2017年初版、サブタイトルは中世東国の「三十年戦争」です。実はこの享徳の乱、1963年に峰岸先生が提唱されるまで名前もなかったのだそうです。僕も高校で習った覚えはありません。本書で述べられる2つの論点は①戦国時代は応仁の乱より13年早く、関東から始まった②応仁・文明の乱は「関東の大乱」が波及して起きたものであるというものです。

ことは1454年、鎌倉公方足利成氏が関東管領上杉憲実を自邸に招いて謀殺したことに始まります。成氏の父持氏や兄たちが上杉氏と対立して殺されたのが原因です。高貴な血の権威(足利氏)と事実上の権力者(上杉氏)は本来補完しあって関東を治めていくのが本則ですがどうもうまくはいかなかったようです。

公方家と4つに別れた管領家、更には介入しようとする京都の将軍家、それらの間で右往左往する板東武者たちととても無事には済みそうもない様相ですが事実戦乱は28年続きました。最終的には鎌倉公方と京の将軍が和解するかたちで収まりましたが時代は元に戻らず関東は戦乱の中に呑み込まれていくのでした。

文献を丁寧に読み込んだ力作です。

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