2005年初版、現在は講談社学術文庫で読めるようです。これは中国の南北朝時代ではなく日本の南北朝時代(14世紀中期からの60年)を扱った本です。2つの朝廷が分立して争った動乱の時代としてご承知の方も多いでしょう。『太平記』の時代ですね。その中でも吉野山の南朝に関しては非常に史料が少なくその実態は明らかではありません。そこで森先生は数少ない南朝天皇の発給文書を収集し、さらには『新葉和歌集』の詞書(ことばがき)というそれまで注目されていなかった文書に着目して南朝の実像にかなりのところまで迫りました。その努力には本当に頭が下がる思いです。歴史小説のようにはすらすら読めませんがこの時代のことを真面目に知ろうという人にはうってつけの一冊だと思います。なお、森先生には「後醍醐天皇」「皇子たちの南北朝」(中公新書)「闇の歴史、後南朝」(角川ソフィア文庫)などの著書があることを申し添えておきます。