2023年初版、タイトルはトンデモ本っぽいですが大好きな中江有里サンが「絶賛」というので読んでみました(笑)。

ダーウィンが独創した「進化論」が3つの「呪い」を生み出したというのが著者の主張です。

①「進化の呪い」進歩せよを意味する「進化せよ」

②「闘争の呪い」生き残りたければ努力して勝てを意味する「生存闘争と適者生存」

③これは自然の事実から導かれた人間社会も支配する規範だから不満を言ったり逆らったりしても無駄だを意味する「ダーウィンがそう言っている」

だそうです(以上帯文より)。

最初の方は正統派ダーウィニズムとその展開、理論がやや難解ですが(僕は数学ができないので)大事なところなのでじっくり読みます。

ところがダーウィンのいとこゴルトンが名著「種の起源」を読んで感銘を受けたところから様子がおかしくなってくるのです。有能な数学者だったゴルトンはダーウィンが例えとして挙げた(自然選択の説明としての)人為選択によるハトの育種を人間社会に応用しようと考えたのです。そう、優生思想による人種改造です!

中盤からは優生思想信奉者の迷走・暴走ぶりが克明に記述されていきます。有能な学者が有能さゆえに犯した過ちは戦慄の一言に尽きます。なお、ナチスの悪行のお手本がアメリカの優生思想と人種差別にあったということを知り大変なショックを受けました。

上に挙げた「3つの呪い」はダーウィンの進化論を誤解したがためであり更に進んで優生思想という怪物を生んでしまった訳ですが現代の人間もその呪縛から完全に解放されているとは言い難いように思います。

本日もお付き合い下さりありがとうございます。