続いては女子編となります。

ここ数年は国内大会、国際大会ともに、GPSに招待される選手、そうではない選手の力関係が拮抗しており、誰が上位に来てもおかしくない、トップ層レベルの選手でもミスがあれば信じられない順位になってしまうということが頻発しております。

3月のさいたま世界選手権でも上記のようなことが起こり、GPF進出経験者が苦戦したり、逆に思わぬ選手が上位入りを果たしたりしていました。安定してトップになれる選手が少なく、ある意味ではいろんな選手に上位入りのチャンスがある時代であるとも言えます。ただ今季のシーズン前半は苦戦している選手が多かったように思います。そのような状況が全日本でも起こったと見ております。

女子はショート、フリーともに現地で観戦できました。長い記事になりますので、最後まで読んでくださる方がおられましたら本当に根気があると思います。

🧜‍♀本田真凜選手
(SP28位:44.42)

真凜ちゃんの演技の華やかさというのはもうジュニア時代から言わずと知れたものと思います。そんな真凜ちゃんも大学4年生です。近年はなかなかスケートのスピードを出すのが難しくなったり、ジャンプの高さが出にくい状況に苦しんでおられました。さらに今大会は大会前に怪我をしてしまい、心身ともに満身創痍というような状況が演技から見て取れました。

それでも、終盤のStSqでは何とか持てる力を出し切ろうとしている姿が印象的でした。恐らくもうフリーには進めない…それは演技していた本人も会場内のファンの人も分かるというような凄く辛い状況の中でもとにかく自分の懸命に滑ろうとする姿に、僕も思わず力が入ってしまいました。

今後真凜ちゃんがスケートにどのように関わるかは分かりませんが、「スケートが好き」という気持ちを持ち続けてくれていたら良いな…と願うばかりです。


🌪荒木菜那選手
(SP27位:46.45)

上記の真凜ちゃんと同期、すなわち菜那ちゃんも大学4年生です。

昨季は休養シーズンとして、今季を最後のシーズンと決めて臨みました。
その最後のシーズンの全日本で見せた技が、ここ最近試合では取り入れていなかった3Lzと片手ビールマンスピンでした。中盤のループジャンプで2回転で転倒してしまうという大きなミスが原因でフリー進出とはならず、本人にも悔しい思いはもちろんあったとは思いますが、久々にトレードマークの高い3Lzと懐かしい気持ちにさせてくれる片手ビールマンが見られたことが非常に印象に残りました。最後に自分らしい技を見せてくれるとは本当に粋なことをしてくれますね!!

残りは2月末の愛知県大会ということで、全国の公式戦はこれで最後となってしまいます。どうか最後まで充実したスケート人生が送られることを願っております。


👸三枝知香子選手
(SP26位:50.19)

2年連続で全日本選手権出場です。2年前の東京での大学受験~名古屋の全ジュニを1日でこなすスケジュールを完遂したスケーターです。今季の東日本選手権では出場者の中の進出者が上位5人という中で、SP13位というかなり厳しい状況からFS3位、総合4位という大逆転で全日本進出を果たしています。これを「ド根性スケーター」と形容せずしてなんと言うのかという状況です。

ショートは2年連続のシェヘラザードです。僕は三枝さんのシェヘラザードの演じ方が大好きで、マクロ的には曲が変わるごとに体の動かし方を変えたりミクロ的にはなっている音に対して正確なタイミングかつキレも柔らかさも見える動きが本当に素晴らしいです。

ジャンプの回転不足が重なりフリー進出こそ出来なかったものの、昨季とは異なり大きな過失がない実施の演技が見られたことが良かったです。


🥚櫛田育良選手
(SP25位:50.20)

僕の中では今大会最大の衝撃は育良ちゃんのSP落ちです。

6分間練習を見た限りでは確かに3F-3Tのコンボがほぼ決まっておらず、恐らくそこで上手く気持ちの整理がつかないまま本番を迎えてしまったのかなというように見えました。
本番でもスピードとリンクの使い方が普段とは異なり噛み合っておらず3Fでセカンドがつけられず転倒、後半3Lzでリカバリーしようと、普段とは異なる一歩の伸びをしてしまいタイミングが合わずコンボを付けたものの転倒という悪循環が全日本で出てしまいました。本当に本番では何が起こるか分かりません。。

