9月の自民党総裁選に向け、岸田総裁と茂木幹事長の関係が一触即発の様子だそうです。岸田氏は、度重なる茂木氏のスタンドプレーを快く思っていませんでしたが、岸田氏の派閥解散表明以降、溝はさらに広がり、茂木氏は次の総裁選に出馬する野心を隠さず、党内の中堅・若手の取り込みに余念がありません。

 

3月初め、岸田氏は茂木氏に電話で令和6年度予算案を4日に採決しようとしていた茂木氏に対し、岸田氏は2日採決を命じました。憲法の規定で3月末に自然成立させるためには、2日に採決させなければならず、4日にずれ込めば、年度内成立が保証されないまま参院で防戦に追い込まれる事態になることが予想されたからです。

 

しかし、この時、茂木氏は立民の岡田幹事長の打診を受け、4日採決に向けて自民国対への根回しを始めていました。茂木氏の思わぬ行動に首相官邸では驚きの声が上がり、首相の腹心の林官房長官は「突然こんなことをやるなんて…」と述べていたそうです。結局、首相が茂木氏に2日採決の方針に変更はないことを伝達し、4日採決は幻となったのですが、この出来事は岸田氏と茂木氏の深刻な亀裂を改めて示したと言えます。

 

岸田氏が自民総裁選に選ばれるまで、茂木氏との接点はほとんどありませんが、岸田氏は総裁選で茂木派が岸田支持に回ったことに感謝し、政権発足直後には外相に留任させ、10月の衆院選で甘利前幹事長が選挙区で敗退すると、その後任に茂木氏を抜擢したのです。

 

また、岸田氏が政権運営でたのみとしたのは、茂木氏と麻生副総裁でした。岸田氏は党本部に頻繁に足を運び、両者に重要政策の相談を重ねてきていました。当時、茂木氏は、自身と麻生氏が首相を支える構図を「三頭政治」と称し、3人の中では唯一首相経験がない茂木氏の言動に政権内では眉をひそめる向きもあったのですが。

 

しかし、茂木氏はスタンドプレーが多く、両者の間柄は雲行きが怪しくなっていきます。首相の看板政策でもある児童手当の所得制限撤廃などでも官邸に根回しをせず、スタンドプレーに岸田氏の心証も徐々に悪化していきました。茂木氏への不信感を高める首相は人事で、茂木氏とは不仲の小渕優子選対委員長を起用するなど「茂木氏包囲網」を敷いたのです。

 

それでも三頭政治はかろうじて存続していましたが、今年1月、党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を受け、岸田氏が茂木氏に事前に相談せず岸田派解散を表明したことで、関係悪化は決定的なものとなりました。

 

そして、茂木氏が「群雄割拠の時代になる」と発言したように、茂木氏は、「草刈り場」となっている清和会などの中堅・若手の取り込みに注力し始めたのです。赤坂議員宿舎の若手の会合にウイスキーを持参して駆けつけたり、不記載事件を受けて執行部が各地を行脚する「政治刷新車座対話」にも頻繁に足を運ぶなど地方回りにも余念がありません。

 

こんな様子について、岸田氏は「政権がつぶれるのを待ってるんだろ」と茂木氏の動きを冷ややかに見ているようですが、茂木氏も決して盤石な状態ではありません。茂木氏が総裁選に出る場合の足場となるはずだった茂木派は、小渕優子氏や関口参院議員会長ら有力者の退会が相次ぎ、解散せざるを得なかったのです。茂木氏を取り巻く情勢は「背水の陣」とも言えますが、それでも首相から国政トップの座を取りに行くのでしょうね。

 

いよいよ、国民不在の権力闘争が始まったということなのでしょう。今の日本の政治は、戦後最悪の民主党政権時に並びかけるほどの状態だと思います。これでは、与野党ともに支持されなくなり、支持政党無しが50%というのも納得出来ますね。国民の支持が増える新しい政党に期待するしか無いのでしょうね。