こんにちは。

2023年の締めの記事(N本立て)でございます。

つい先日昨季3月のさいたま世界選手権の記事を取りまとめたばかりだというのに、もうその次の世界選手権の代表が決まってしまいました。

今年は3年ぶりの長野での開催、私は2日目から4日目を観戦しに行きました。

お蕎麦や善光寺観光なども楽しみつつ、後半3日間を堪能したことになります。

前置きを長くすると本当に読んでもらえないくらい長くなるので、早速行きます!!
今回は男子から!!本当に長いです。

〜男子〜

もう皆様も同じことを感じておられると思いますが、圧巻でしたね…

まさに最初から最後まで良い試合。
SPでは62点近く出さないとFSに進出できず、
FSでは全員が120点以上を出す、上位16人が130点以上、上位8人が160点以上、上位6人が180点以上、上位3人が190点以上という前代未聞の試合になりました。

選手のベースラインが全体として底上げされているのはもちろんですが、ミスが本当に少ない。「アイツがノーミスで演じたから次は俺も!!」みたいな気迫を感じました。

3月にさいたまで世界選手権の男子を観た時の満足感も高く「こんな試合もうしばらく見られない」と思っていたのですが、まさかその9ヶ月後にそれ以上の満足感が得られる試合を見られるとは…(笑)

1人1人の感想を下記に記載していきますが、今大会は私が現地で拝見したのはFSのみということで、上位23名の選手のみの記載とします。予めご了承ください。

また、周藤集選手が骨折との情報もありました。お辛いでしょうがとにかく早い回復を祈っております。

🌸木科雄登選手
(SP22位:64.52、FS21位:123.60、総合23位:188.21)

もう大学4年生というのが信じられません。ついこの前JGPできな結ちゃんから「おれかっけぇ」バナーが掲げられたばかりだと思っておりました。

これまでの木科くんの演技のスタイルといえば「おれかっけぇ」のスタイルそのままに、力強くスケートの伸びも「ぐいぐい系」という感じだと思っておりました。

フリーのプリマヴェーラは体の使い方が曲線的で滑らかという、これまでの木科くんのイメージを大きく覆すものであり、そしてそれがとても似合うものとなっておりました。「たおやかな木科くん」を見るとちょっとドキッとした切なさを感じたというファンの方も多かったのではないでしょうか。

そんな面が見られるならもう少し違う形でも見てみたいと思っていたところに、現役続行のお知らせが来ました!ありがとうございます!!


🤩大島光翔選手
(SP20位:66.89、FS23位:122.49、総合22位:189.36)

まず、この記事を作成するにあたって彼がこの順位だということに驚きました。ご本人のSNSに「戦いの土俵にすら上がれなかった」と書かれていたので、そんなことないよと思っていたのですが、この結果を受けて悔しい思いをご本人がされたことを受けての発信だったと推察します。改めて厳しい世界だ…

SPのマリオの衣装の細工、FSであえて漫才の番組でも使われているムーランルージュの曲を入れ込んできたり、常に見ている人に何かしらの笑いを与えてくれます。もちろん悔しい思いをしているとは思いますが、それでも楽しい姿を見せる姿は本当にスター性を感じます。

本人の演技終了後に関係者席から「遠吠え」あるいは「ほら貝」のような応援を各選手にかけている姿もまた面白かったです。もはや名物になりつつあります。


🗻田内誠悟選手
(SP23位:63.89、FS20位:126.12、総合21位:190.01)

端正なお顔立ちから繰り出される長い手足を大きく美しく動かす演技スタイルが、既に中学生のうちに確立されています。恐ろしい子…

その良さはもちろんなのですが、個人的に良いなぁと感じたのは、スケーティングもまた一歩がよく伸びるようになったなぁということです。漕ぐ動きが少なくなったことによって、上記のポジションの美しさを堪能する時間が4分間の中でさらに長くなり、良さが際立ったと思いました。


🤗高橋星名選手🤗
(SP19位:68.28、FS22位:123.49、総合20位:191.77)