周辺選手の成績との比較、全ジュニでの素晴らしい演技および表彰台等も加味され世界ジュニアの代表に選ばれました。全ジュニで力を持っていることはもう分かっているので、どうか今回の全日本の結果はそれはそれとして上手く活用して臨んでくれることを願っております。


🥋石田真綾選手
(SP21位:54.12、FS24位:88.76、総合24位:142.88)

今年の東日本選手権の配信で初めて拝見した選手です。

柔道経験者という異例の経歴を持ち主のようで、ジャンプで回転している時の姿勢から安定感が見て取れます。それ以外の上半身の動かし方を見ても意図しないようなブレが少なく、力強い演技をするなぁと感じる選手でした。初めての全日本でしかもフリーに進出というところにガッツも感じます。


🇫🇷髙木謠選手
(SP20位:55.09、FS23位:93.30、総合23位:148.39)

この試合の成績次第では世界ジュニアの代表も見える位置の選手ですし、そうでなくてもスケートの伸びがこの1年で一気に伸びるようになった選手だなぁと思ってシーズンを拝見しておりました。この試合では3Lz-3Tを組み込もうとするなど、ジャンプ構成を大きく変えて挑んできました。結果的にはそのジャンプに大きく苦しんでしまい、かなり不本意と思われる出来となってしまいました。

髙木さんは髙木さんでユース五輪の代表に選ばれておりますので、この全日本の結果が何らかの形で活用されることを願っております。


⬜白岩優奈選手
(SP22位:53.42、FS22位:95.21、総合22位:148.63)

後述で!!


🎻大庭雅選手
(SP24位:50.80、FS21位:99.23、総合21位:150.03)

社会人スケーターとなってからももう6年目、そのうち5回全日本に進出、4回はフリーまで進出、ここ最近は3年連続で全日本のフリーまで進出するという充実っぷりを見せてくれています。
この6年の間に、キャメルスピンでは新しいポジションを身に付けたり、スピンのルール変更にはしっかり対応したり、社会人スケーターとは思えない進化を見せてくれたり、ジャンプはある程度維持続け異次元の調整能力を見せてくれています

SPの情熱大陸はジャンプこそミスが見られたものの、とにかく自分は楽しく、見ている人も楽しくというのを心掛けているような踊りまくる演技でした。FSでは最初に3S-3Tと3Lo-3Loを着氷し、コレオシークエンスのスパイラルは何種類ものポジションを見せてくれたりという、大庭雅の詰め合わせと呼ぶに相応しい演技となりました。

来季も続ける意欲を見せてくれていることが何よりも喜ばしいですね。本人の気持ちがとても充実しているのも伝わります。


🎼鈴木なつ選手
(SP19位:56.00、FS20位:99.67、総合20位:155.67)

鈴木なつさんは2017年の東日本選手権で初めて拝見しました。その頃は火の鳥と死の舞踏というともに切れ味が要求される演技スタイルでした。そこからタイスの瞑想曲や名作の水百景など柔らかい動きをどんどんと取り入れ、今季はその集大成とも言えるRiver flows in youをショートで選んできました。全日本のその演技はまさに名演で、体の動きの柔らかさと優しい氷のタッチがピアノ曲によく合った動きになっていました。

近畿ブロック、西日本、そして全日本で白岩優奈さんと一緒にいる姿を何度かお見掛けいたしましたが、ずっと仲が良い様子でした。最終的にお2人とも全日本のフリーまで演技披露出来ましたし、良い関係なのだろうなぁというのが窺えます。微笑ましいですね。(というか、お2人とも可愛いですね!!)


