ニーハオ!!


ということで、2024年世界ジュニア選手権@台北を観戦してきました。
海外の試合観戦は2度目で、前回は2017年世界ジュニア選手権でした。今回は実に7年ぶりの台湾上陸ということになります。

前回訪れた時は私自身がまだ学生で、さらに友人7名と全日観戦+観光も込みでもはや修学旅行or卒業旅行みたいな感じで約1週間台湾にいたのですが、今回は1人で試合の後半2日程のみで3泊4日(前後2日はほぼ移動のみ)という小旅行的な感じとなりました。

飛行機やホテルの費用はもちろん掛かりますが、チケットが無料であったこともあり、また台湾は日本からの観客や日本語で対応していただけるお店も多く、今回の遠征は国内試合の遠征とあまり変わらない気持ちで行くことが出来ました(笑)

後半2日程のみということで見たカテゴリーはアイスダンスRD&FD、女子FS、男子FSとなりました。出来ればペアも見たかったですが、こればかりは仕方なし。
ということで今回の記事は現地で見た女子、アイスダンス、男子の記事を作成いたします。


〜女子編〜

女子SPは46人が出場、そのうち24人がFS進出なのでこれだけでも激戦です。その中でFS進出ラインがSPで53点というかなりのハイスコアになりました。
エントリーを見た時点で50点は超えるだろうなと想定はしていたのですが、ここまで高くなるとは思っていなかったです。

その流れでFS進出したのは本当に選りすぐりのスケーターということになりますが、FSもその流れでレベルが大きく底上げされ、24人全員が100点を超えるという、本当に驚くべき状況となりました。

この状況を産んだ要因としては、何と言ってもエレメンツのミスが少ないことが大きいと思います。
昨季のルール改変によりジャンプ構成が組みやすくなったことはあるにしても、ジュニアの女子で7本の3回転ジャンプを当たり前にある程度揃えるという演技が数多く見られました。

ミスが少なくなり各スケーターのエレメンツの実施力のレベルが上がった事自体はとても素晴らしいことである事を前提に、それ故に演技全体の課題も浮き彫りになった大会になったと思います。
今大会で点数に差が出たポイントとしては、次の通りであると考えます。

①プログラムの複雑さ
②体の使い方の大きさと引き出しの多さ
③スケートの伸びとリンクカバーの大きさ

①プログラムの複雑さ
この点については「エレメンツをこなしているだけ」になっていないかを確認しているのですが、この点に関しては多くのスケーターが上手くこなそうとしていたように見えます。エレメンツの間に何か曲を表そうと技を出していると感じる場面が多かったです。

②体の使い方の大きさと引き出しの多さ
この辺りから選手によって差が出ているなぁと感じました。振付が大きく出来るかどうかというのはもちろんですが、それを曲に合わせているか体の動かし方の速度が常に同じになっていないかというところがポイントになってくると思いました。
このあたりの上手さに関しては、やはり後半グループになると上手いなぁと思う演技が多かったです。

③スケートの伸びとリンクカバーの大きさ
正直に言うと、この点に関してはほとんどのスケーターが出来ていないなと感じました。スケーターのやりたいことは伝わってきても、それをもう少しスケール大きく見せて欲しい!と思う時間が多く、その大半がリンクの使い方の小ささに起因する所はあったと思います。
(ミスが少ない一方で120点に届いたスケーターが少なかったのはこの点が原因だと思っています)

この点に関しては、女子スケーターでしかもまだ15歳前後の選手でパワーが付ききっていない(無理にパワーで押して負担を掛けることをしない)ところは大きいと思っており、ここから先に体が成長してまた自然と身に付く部分であるかなとも思っております。今回の演技はその課題を今後に活かすものという風に解釈しております。

その中でスケーティングが一際上手いと感じたのは、やはり日本人スケーター3選手と、韓国のジアジン選手でした。

日本人3選手についてはこれまでのブログや呟きでも何度も言及しているので本記事では詳細は割愛いたしますが、世界ジュニアを観戦して改めて思ったのは、日本国内ジュニア大会のスケーティングスキルの高さです。国内大会で勝ち切るためにはジュニアのうちから(もちろんエレメンツはある程度揃える必要があるうえで)スケーティングスキルを磨く事をしないといけない環境です。

その一方で、シニアクラスになると特にユーロ方面の選手のスケートの伸びも大きくなる傾向になり、このあたりが昨年のさいたま世界選手権でも反映されてきているのかなと思いました。

大会全体の傾向としての記載はここまでにして、せっかく台湾まで行ったので、気になった選手を数人ピックアップします。

グランディナールさん🇨🇭
ジュニアでジャンプの回転がギリギリの選手が多い中で、回転が余裕なジャンプが目を引きました。それによりジャンプ着氷後の余裕が見え、その後にこなす振付にまでカッコ良さと余裕が見えました。

マリアエリーゼさん🇪🇪
ゴイディナさん🇪🇪
エストニア🇪🇪のジュニア上がって年数が浅い選手たちです。年数が浅いゆえにまだスケールは小さい所はありましたが、ただ自分のやりたいことを上手く上半身の動きに投影させるのが非常に上手いなぁと感じました。氷の上で柔らかく自在に動くことで曲想表現を的確に実施していると思います。このような選手がエストニアから出てきたところがとても興味深いです。

グラドキーさん🇫🇷
もともとロシア拠点でフランス代表の選手です。コーチはパノワ先生で、ロシアにもお馴染みの選手を多く見られています。
音に対する反応の良さ、それを上手く現す身のこなしや細かいターンがとても上手でした。ブエノスアイレスの冬で鳴っている弦楽器の音に合わせて緩急付けた演技になっていました。スケールはまだ小さいですが、持ち前の良さをこのまま保ってほしいです。

シェリーさん🇺🇸
彼女は比較的リンク使いが大きく、よく伸ばそうとするスケーティングを持っておられると思いました。彼女にパワーが付いたらアメリカの選手特有のデカいスケーティングになると思います。
そのスケーティングのスタイルから音取りが細かい体の動かし方が繰り出されます。スケーティングはアメリカン、上半身使いは宮原知子さんor田中梓沙さんというようなスタイルで、この2つが混ざると非常に斬新な感じに見えてとても興味深い人材でした。
今後出てくるプログラムが楽しみです。

ジアジンさん🇰🇷
今大会で現地で見られるのを特に楽しみにしていた選手の1人です。
1歩漕いだらすぐに伸びるスケートで、その分エレメンツの間の姿勢を美しく保とうとする余裕が窺えました。また、とにかくジャンプが綺麗で加点がたくさん付くのが現地でも分かるレベルです。
1点だけ気になった事があるとすると、これだけの技術がある中で、ジャンプ前の空白が多いなと感じたことです。今大会の中ではスケーティングスキルや演技中の姿勢の面で圧倒的に上手だったこともあり、優勝した島田麻央さんに肉薄し他のスケーターと大きく差を付けた所はありますが、シニアの大会に出ている各選手のプログラムの複雑さと比較するとまだ密度は不十分であると感じました。あと1年でどこまで詰めてくるのかという点に注目して見たいと思います。

女子編はここで締めです。
何よりも、JGPのYouTube配信で見ていたスケーターを目の前にして見るとこんな演技しているのかというのを発見出来て本当に面白かったです。