平成29年初版です。平安朝から南北朝時代へと唐突なようですが、実はNHKオンデマンドで『太平記』(平成3年・真田広之)を観ておりましてこれが結構面白い。それで足利尊氏の本格的な評伝を読んでみようと思った訳です。著者は『闇の歴史、後南朝』『南朝全史』『太平記の群像』などの著書がある当代一の南北朝時代史研究者、森茂暁先生であります。

本書の特色は尊氏・弟直義ほかの発給文書1,500点を広く収集し緻密な分析を加えて足利尊氏の人物像を抽出しようとした試みにあります。なかなかできることではありません。そしてその試みは成功していると言ってよいと思います。

一言で言うと尊氏は清濁併せ呑む政治家タイプの人物だったようです。また弟直義は切れ者の能吏タイプの人物だったとも。他にも様々な魅力あふれる人々が活躍するこの時代、南北朝期からは当分目を離せそうにありません。