🇦🇺村上遥奈選手
(SP23位:53.13、FS19位:105.73、総合19位:158.86)

西日本選手権、全日本ジュニアと連続して凄く体の動きの切れも良く充実した演技に見えたのに対して、全日本選手権では少し硬さがみられてしまいました。鉄板の3S-3Tはよく決まっていました。


🎹清水咲衣選手
(SP18位:56.24、FS17位:112.88、総合18位:169.12)

従来から体の動かし方のスタイルは宮原知子さんを思わせるような丁寧さを感じていましたが、今季はそこにスケートのターンの滑らかさ柔らかさが加わったような感じがします
ショートのマラゲーニャではStSqでテンポが速い中でも柔らかくスムーズな足さばきで演技をこなし、フリーのため息では上半身も含めて体全体でしっとりと演じました。シニアで全日本初出場にして、回転不足の情報はあるものの、ショートフリー通じて大きな過失をすることなく良さを出し切った演技となりました。


☁️松生理乃選手
(SP12位:58.97、FS15位:115.37、総合17位:174.34)

順位の逆順で記事を作成しておりますが、この段階で松生さんが出てくるのが未だに信じられません。

滑っている時に摩擦がほとんどないスケートをしますし、その中で細かいターンや動きを駆使したミクロ的な曲想表現も上手、体もとにかく大きく動かすという、このフィギュアスケートという競技をするにあたって何もかもを持っているといっても差し支えない選手です。

2021年~2022年にかけて怪我や体調不良等が不運なタイミングで重なり、2023年は楽しく滑ることをテーマに掲げているように見受けられました。
それが功を奏したのか、GPSのカナダ大会では良さをかなり発揮して表彰台に乗るという成果を残して、さらに直前の愛知TPでも良い演技を実施し、これで全日本でも良い結果が残せる!!と、ファンはもちろんのこと松生さんご自身もかなり前向きな気持ちになっていたと思います。

それだけに、今回の全日本のジャンプの実施は本人にとってもショックだったのかな…というのが伝わってくるような出来でした。昨季の全日本ではフリーでミスがある中でもスケールの大きい演技を見せましたが、今年はそのスケールの大きさも少し欠けてしまったな…というのが分かる内容となりました。

カナダ大会の結果や演技を考えると恐らく来季のGPSの招待が来ると見込んでおります。今はもうとにかく松生さんが前向きな気持ちを持ち続けてくれることを願ってやみません。


💃三宅咲綺選手
(SP14位:58.23、FS14位:116.83、総合16位:175.06)

ショートのNever Enoughは、和田アキ子さんの「あの鐘を鳴らすのはあなた」みたいなお馴染み感を出しています。その鉄板プロでまさかの2A転倒でした。本当に全日本は何があるか分かりません。

フリーのカルメンの3曲の演じ分けは本当にお見事です。土台のデカいスケーティングの上に、妖艶ながら細かい音取りの振付のこなしがカルメンというプログラムにピッタリハマっているように見えます。冒頭2つのミスこそ惜しかったものの、その後は常に大きなスケールの演技での実施でした。スケールが大きいことは思いのほか大事だということを教えてくれる選手です


🏝️柴山歩選手
(SP16位:57.43、FS13位:118.29、総合15位:175.72)

昨季から「スケートの伸び」「リンク使い」に関する課題が浮き彫りになってきている選手であると言えます。今回の全日本でもその辺りはやはり気になってしまったことは否めません。
そんな中で柴山さんの良さとして確立されてきたのが、動きの美しさというところだと思います。フリーは中盤のハープの流れに合わせて腕から指の尖端まで動かしているというのが伝わる内容となっていました。


👭横井きな結選手
(SP10位:62.49、FS16位:113.31、総合14位:175.80)

一番良かったなぁと思ったのは、初めての全日本なのにも関わらず、物怖じせず堂々と演じていたところです。ショートでは他の選手でミスが多く出る中で、躊躇なくスピードを出してほぼパーフェクトな演技、フリーでは少しミスはあったものの、そのミスをリカバーする最後の3T-1Eu-3Sというこれまでほぼ見たことがないコンビネーションを何事もなかったかのように決めました。初めての大きな舞台で「横井きな結」というスケーターを刻み込んだと思って見ております。