まだ13歳ということで、スケートのパワーはこれからつくという選手であると認識しておりますが、なんといってもアピールがとても上手です。腕の使い方が多彩かつリズミカルで、自分がやりたい表現と演技が楽しいんだなというのがそのまま伝わってきます。

演技終了後では絶対に観客に対して両手で笑顔で手を振るという挨拶をしてくれますが、全日本では4方向にわざわざ壁の方に近づいてやってくれました。楽しいんだね。うんうん。


💎蛯原大弥選手
(SP24位:61.85、FS15位:131.72、総合19位:192.96)

力強いスケートと安定したジャンプを武器に昨季ジュニアデビューしましたが、全日本ジュニアではまさかのSP落ちでした。そこから1年で一気にJGP2大会連続表彰台と大きく力を示し、全日本ではSP24位でギリギリFS進出を果たしました。

FSでは1番滑走でありながら、冒頭にいきなり3Aを決め、その後も少し疲れを見せながらもほぼミスなく決めました。ジュニア2年目でありながら平均的に高い技術を持っているなぁという印象を持つ選手です。このものすごい大会の切っ掛けを作ってくれた選手であると思います。来季はSPの指定がフリップジャンプですので、そのあたりの修正をしてくるものと思っております。


🎤垣内珀琉選手
(SP21位:64.58、FS14位:131.72、総合18位:196.30)

三浦佳生選手、中村俊介選手とともに2017年全日本ノービスで表彰台に乗った選手です。ジュニアに上がってからジャン

ジャンプの回転に苦しんだシーズンも多かったですが、昨シーズンから回転が安定し始め、一気に演技の安定感、最後までスピードをある程度保つ演技が繰り返されるようになりました。やはりある程度のスケートのパワーとジャンプの回転は大事であり、体の成長に合わせた戦略というのが大事というのが垣内くんを見ていても思います。

FSではテンポの良いWake me upで毎回盛り上げてくれます。本人も楽しそうに歌って踊ってということでとても気に入って演技しているように見受けられます。
点を取るという観点でいうとその踊りがスピードに乗る、体を上半身全体で動かすというところがどうしても足らなく見えてしまうというのがどうにももどかしく感じてしまうところもあります。
そのあたりも踏まえながら、世界ジュニアでどのような演技を見せてくれるか楽しみにしております。


✊中田璃士選手
(SP16位:71.45、FS17位:128.82、総合17位:200.27)

全日本の大きな会場で見てもスケートの伸びの効率や氷を押す動作の上手さに目を引かれます。伸び効率はゆまち(鍵山優真)さん、押す動作は仙人(宇野昌磨)さんの良いところを彷彿させるものがあります。

このようなスケートの特徴を持っていたら将来大物になる期待が大きいですが、実はまだ中学生というのがまた恐ろしいところです。綺麗な4Tを決めるとガッツポーズをしてしまうところに微笑ましさを感じますが、冷静に考えて中学生が決める4Tの質とは思えません。

全日本選手権では演技前にコーチに送り出される際にガッツポーズを2回(中庭先生に1回、お父様に1回)やっているところが見えました。そこでガッツポーズを使い果たしてしまったかもと思ってしまいます(?)

上記のようなスケーティングを持っている中で決める振り付けも安定しており、かっこいいと思える場面も多いです。スピンで少し回転速度が落ちてしまうのが気になってしまうのが惜しいですが、世界ジュニアの期待が大きいです。
 

👩‍🦱杉山匠海タクーシャ選手
(SP15位:71.68、FS16位:130.96、総合16位:202.64)

全日本選手権の時期に恐らく最も忙しい選手です。
自分の演技をこなしては全露選手権も見なければならないスケジュールを毎年見事にこなしておられます。それで全日本選手権で毎回インパクトを残してくれるところがまた凄いです。

