だから多くの人が心配していたのです。その心配通りになりました。「いわゆる元徴用工」訴訟をめぐり、日立造船が韓国の裁判所に預けていた供託金約670万円が原告側に渡りました。というよりも奪われました。1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」していた問題で、日本企業に初めて「実害」が出たのです。無所属衆議院議員の松原仁氏は、「危惧したことが現実となってしまった。『日本外交の敗北』だ」と岸田政権を批判です。

 

そして、松原氏は予兆があったと述べています。1月に就任した韓国の趙兌烈外相は「日本の民間企業も同じ船に乗る思いで問題解決に参加してくださるよう期待する」と述べていましたし、尹錫悦大統領も今月7日、「韓日関係の改善を願う両国の企業人の協力」を呼び掛けており、日本企業に不当な支払いを求める姿勢が垣間見えていたのです。

 

日立造船の供託金が原告側に奪われたことについて、林芳正官房長官と上川陽子外相は、「遺憾の意」を表明しただけ。岸田政権の十八番「遺憾砲」ですが、供託金を手に入れた原告側は「日本企業による事実上の賠償」と勝ち誇っているとのこと。

 

松原氏は「岸田政権はなぜ、1月の趙外相や、今月の尹大統領の発言を受け、即座に韓国の駐日大使を呼ばなかったのか。今回の実害は、日本の駐韓大使を帰国させるべきほどの重大な事案だ。」と批判していますが。でも日本のマスコミってほとんど伝えていませんね。

 

そもそも、尹政権は昨年3月、韓国最高裁が日本企業に命じた賠償支払いについて、「韓国政府傘下の財団が肩代わりする」と表明した。それを岸田政権も受け入れて日韓関係正常化にかじを切った。まさに、舐められて、裏切られたのです。

 

ちなみに、安倍晋三政権では、国民や日本企業の財産を守るため、日本企業に実害が生じた場合の「対抗措置」として100前後の選択肢をリストアップしていたという。でも、岸田政権は何もしておらず、動く気配も無し。韓国にいいようにあしらわれているだけとしか思えません。あまりに大きい損失を岸田政権はどう取り戻すのでしょうか。

 

 

 

「反プーチン」の象徴的存在で、投獄されていたロシアの反体制派指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が急死し、プーチンによる殺人だと言われているようですが、岸田政権からは上川外相などからも何の発言も聞こえません。そして自民党だけではなく、野党からも真相解明を求める動きや関連した発言は見られません。これが自由と民主主義を主張しているはずの日本の政治家の姿なのですね。

 

バイデン米大統領はナワリヌイ氏の急死について「疑いなくプーチンと彼の悪党たちの仕業だ」と述べ、ショルツ独首相は、「民主主義と自由を求めて立ち上がったナワリヌイ氏は、勇気の代償を自らの命で支払った」と述べているのですが。

 

林官房長官は記者からの質問に対して、「コメントすることは差し控える」と得意の答弁。岸田首相らに国際社会に向けて適切な発信を素早く行う姿勢が欠けているとしても、彼らを補佐する国家安全保障局(NSS)や外務省は一体何をしているのか。

 

G7は独ミュンヘンで外相会合を開き、イタリアのタヤーニ外相は議長声明で「憤り」を表明しましたが、上川外相は、東京で日ウクライナ経済復興推進会議などがあったため、ミュンヘンの外相会合への出席は外務審議官が代理出席でした。それは仕方ないとしても、ナワリヌイ氏急死について発信しないのは、日本がロシアに忖度していると国際社会で思われても仕方ないでしょう。

 

国会は、派閥パーティー収入不記載事件ばかりでなく、自由と民主主義のために戦ったナワリヌイ氏を追悼し、真相究明を求める与野党での国会決議をするくらいの重要な出来事だと思うのですが。