれば、逃亡しようとしたら、あの子の安全は保障できないと脅す。

アルフレッドがうなだれて囚われていくシーンで、シーズン1は終わった。

 

シーズン2から反撃がはじまるのだろう。

人の本性を丸裸にしたドラマでおもしろかった。

理念のためといいつつ、倫理観と道徳観が異常にかけた新国家。

人の命も軽く、死体はその辺りに吊るされてさらされている。

 

でも、はて?

アフリカ大陸などの内戦激戦国で、

実際に起こっている出来事と本質は一緒ではないのだろうか。

ここで描かれていることは別に想像の世界なわけではない。

暴力と金が大好きなテロリストあがりの独裁者を

インテリ風の男が演じているだけで、内線国とほぼ同じ。

 

ギレアドの男達も悪いが、黙って従う高官の妻たちが一番悪い。

学があるのに何も疑問に思わず従うのは哲学者ハンナ・アーレントがいうところの“思考停止による凡庸な悪”だ。この先、どんな展開になるんだろう。

賞を総なめしただけあり、いろいろと深い意味をもつドラマだ。

 

おもしろかったけど、見るのにエネルギーいるんだよな。そこがネック。

 

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2017年アメリカ

出演:エリザベス・モスジョセフ・ファインズイヴォンヌ・ストラホフスキーアレクシス・ブレデル