ゆは菜姐さん的にはStSqで躓いたところが引っ掛かったみたいです。よ、よく見ておられる💦


💨河辺愛菜選手
(SP5位:67.25、FS18位:113.31、総合13位:179.71)

河辺さんも今大会はかなり苦戦してしまいました。やはり足の怪我が大きく影響したと思います。

ショートはエッジの情報が付きながらも3本上手くまとめて終盤のStSqを非常に楽しそうに深いエッジワークでノリ良く演じました。
フリーのボレロは常に3拍子を取り続けつつ、スピードもある程度保ちつつ、要素を決めなければならないので本当に大変だと思います。個人的にリズムとスピードについては上手く捉えているように見えてプログラムそのものの良さは結構出たと感じていて、その良さが見られたこと自体は凄く良かったなぁと思いました。
たださすがにジャンプが怪しいと思うものも多く、加えてスピンのレベル取りこぼしも多発してしまい、思っていた以上に得点が伸びなかったような感じになってしまいました。

要素を上手くプログラムの中に当てはめて決めていくこともまたスケート技術であると思うので、出来ればある程度回転が大丈夫だと思える状態での演技も見てみたい思いはあります。

とにかく今は足が万全の状態になることを祈ります。


🏍️世界のワカバヒグチ(樋口新葉選手)
(SP15位:57.97、FS11位:122.70、総合12位:180.67)

今季夏の大会に復帰した時に、スケートのスピードの出し方と体使いの強靭さが復帰前に比べていろいろとスケールが大きくなってませんか!?と、とても驚いたのがつい最近のようです。やはりワカバヒグチの良さはここにあるぞ!!というのがよく分かる演技でした。

ただ、さすがにベテラン年齢になってきて、その体の動きの切れの良さを常に維持するのはさすがのワカバヒグチにも難しいんだな…というのがGPSの試合を見て思ったことです。特にNHK杯では体の動きの切れ味が夏の大会の半分くらいに見え、ピーキングの底に来ていると感じた演技内容でした。
それを踏まえて全日本で久々に現地で見ると、スピードの出し方が相変わらず上手く、その点に圧倒されつつ、体の動きの切れ味は夏の大会ほどには見えないかな…?というのが正直な感想でした。
体の動きの強さも芯が強いと思う一方で、ワカバヒグチならもう少し大きく動かせそう…とも思ったし、そもそも復帰してからいきないある程度安定したジャンプを見てやっぱり上手いなぁと思いつつ、でもワカバヒグチならもう少しジャンプの高さが出るよなぁ…とも思ったりしながら演技を見ていました。
ワカバヒグチくらいベースラインが高い選手の演技を見ると、どんどんいろいろなことを求めてしまいます。
 

🧚江川マリア選手
(SP13位:58.55、FS10位:126.10、総合11位:184.65)

ジュニア時代から見るからにスケートが伸び、上半身の使い方が美しく、誰かが「世界の江川マリア」と言っていましたが、本当に世界大会に出ていないのが不思議なくらいに上手い選手です。
なかなか大きな大会で力を発揮することが出来ず苦しんできた選手が、今季は全体的に高いベースラインの演技を披露することが多くなりました。スケートの一歩の伸びという点ではとてもスケールが大きく、西日本の三宅さんと肩を並べるくらいだと思っています。

ショートこそジャンプでミスが続いたものの、フリーではミスを最小限に留めてようやく力が発揮された演技を披露しました。本人の大きなガッツポーズがそれを物語っていると思います。

全日本では少しエレメンツをミスしないことに舵を取った演技だったのか、トップ層と比べるともう少しスケールの大きさが出せそうかなという印象の演技にも見えました。江川マリアさんのポテンシャルは全日本で披露したもの以上を持っていると思いますので、来年是非全日本で200点目指しましょ!!


