日韓両国は1日の防衛相会談で、韓国海軍による海上自衛隊機へのレーダー照射事件に関する再発防止で合意し、防衛交流を再開しようとしています。でも、事実解明は棚上げされたままです。火器管制レーダーを照射された日本側には事実を示すさまざまなデータがあり、全面否定する韓国の主張は荒唐無稽なのですが。それが、ここにきて、照射の隠蔽は「文在寅大統領の指示」だったことなど、一連の経緯を韓国の一部軍人らが非公式に日本側に説明していたことが明らかになりました。

 

2018年12月20日午後3時頃。能登半島沖、日本のEEZの大和堆と呼ばれる漁場で、通常の警戒監視活動中だった海上自衛隊P1哨戒機が韓国海軍の駆逐艦(3200トン)から火器管制レーダーを照射されました。P1は無線で駆逐艦に意図を照会しましたが、応答は全くなし。海上には韓国の駆逐艦と海洋警察艦、漁船らしき小さな船がいました。

 

日本は直ちに韓国に強く抗議したところ、韓国側は外交ルートで「遭難した北朝鮮漁船の捜索中だった」と説明。韓国国防省は「作業中にレーダーを使ったが哨戒機を追跡する目的で使った事実はない」とコメントし、韓国メディアも韓国海軍の話として「火器管制レーダーを使用したのは事実」と報じていたのです。

 

ところが、発生の5日後から韓国国防省はレーダー照射の全否定に転じました。「カメラは使用したが照射はしていない」。これ以後、韓国側の主張は否定一辺倒となり、「日本の哨戒機が低空飛行をした行為そのものが危険」として日本側に謝罪まで求めてきたのです。日本政府は、異例の「最終見解」を発表、韓国側との協議を打ち切りました。これが当時の状況でした。

 

しかし、ある防衛省幹部OBは「韓国国防省は、日本に対し、レーダー照射の事実を公表しようとしていたようだ」と証言し、事件発生から約1週間後、韓国国防省の知己から連絡が入り、『鄭景斗国防相(当時)が青瓦台に火器管制レーダー照射を報告に行ったところ、文氏から「照射はなかったことにする」と命令された。このため国防省はこの件で「何も言えなくなった」。鄭氏は韓国軍幹部OB数人に一連の事情を日本側の防衛省幹部らに伝えるよう指示した』と話しています。

 

当時、青瓦台は、北朝鮮から漁船で逃げた人間の拘束を依頼され、捜索水域に近い場所で演習中だった駆逐艦が現場に急行した。(P1が駆逐艦を発見したとき)駆逐艦は海に飛び込んだ北朝鮮人の身柄を確保している最中だった」というものです。防衛省幹部OBは「(脱北者を)軍が港に搬送した4~5時間後には彼らを北朝鮮に送ったと聞いた」と証言していますが、何をそんなに急いだのでしょうか。

 

この経緯が事実なら、韓国駆逐艦は拘束をP1に撮影されることを極度に警戒し、火器管制レーダー照射という非常手段に出たことになり、文政権は事件の経緯を日本に詮索されて、「北朝鮮の依頼に応えた身柄確保」が暴露されることを恐れた可能性が高いと言えそうです。

 

いずれにしても、韓国軍としては、自衛隊機へのレーダー照射については事実を認めて謝罪する意思があったが、大統領指令で全く公表できなくなり、そのことを日本側に知らせたかったのではないかと考えられそうです。そして、この経緯は当時の安倍政権に報告されましたが、非公式な情報として処理されたのでは無いかと思われます。

 

日韓間ではレーダー照射の有無が焦点ですが、事件の本質は「なぜ自衛隊機が照射されたか」にあり、現在の尹錫悦政権が照射事件の背後にある文政権と北朝鮮の癒着を暴くのかどうかが、この問題の真の解決に繋がるのではないかと思います。