前々回の『殴り合う貴族たち』に続き繁田信一先生のご著書第2弾です。2020年初版。前著では主に都の上級貴族の暴力沙汰が取り上げられていましたが、今回は主に地方の荘園に暮らす下級貴族や地方豪族たちすなわち「武者」と呼ばれる人々が主人公です。世代数で言えば鎌倉武士の曾祖父の曾祖父に当たるのだとか。

「下級貴族の殴り込み」「皇族の稲倉に放火」などと相変わらず刺激的な帯文ですがそれだけではありません。今も昔もトラブルにお金(当時は米)がつきものなのは変わりません。それで自ずと経済史の様相を呈するのですがこれがまた面白いのです。例えば盗賊の稼ぎに関する史料が残っていて結構笑えます。

武者と暴力・盗賊との繋がりと言えば芥川の「羅生門」を思い出していただければ容易にお分かりでしょう。平安朝の人々は上下を問わず危ない世界を生きていたのです。