🧙住吉りをん選手
(SP17位:56.70、FS9位:128.52、総合10位:185.22)

りをんちゃんのスケーティングの伸びのポテンシャルは凄いものを感じます。演技中にジャンプにかけている力も省エネに見えますし、その分演技が綺麗に見えることも多いです。ただそのポテンシャルを存分に発揮し切るということがなかなか出来ずにもどかしい思いをされていると思います。

ショートでは緊張からか氷を押すときにいつもより力が伝わっていないように見え、スピードが出し切れずに全てのジャンプを思った通りにこなせず、さらにStSqでも躓きが見られたりしました。

挽回を狙ったフリーのEnchantressは昨季とデザインを変え、さらに恐らく後半のジャンプを安定して決めようと、後半の動きが少し簡略化したものとなりました。全体的に4Tの転倒以外は最後の3Fで回転がほどけてしまう以外はエレメンツをある程度まとめた内容となりました。
ただし、プログラムが後半になるにつれてスピード感が少し小さくなり、さらに動きが簡略化したことによって、後半の演技が薄味になってしまったことがとても気になりました。それを裏付けるかのように終盤のコレオシークエンスの加点が+1.14にとどまっています。(昨季は+1.36)

個人的な好みとしてはこのプログラムの後半は昨季のバージョンの方が内容が充実していた上に体も大きく動かしていたように見えます。ただ後半のジャンプを決めるにはある程度簡略化した方が良かったかもしれないし、でも何もコレオシークエンスとその後のスピンまで変えなくても…という思いもあります。(実際に演技構成点については昨季の方が全体として高く出ています)
本当にどのように戦略を立てるのか今後も試行錯誤されていくのだろうと想像しております。


👩‍💼青木祐奈選手
(SP11位:61.44、FS8位:130.57、総合9位:192.01)

現在大学4年生でもともと今季で引退のつもりでいろいろな試合に臨んでおられるという風に見えました。
しかし初めて出場したGPSであるNHK杯で潮目が変わったように見えます。青木さんも演技をすればするほど「今が全盛期」と思わせてくれるスケーターです。

青木さんはもともとスケートがジュワジュワと進むタイプのスケーターで、ジュニア時代のレミゼラブルを見るとその良さがよく分かると思います。
その良さをずっと持ちつつ、ジャンプの安定感に苦労しながら年齢を重ねつつ、今さらに上半身のコントロールの上手さがついて「青木さんらしさ」というものがますます明確になったように思います

体の芯が全体的に最近かなり強くなったように見え、上半身を腰から動かし、それでいて足元や体全体がブレない身のこなしになっています。それにより、自分の表したいことをそのまま演技で実施することが出来、見ている人が青木さんの演技を受け取りやすくなっているのだと感じました

青木さん自身、今後続けるかどうかとても悩んでいると思います。僕としては今の演技スタイルを見ているとまださらにここから上手くなるような感じにも見え辞めるのは本当にもったいないと思いますし、多くのファンもそう思っていると思います。
かといって1シーズン続けるにもそれ相応の時間や労力を使わなければならなことについても恐らくご本人は認識されているでしょうし、来季同じような環境で練習できる保証もありません。

とにかく続けるにしても自分の負担になりすぎないということが一番だと思います。
(ちなみに四大陸には補欠になっていますので、少なくとも2月までは絶対に現役選手であることが確定しています)


🐦山下真瑚選手
(SP2位:69.92、FS12位:122.23、総合8位:192.15) 

後述で!!


🦩吉田陽菜選手
(SP9位:62.73、FS6位:131.49、総合7位194.22)

今季の躍進は本当に目を見張るものがあります。これまでのシーズンではジャンプがかなり高難度かつスピードもそこそこ出ているのに、上半身の動きやリンクカバー、複雑な動きの少なさ等が原因でなかなか点数に繋がらないことが多かったです。(昨季のブログでもそれに近い点を言及しています)
それが、今季GPSに出場する中で、どんどん体の使い方が上手くなり、鳴っている音に対して輪郭がくっきりと分かるような演技になるようになりました。象徴的だったのが中国大会のFSで、これまでの試合と比べると格段に体の切れ味が良くなっているのが分かりました。

