通常国会が閉会し、9月の自民党総裁選に向けた動きが政局の焦点となっています。岸田首相が再選を目指す一方、「ポスト岸田」として複数の有力政治家の名前が取り沙汰されています。「次の首相」に誰がふさわしいのか、世論調査の「人気度ランキング」と、現実政治の結果はどうだったのでしょうか。

 

確認できた「次の首相」で最も古かったのは平成9年9月調査ですが、時は自民の橋本龍太郎政権。トップは現職首相の橋本氏(11・4%)で、次点は当時の民主党代表、菅直人氏(7・3%)だったのです。菅氏はこの前年に「自社さ」連立の橋本内閣で厚生相として初入閣し、薬害エイズ事件への対応などで名を上げ、

 

11年1月調査では「最も首相にふさわしい」ランキングの1位(12・4%)になっています。2位は田中真紀子氏(7・3%)、3位は小沢一郎氏(6・7%)で、時の首相、小渕恵三氏は4位(4・6%)でした。如何ですか?急逝した小渕首相の後を継いだ森喜朗政権下の12年5月調査では田中真紀子氏(6・9%)が菅氏(4・1%)を抑えてトップに。現職首相の森氏(2・6%)は5位で小泉純一郎氏(2・6%)は、5位だったのです。

 

「ポスト小泉」を占った同年5月調査では、当時の官房長官、安倍晋三氏(41・7%)が圧倒的な人気を博し、その先々代の官房長官だった福田康夫氏(23・2%)が続きました。現在「ポスト岸田」の上位常連である河野太郎氏(1・4%)も、このころ候補の一角に加わっています。ただ、高い人気を誇った安倍氏の第1次政権と福田政権はいずれも短命に終わり、麻生太郎政権を最後に自民はいったん下野することになりました。

 

短命政権が続いた時代にあって、人気を集めたのは舛添要一氏でした。21年3月調査では小泉氏(10・1%)に次ぐ2位(9・4%)。防衛相を務めた小池百合子氏(4・5%)も一定の支持を集めていました。舛添氏はその後自民を離党し、26年2月の東京都知事選で初当選しましたが、在職2年4カ月で「政治とカネ」をめぐる疑惑により辞職。後継を選ぶ知事選で小池氏が当選したのです。

 

21年9月には、国民の圧倒的な期待を受けて鳩山由紀夫政権が発足。同年10月調査の「首相にふさわしい政治家」では、当然のように鳩山首相(28・7%)がトップとなり、3位に外相の岡田克也氏(8・2%)、4位に副総理の菅直人氏(5・5%)と、政権の「顔」が上位に並びました。

 

しかし、長く政界の人気者だった鳩山、菅両氏とも、政権獲得後は一気に国民の支持を失い、鳩山政権発足から半年後の22年4月調査では、鳩山氏を「首相にふさわしい」とした回答は3・6%に激減。後継首相となった菅直人氏も、発足当初の22年6月調査は26・7%で滑りだしたのですが、約1年後の23年7月調査では1・7%まで下がったのです。

 

24年12月に発足した第2次安倍政権で、安倍氏と2枚看板を張ったのは幹事長の石破茂氏でした。「日本のリーダーにふさわしい」政治家を尋ねた当時の調査では、安倍氏(14%)、橋下徹氏(12・9%)と続き、同率3位(10・5%)で石破氏と、都知事を退任したばかりの石原慎太郎氏が並んでいます。

 

以降、石破氏は「次の首相」ランキングで首位が定位置となりました。ただ、総裁選では逆転負けや出馬断念など苦難が続いています。高い国民的人気は必ずしも結果に結びつくわけではないし、過去の事例を見る限り、国民からの人気や期待が失望に一転するのも早いことが良く解ります。

 

世論調査ではありませんが、政治報道の「プロ」による政治家ランキングというのもありました。「文藝春秋」1996年1月号の記事「現役政治部記者107人が選んだ21世紀のリーダーは誰か」から、トップ10を抜粋すると、①鳩山由紀夫②船田元③谷垣禎一④加藤紘一⑤小沢一郎⑥小泉純一郎⑦橋本大二郎⑧鹿野道彦⑨鳩山邦夫⑩横路孝弘(敬称略)

 

専門家でもこの程度なのですから、「首相にふさわしい政治家」で人気があってもとんでもない政治家が如何に多いことか。平成11年5月調査の安倍晋三氏だけが、人気と実績がイコールになっていますが、これが日本の政治家の実態なんですね。