昭和48年初版、評伝・太宰治であります。太宰の作品は高校時代に新潮文庫でだいたい読んだように思いますがその後長い年月が経ってしまいました。ちくま文庫版全集を買ったのを機に何かのとっかかりにもなるかと本書を手に取りました。内容は太宰の生涯に沿って主な著作を配列し解説するというものですが、堤氏が晩年の太宰に師事し7年間を共にしたというだけあってその叙述には愛が感じられます。それでいて失敗作は失敗作と断じるいさぎよさもあり興趣は尽きません。太宰の心的エネルギー・その生命力は人並み外れて凄まじいものであったとの指摘にもむべなるかなと感じ入りました。それでなければあの苦悩・恥辱・忍耐・咆哮の人生を生ききることはできなかったでしょう。「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ。」有名な『斜陽』のフレーズであります。その生涯を通じて闘い続けた太宰、弱者・敗残者という一部の非難は謂れのないものではありますまいか。