今回の全日本ではさすがにGPF3位という実績を引っ提げたことも影響したのか緊張感や硬さが少し見られました。このあたりについてはプレッシャーも影響したと感じています。
フリーではアクセルが抜け、次のコンボでも着氷ミスをしてしまうという実施でした。しかしその後の演技を見てベースラインがかなり高くなったように感じました。StSqのテンポに合わせたターンと体のコントロールが特によく分かるようになりました。


🧞渡辺倫果選手
(SP8位:63.66、FS7位:131.22、総合6位:194.88)

今季は8月までアイスショーに出て、シーズン序盤はプログラムを滑りきることもままならず、調子を上げていくペースが例年に比べてはるかに遅いシーズンとなりました。恐らく倫果ちゃん本人も戸惑ったと思います。
しかし倫果ちゃんのガッツは想像以上でした。中国大会でフリーで完璧な演技をして、陽菜ちゃんとの優勝争いが肉薄するという熱い戦いを見せ、一気に倫果ちゃんらしさが返ってきたように見えました。
(この2人の肉まんのエピソードはたぶんしばらく思い出しては勝手に笑うと思います)

全日本ではショートではコンボの回転不足、フリーでは3Aの転倒があったものの、全体的にスケートの柔らかさと体幹の強さは戻っていると確信しました。
今青木さんが同じMFアカデミーに所属していますが、青木さんと倫果ちゃんで体の動きの方法論がかなり似ていると感じました。大きく動かしても安定感があるところが良さですね。


🪐三原舞依選手
(SP4位:67.70、FS5位:131.86、総合5位:199.56)

今季は足首の怪我による調整の遅れがあり、11月末のNHK杯が初戦という本人にとって初めて体験するシーズンとなりました。そのNHK杯ではジャンプの高さが戻っておらず、着氷時に心配になることが多く、見ていて僕が怖い思いをする…というような内容でした。
どうか無理だけは本当にしないで…と思っていたのですが、全日本で見せた舞依ちゃんの演技に本当に驚かされました。

足の怪我についてはまだ治りきっていないと想像するのですが、その中でもスケートは常に滑り続けているところが印象的でした。漕いでいる動作が本当に少なく、伸び効率もとても良いスケートです。ジャンプの高さはまだ戻りきっている感じではないものの、ジャンプや1個1個のターンに余分な力をかけないような動きの効率の良さだったように見えます

まさに「8点台を出すならまずこれくらい脱力して滑るのよ」と言わんばかりのお手本のような滑りでした。
滑り込み不足も影響したからか、さすがに昨季ほどのスピードが出ているようには見えなかったものの、フリーで7本ジャンプを跳んだ後にこなすステップとコレオはまさに終盤でも流れの途切れない演技でした。

舞依ちゃんの良さを改めて実感した全日本となりました。(でもやはりお体を一番大切にね…)


👉上薗恋奈選手
(SP6位:66.22、FS4位:134.47、総合4位:200.69)

まだ13歳…本当なんですかね。何回確認しても未だに信じられません。

演技スタイルがあまりにも綺麗な身のこなしであり、ジャンプはデカデカと跳ぶし…キムヨナさんが憧れというお話も聞いたことありますが、そのキムヨナさんが13歳だったこともここまでではなかったのでは…と思ってしまいます。
しかも初めての全日本選手権なはずなのに、動きの硬さが全くと言っていいほど見られない、何ならこの全日本を楽しもうという気持ちすら見えるような余裕を感じました。

演技スタイル、メンタルともに見ていて不思議な気持ちになる選手です。今後どうなってしまわれるのだろう…


🚀島田麻央選手
(SP7位:65.23、FS3位:136.95、総合3位:202.18)

持っているスケーティング技術やエレメンツの難易度を考えると、客観的に見ても「ジュニアではもはやほぼ絶対に勝つだろう」というような思いが、ファンの間にもそして本人にもあると思っています。まだジュニア2年目であるにも関わらず敵は自分自身という境地になっています。そしてそれが原因かは分かりませんが、ここ最近の数試合では思わぬミスが続いてしまっています。
逆に言うと、まだ中学生ですし、気持ちのコントロールを自分だけでするのはとても難しいと思います。多少ミスが続いてしまっても、本来それが普通なのだと思った方がいいのかもしれません。