曲を選ぶ時に冗談半分でメカニズムを提案したら採用されたみたいです。プログラムの前半に違う曲を使い、後半にメカニズムを使用するという手法もまた恐らく昨季の全露選手権を参考にしていると思われます。スケートファンがやっているオタ活を実際に自分の演技に落とし込み、それを成功させるところがもはや羨ましい。

前半のG線上のアリアでは従来持っているタクーシャくんの良さが前面に押し出され、後半のメカニズムでは曲のテンポによく合わせたジャンプやStSqが見られました。振り付けの1つ1つがとても綺麗なので、何がしたいのかがよく伝わってきます。

このオタ活スタイルは本当に唯一無二なので、これからもどんどんやって欲しいです。


🍑櫛田一樹選手
(SP12位:75.54、FS18位:128.73、総合15位:204.27)

今季が最後のシーズンと決めて挑んだシーズンです。サマーカップ、西日本、そしてこの全日本と演技を現地で拝見しましたが、今季は特に演技が充実しているように見えます。

櫛田くん自身が恐らく艶っぽく見せたいというような意図を演技に対して持っていると思いますが、それを腕や体を滑らかに曲線的に動かしているところから表していることが分かります。やりたいことを自分が思っている通りに出せるところにベテランならではのスケートを感じます。

全日本では冒頭に素晴らしい4Tを決めてくれました、その後は悔しさも残る内容になったと推察しますが、櫛田くんの良さをダイレクトに受け取ったファンは現地にもテレビの前にも受け取ったファンはとても多いと思います。
 

💃中村俊介選手
(SP9位:80.16、FS19位:127.54、総合14位:207.70)

ノービスからジュニアにかけてファンの間で「しゅんしゅん」と多く呼ばれていた時代がもはや懐かしく感じます。(スケーター間では呼ばれているかもしれませんが)

今季は大阪のジュニアグランプリの試合でまさかの演技となってしまい、ここで火が付いたのかこの後の試合での「決めるぞ」という気合いを例年以上に感じます。それもあるのか、大きく崩れるという演技が少なくなりました。

しゅんしゅん(と呼ばせて!!)の動きはノービス時代から曲に対して忠実で力強さが見られとてもこだわりを感じます。全日本の時点でもまだスピンや体力に課題を感じる内容ではありましたが、体の成長に合わせてじっくりと上手くなり、少しずつ最後まで流れが途切れない演技というのが増えているように感じます。このまま焦らず機が熟すのを待ちます。骨格がしっかりして体力が最後までもつ演技が安定したら一気に飛躍するように思っております。
 

📕佐々木晴也選手
(SP17位:70.88、FS13位:137.99、総合13位:208.87)

京大経済学部2回生が全日本選手権に!!

昨季受験による休養から復帰してから、スケートの伸びがこれまでに比べて格段に伸びたと感じます。講義や単位を取るのに2回生まではそこそこ忙しいはずなのですが、いつどうやって練習してここまで伸びるようになったのか不思議なレベルです。

大会前にインフルエンザに罹ったとのことで、少しジャンプをこらえる場面も多かったですが、関係者席からの怒号…ではなく猛烈な応援を背に、ロミジュリの切ない演技を実施いたしました。顔の表情を見ていると、しっかりと遠くまで目線を送っているのが3階席からも伝わります。(関係者席にはどういうテンションで送っていたのだろう…?)
 

🌹片伊勢武アミン選手
(SP18位:70.41、FS11位:141.85、総合12位:212.26)

話し方もフワフワなのですが、それ以上にスケーティングが本当にフワッフワでございます。FSのツリーオブライフは鈴木明子さんによる柔らかさとその中でのテンポ感を確実に捉える演技を毎回披露してくれます。演技後半になると少しジャンプの出来が惜しい場面もありましたが、手先の動きまで美しく流れるような演技で、会場全体が浄化されたような感じになりました。


🍊島田高志郎選手
(SP11位:76.57、FS12位:139.40、総合11位:215.97)

