先月は、WBC一色の月でした。予選ラウンドは日本が圧勝する試合が多かったのですが、準決勝、決勝は見ごたえのある展開でした。

 良い選手がそろっており、全員が頑張ったのはもちろんですが、監督の力も大きかったのではないかと思います。

 そうしたなかで、稲盛和夫追悼特集(月刊致知2022.12)で岡田武史(サッカー元日本代表監督 元盛和塾生)と栗山英樹監督との対談集が掲載されていたことを思い出しました。

 栗山監督は、盛和塾生ではありませんでしたが、稲盛さんの本はたくさん読んでいるようで稲盛さんの言葉でどれか一つ挙げろと言われたら、次の言葉を挙げると言っています。(以下京セラフィロソフィーより)

 

             小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり

   

 人間関係の基本は、愛情をもって接することにあります。しかし、それは盲目の愛であったり、溺愛であってはなりません。

 上司と部下の関係でも、信念もなく部下に迎合する上司は、一見愛情深いように見えますが、結果として部下をダメにしていきます。これを小善といいます。「小善は大悪に似たり」と言われますが、表面的な愛情は相手を不幸にします。

 逆に信念をもって厳しく指導する上司は、けむたいかもしれませんが、長い目で見れば部下を大きく成長させることになります。これが大善です。

 真の愛情とは、どうあることが相手にとって本当に良いのかを厳しく見極めることなのです。

 

 このことの実践が、不調が続いていた村上宗隆選手の4番から5番に下げた事ではないかと思います。村上選手は昨年の3冠王です。プライドが傷ついたと思います。しかし、栗山監督はこれで終わる選手ではないという信念のもと使い続け、準決勝のメキシコ戦で劇的なサヨナラタイムリーを放ちました。そして、決勝のアメリカ戦では同点ホームランを打ちました。

 

 4番のままであれば、不調が続きこのような結果はなかったかもしれません。

 ましてや、他の選手と交代していたら村上選手は負のイメージを引きずったまま帰国の途に就くことになっただろうと思います。

 

 とにかく、ハラハラしながらも楽しいWBCでした。

 

                           所長  須 田 幸 英