「クプカ」展。知られざる画家の、知っておくべき足跡。 | オトコのパリ事情。毎週更新!を目指してます。

「クプカ」展。知られざる画家の、知っておくべき足跡。

 

「クプカ」と聞いて、あなたは何を想像するでしょう?

 

知っている人なら

「20世紀の頭くらいのピカソとかと同じ時代の画家さんだっけ?」

 

知らない人だと

「最近よくある変わった雑誌の名前か、北欧からきたショップかな?」

 

とそんな感じでしょうか。いずれにしても、あまり知られた名前ではありません。

 

パリのグラン・パレで本日3月21日から始まる

彼の回顧展のプレビューに行ってきました。

 

 

フランチシェク・クプカ。

そう彼はフランスで活動した20世紀前半を代表する画家。

当時ボヘミアと呼ばれていた現在の東欧チェコに生まれ、

プラハやウィーンで美術を勉強したあと、25歳で19世紀末のパリにやってきます。

 

 

よく美術の歴史本に載っている作品は、主に彼の後半生に描かれたもの。

 

 

 

しかし今回の展覧会では実にバリエーション豊かな

彼のスタイルが明らかになります。

 

 

抽象の画家が若い頃は普通の風景画を描いていた

というようなことはよくありますが、

クプカが描いていたのは、あまり普通な感じではありません。

 

 

「L'argent(お金)」とタイトルのついた作品では、

お金を象徴する怪物が女性にすり寄っていたり。

 

 

 

とても幻想的で、どこかSFチックなモチーフ。

 

絵画の歴史では「象徴主義」とか「神秘主義」と呼ばれていますが、

あえて簡単にまとめれば、

それまで流行っていた風景画や、

その一瞬の光とイメージを切り取った印象派のようなものではなく、

心の中の理想の世界や、見えない神秘の力を感性で表現しようとした運動です。

 

 

はじめはフランスやイギリスやベルギーで流行し、

よく知られている画家ではフランスのギュスターブ・モローとか

イギリスでは『オフィーリア』という水に浮かんだ美しい女性の絵で有名な

ジョン・エヴァレット・ミレーなどがいます。

それが東欧にまで広がって、クプカも影響されていました。

 

 

一念発起して東欧から憧れのパリにやってきた彼はその独特の画風を

本の挿絵などイラストレーションの世界で発揮します。

 

 

 

それがやがて一世を風靡するフォーブ(野獣)派や、

キュビズムから枝分かれしたオルフィスムという芸術運動に向かい、

さらにそこから抽象の世界へと向かっていくのです。

 

 

 

 

 

抽象的な絵画はいきなり生まれたのではなくて、

新しい表現のしかたをこの時代の芸術家たちが模索していく中で、

形づくられていったもの。

 

クプカはそのパイオニアとして、数々のトライアルをし続け、

我々がいる「この世界」を新しい方法で描く、独自の抽象表現に辿りついたのです。

 

 

 

 

彼のそんな「試みの足跡」を辿りながら、

この時代の絵画の潮流も見えてくる、グラン・パレの展覧会。

 

 

今はまだ凍るような寒さが残るパリですが、

展覧会は暑く賑やかな季節に変わっているであろう

7月30日まで開催です。

 

 

Kupka - Le Pionnier de l'abstraction 

「クプカ - 抽象の先駆者」

Grand Palais グラン・パレ

2018年3月21日〜7月30日

 

 

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