ランビエールさんにも「難しいプログラム作ってごめんね」と言われたほどとお聞きしましたが、今季の死の舞踏は本当に難しいと思います。
ピアノ音源で音にピッタリ合わせることが必須で求められる動きが多く取り入れられ、さらにスピードの変化も多く、そのうえで高志郎くんらしいカクカクした動きも入れなければならない。プログラムをエレメンツなしで実施する時点で骨が折れそうな内容詰め詰めなプログラムであるように見えました。
(個人的にはちょっとあまりにも詰め込み過ぎでプログラムのコスパが悪そうにも見えます、難しすぎる)

高志郎くん自身が今季足首に不調があり、全日本でもあまり調子が良くなさそうな感じに見えました。その中で実施したフリーは、最初にサルコウで危ない抜け方をして動揺があったのか、難易度が高すぎるプログラムで疲労があったのか、足の調子の影響からか、クリーンに決まったエレメンツが少なくとても悔しそうな出来になってしまいました。

とにかくまずは来季に向けて足の状態が万全になることを願っております。


🎸本田ルーカス剛史選手
(SP14位:73.58、FS12位:144.04、総合10位:217.62)

今季はジュニアペアと両立、そして来季からペアに専念という決断をしました。すなわち、今季がシングル選手として最後のシーズンです。西日本選手権ではいろいろあった中で何とか全日本選手権に出られることが出来ました。

フリーのエクソジェネシスはまさに感動の演技でした。
従来から持っていた柔らかい動きやターンが存分に活きただけでなく、久々に3Aと4Tを両方組み込んで、4Tは成功とはならなかったものの転倒せず、常に流れの途切れない演技でした。上半身の柔らかい動きとは対照的に、足元のスケーティングには力強さが加わり、ターンでのカーブがさらに深くなったことにより、演技全体の柔らかさがさらに増したような感じがしました。

シングルとしては最後で名残惜しさも見えつつ、この演技全体の安定感は間違いなく2人で滑るペアで培ったものは大きいように思います。まさに今だからこそ出来た最高のパフォーマンスだったのではないでしょうか。
ペアでの世界ジュニア、そこからシニアでのペアの参戦を楽しみにしております。


🚙三宅星南選手
(SP10位:77.16、FS9位:148.96、総合9位:226.12)

フリーのA Question of honourを見て一番に思ったのは、ジュニア時代に体力に課題があった星南くんが、まったく疲れた様子を見せていない…!!ということでした。
スケートが非常に柔らかく、上半身の動きから角が取れて上手く脱力して、結果的に情感を上手く伝えた演技になったと思って見ていました。4Sの着氷こそ失敗したものの、終わった後にガッツポーズが出るのもうなずけるくらいの演技の充実っぷりでした。


🦾吉岡希選手
(SP8位:85.27、FS8位:164.11、総合8位:249.38)

今季カーブの深さが最も出てきたのはこの希くんだと思います。それを裏付けるようにStSqではショート、フリーともにレベル4を獲得していました。
カーブが深くなると演技そのものが大きく見えやすくなるという大きなメリットがあると思っておりますが、まさに希くんはそのような上手さを今季身に付けたと感じました。ジャンプの回転はひと目見て「絶対大丈夫」と思えるほどに余裕な回転です。流れが途切れない要因はそこにもあると思います。

また、ショートでは鍵山優真選手、宇野昌磨選手の後に最終滑走として登場しました。絶対に緊張感のある滑走純なのにも関わらず「宇野昌磨選手の後に滑るの楽しみ」という途轍もないことを話しておられ、実際に良さを出し切る演技を披露していました。

希くんが演技した後に「鍵山名人→宇野仙人→吉岡鉄人」というファンの呟きが話題になっていましたが、こういう鋼のメンタルを持っているところも踏まえて、まさに「吉岡鉄人」であるといえると思います。


🏰壷井達也選手
(SP7位:85.85、FS7位:166.49、総合7位:252.34)

