ウサギがあんまりしつこいので、太郎はしかたなく、
「じゃあ、ほんのちょびっとだぞ」
と、なべをウサギにわたしました。
ウサギは、うれしそうにおかゆを食いはじめ、
「あち、あち、あちいがうまい、いやあ、うまい! じつにうまい! ああ、うまかった。さようなら」
ウサギはなべをかえすと、あっというまに山へ帰ってしまいました。
太郎がなべの中を見ると、なんと、からっぽです。
こうしてウサギは、人のいい太郎をだまして、おかゆをみんな食べてしまいました。
おじいさんが帰ってくると、太郎はなべをかかえたまま、ションボリしています。
「太郎、おめえ、なにしてるだ?」
「あっ、じいさま。ウサギにおかゆを食われちまっただ」
これには、おじいさんもガッカリです。
よく朝、おじいさんは、山へ出かけるまえに太郎にいいました。
「太郎、きょうは、ウサギにおかゆを食われるでねえぞ」
「うん、だいじょうぶだ」
太郎
は、きょうこそおかゆをたらふく食おうと、はりきって作りはじめました。
そしてタ方。
「ウサギがきたって、もうぜったいにやんねえぞ!」
ところがまた、ウサギがきました。
「あっ、おめえのおかげで、きのうはひどいめにあったぞ。とっとと帰れ!」
するとウサギは、まじめな顔をしていいました。
「そんなこといってる場合じゃないぞ。おまえのじいさまがな、山でたおれておったど」
「えっ! ほんとうか? そりゃあた
いへんだ!」
太郎はビックリして、なにもかもほうりだすと、山ヘ走っていきました。
その後ろすがたを見送りながら、ウサギはニンマリ。