衆院3補選は自民党の惨敗で終わりました。東京15区と長崎3区では公認候補者すら擁立できず、唯一の党公認候補を立て、首相自身が2度も選挙区入りした島根1区で惨敗でしたから。内閣支持率の低迷に直面していた岸田首相は、「政治とカネ」の問題に十分な対応が出来ず、元々批判が続くLGBT法案、また増税などについても解決策が無く、国民から「痛烈な審判」を突き付けられました。

 

茂木幹事長は、「逆風が非常に強かった。厳しい結果になったことを重く受け止めねばならない」と語りましたが、幹事長として今回の選挙への対応は十分だったとはとても言えないですね。やる気が無かったのか、岸田首相の辞任への期待で手抜きしたのか。すでに、次期総裁選に手をあげるために、党内若手などに接近しているようですし。

 

唯一公認候補者が立候補した島根1区には、岸田首相が21日と27日の2度も現地入りしましたし、石破茂元幹事長や小泉進次郎元環境相といった人気者も送り込みましたが、大差で敗れることになりました。これまで、首相が応援に入る選挙区は、ほぼ勝利が見込める選挙区にしか行かなかったようですが、島根1区には2度ですからね。

 

ある保守系のベテラン議員は、「政権交代に期待したものの失政続きだった民主党政権のイメージは、国民に広く浸透し、定着していた。安倍晋三元首相による2012年の政権奪還後、『悪夢の民主党政権』というキーワードは、自民党の正当性や安定性を説明する強力な説得材料だった。だが、いつの間にか、国民にとっては『悪夢の岸田政権』『奢る自民党』に変わっている気がする」と話しています。

 

そうなんですよね。『悪夢の岸田政権』なんですよね。立民の泉代表は、3補選全勝という結果を受けて、「早期の衆院解散を求めたい」と述べていますが、通常国会会期末に「内閣不信任案」を提出することも視野に入れているとみられています。『悪夢の民主党政権』が終わった時を思い出しているのかも知れませんね。

 

ただ、当時の自民党総裁は安倍晋三氏でした。でも、今の立民は泉代表です。良識ある有権者は、『悪夢の民主党政権』と『悪夢の岸田政権』を同じだと思っているのでしょうか。私には、ここまで落ちた岸田政権ではありますが、当時の民主党とは大きな開きがあり、政権交代に繋がるとはとても思えませんが。

 

何といっても、立憲民主党は、外交・安全保障政策で大きな隔たりがありますし、共産党との関係や他の野党との候補者調整などの課題がありますからね。泉代表が首相なんてどうしてもイメージできません。

 

岸田首相とすれば、自民党総裁選で再選されるためにも、その前に「衆院解散」という勝負をかけるでしょう。解散できずに総裁の座を降りた菅前首相を身近に見ていたのですから。ただ、次期衆院選の議席予測には、「自民党70議席減」という衝撃的なものも見られ、解散は「一か八か」の勝負になることは確かですね。そして、公明党の山口那津男代表は、「政治不信が深まり、内閣支持率が下がり続けている状況で、信頼を回復するトレンドを作り出さない限り、解散はすべきでない」と述べています。これを無視するのは難しい。

 

今回の衆院3補選は、岸田総裁のままでは戦えないという事実を厳然と突き付けたものになったと言えますが、自民党内に『岸田降ろし』につながる機運は乏しく、裏金問題で派閥が消滅して、党組織がガタガタになり、自民党は『崩壊した』状況です。こうした中でも岸田首相は、自ら掲げた『減税』効果や、外交成果などをアピールしつつ、浮揚策を探りながら衆院解散のタイミングを模索しているのでしょうね。

 

ここに来て、岸田首相は派閥の必要性を痛感しているのかも知れませんね。党内の意見集約なんてできなくなっていますから。そして、政権運営のパートナーである茂木幹事長は総裁選出馬の準備で忙しいようですし、「裸の王様」状況ですから正しい判断も難しいでしょう。さて、来年初めの政界はどんな姿になっているのでしょうね。