昭和45年初版です。村上芳正氏のカバー絵が怪しい雰囲気を醸し出しています。これは「泥棒日記」に続く新潮文庫ジュネ4部作の3番目です。「泥棒日記」に衝撃を受けた僕は裏切り・盗み・物乞い・男色等々から成るジュネの世界に捕らわれ、堀口大學氏の美しい訳文の導きもあって更なる深みにはまりこんで行くのでした。サルトルをして「聖ジュネ」と呼ばしめたその心は僕のような凡愚には知る由もありませんが、心ならずも引き寄せられてしまう悪徳の香りには目眩にも似た感覚を覚えてしまいます。新潮社から5巻の全集が出ているのは知っていましたが正直言ってもう置く場所がなく、せめて文庫で代表作を揃えよう、できれば初版でというのがこのシリーズに手を出した理由です。おかげさまで2冊は初版を入手できました。あと2冊です!