全日本でもショート、フリーともに少し緊張が見られ、振付が上手くこなせていないと感じる場面が少々ありました。その影響からか多回転ジャンプ以外のエレメンツもミスが出るなど、ポテンシャルを発揮し切れなかった大会となりました。それでも3位が取れたという結果がまた恐ろしいところなのです。

今季のフリーのベネディクトゥスは個人的にとても好きなプログラムで、目立って鳴る音以外の小さなリズムとしてなっている音も非常に細かく取っており、見た目に反してとても緻密な作りとなっております。今季は体が動ききっていない場面が多く、プログラム全体としての良さが出し切れていないと思っております。ユース五輪と世界ジュニアでそのあたりを踏まえて期待しております。


🌊千葉百音選手
(SP3位:68.02、FS2位:141.25、総合2位:209.27)

今大会見ていて最も震えたのが千葉百音さんのフリーです。
近畿ブロックやグランプリシリーズでは体の不調も影響し、さらに緊張した面持ちがかなり伝わってきて、持っているポテンシャルを考えると信じられないような演技内容が続いてしまっていました。
これらの試合を見ていて全日本大丈夫かな…と心配していたのですが、フランス大会から全日本まで1か月半以上期間が空いていたのはこの流れの中では結果的に良い方向に働いたように見えました。

全日本ではこれまで高さが出ていなかったジャンプが面白いように決まり、それによりスピードを出すのに余分な力を使わずに深いカーブのままスピードを保った持ち味の柔らかい演技に磨きがかかっておりました
最後の3Lzが決まった時の会場全体のどよめきは本当に印象的な空間でした。

スピードが保たれた演技が実施されたことにより、昨季小さいと感じたリンクカバーが今回の全日本では非常に大きくなっており、美しさにスケールの大きさが加わった感じになっておりました

結果的に四大陸、世界選手権の2試合の代表になりました。この2試合でも全日本の時のような演技が出来れば表彰台も夢ではないと思っております。


👑坂本花織選手
(SP1位:78.78、FS1位:154.34、総合1位:233.12)

これまで何回も「どのスケーティングも、どの技も、どのターンも、どの振付のこなしも、どの体の動きも上手くて大きい」という演技を見てきましたが、今回の全日本でもまさにそのような演技になりました。
人はこれを「全部門優勝演技」と呼びます。(呼んでいるのは私だけではないはず!!)

世界選手権連覇という実績を持っていますし、結果的に全日本も3連覇。この間大きな体の怪我もなく、またシーズン全体を通じてプレッシャーに押し潰されている様子も少ないです。まさに心身ともに充実したスケーターであると言えますし、だからこそのこれまでの実績なのだと思います。

今季のフリーのニーナシモンメドレーは全体的に体の重心を低くしているという風に見受けられ、だからこそのカッコよさが生み出されているのかなと思いました。


やはりこうして並べて記載して、改めて力が拮抗していると感じました。これが来年の全日本同じような順位になるともまた限りません。
接戦から抜け出すスケーターが誰なのかを今後も注視したいところです。

僕から見た感じだと、やはり勝負どころは「エレメンツ以外の詰め具合」かなと思っております。プログラム全体として形を作るなら、エレメンツ以外も含めて確認することが大事になってきそうだなと思いました。

これは全日本だけでなく国際大会を見ても思うのですが、プログラムのエレメンツ以外の部分の作り込みそのものはシニアの女子の大会の方が密度としては濃いと感じています。
ただ、それを上手く実施しているなぁと感じるスケーターは正直今少ないと思います。プログラムの内容の割りにエレメンツに集中しすぎていませんか…?というちょっとちぐはぐした感覚です。

そのあたりも踏まえてシーズン後半の試合を見ていこうかなと思います。