2015年初版、著者は『精子の話』(岩波新書)の著作もある生物学者です。昭和天皇・上皇さま・秋篠宮さまが三代にわたって生物学のご研究に取り組まれてきたことはよく知られていますがそのご業績については意外と知られていません。それを一般の方に知ってもらおうとこの本を書かれたのだそうです。昭和天皇以下の方々の生い立ちから始まってご研究の道に進まれたきっかけ、ご専門(昭和天皇の海産ヒドロゾア分類、上皇さまのハゼの分類、秋篠宮さまのナマズとニワトリの分類)とその研究スタンス、ご業績の意味といった事柄が丁寧に述べられています。論文の題名をずらっと並べたページは一見冗長なようですがじっくり読んでみると意外と味わい深いものでした。公務の合間に時間を作って研究なさるというご姿勢はお三方に共通のもので、それにも拘らず単なるアマチュアの域を遥かに超えて一流と目されるレベルに達しておられるのは不断のご努力によるものです。それでいてご自分からはめったにご専門の話題をなさらない謙虚なご態度には本当に頭が下が下がります。こういう皇室との接し方もあるのだなと目を開かれた一冊でした。