どうやって力を入れてスピードを出しているのか分からない部門第1位がこの壷井くんだと思っております。
壷井くんのスケートを見ていると氷を押しているのかすら分からないスピードの出し方です。まさにつるつると滑るスタイルです。
一方で、その分エレメンツや体の動きのメリハリという点で弱点が見えやすいという特徴を持っている選手でもあると思います。その弱点を補うために作られたと思われるTorn Reduxは壷井くんにとってかなり難しいプロだとみておりました。

このプロを2シーズン見て思ったのは、くっきり音にハメてメリハリをつけるという演じ方が当初に比べて分かりやすくなったということと、それでもなおもう少しメリハリや体の動かし方の種類が少ないのが少し見えてしまうかな…ということでした。今回の全日本ではエレメンツのミスは少なく、本人もかなり満足そうな素晴らしい出来となりましたが、シーズンを通してPCSのPRの項目が他に比べて低めという評価となっておりました。この点については今後も向き合っていくことになるのかなと思って見ております。


💐友野一希選手
(SP6位:86.88、FS5位:184.64、総合6位:271.52)

これまでララランドやこうもりなど、最後に絶対に盛り上がって見ている観客を楽しませてくれるスケーターが、今季はそれをほぼ見せない敢えて静かな曲に挑戦してきました。
特にフリーはほぼピアノだけで構成される静かな曲で、よほどのスケーティングスキルや上半身の動きがないとずっと単調なままの実施となるリスクを抱えたプログラムです。

友野くんの良さと言えばターンがとても正確で綺麗なことと、動きの輪郭がはっきりしている所でしたが、静かな曲でも見事なまでにマッチしていました。
バッククロスでも正確にピアノの音を捉えたり、静かな曲でもコレオシークエンスのスピードはたくさん出してそのスピードが悪目立ちしないように上半身のポジションを上手く保った感じになりました。

ジャンプでわずかなミスがあったものの過失がなく流れを途切れさせない演技を披露して、伝説の最終グループのトップバッターを華々しく飾りました。

一点だけ気になったことがあるとすると、StSqでの移動距離が最終グループの他のスケーターに比べると小さめに見えてしまったことです。この点についてはさいたまの世界選手権のFSのこうもりでも静かなパートで実施したStSqで気になった点であり、この曲だからこそ見えた弱点なのかなとも思いました。
StSq自体の点数はかなり加点を得ていて、ターンの上手さや上半身の動きの制御では評価されていると感じますが、一方でPCSのSKの項目で上位6人の中で少し低く評価されてしまったところに現れているのかなと感じました。
昨季のSPのHappy Jazzではむしろ細かいターンをかなり制御してかつ上半身もリズムに乗って踊ったからこそ上手い!!と思ったので、この辺りについてはプログラムとの相性もあるのかなと思っております。五輪の中間シーズンだからこそこの点が見えて良かったとも言えると思います。


卍佐藤駿選手
(SP5位:89.80、FS6位:183.24、総合5位:273.04)

今季スケートの伸びが一気に伸びて話題になった選手であると思います。昨季のFSでミスが少ない中でもスケールの小ささが気になる…と感じていたものが、今季の全日本では全くなくなっていました。ここに一番の驚きを覚えました。リンクの使い方も大きくなって、滑りながらでの技も多くなり、今季の飛躍につながったと思います。ギョームシゼロンさん、いったいどんな方法でスケーティングを駿くんに叩き込んだのだろう。
駿くんの演技で気になった点としては、上半身の動きの大きさや制御についてはまだ少し明確さが見えにくいかなというところと感じました。
具体的に言うと、終盤のStSqでは7拍子になりますが、どの拍が頭拍かというのが少し見えづらく、私には少し単調に見え勿体なさを覚えました。PRの項目が上位6人に比べると少し低い評価になったところに現れているように思います。駿くんについてはまださらに変わる余地をより大きく残していると感じました。


卍三浦佳生選手
(SP4位:93.91、:FS4位:186.17、総合4位:280.08)

ファイナルから全日本の期間にかけて体調がなかなか安定せずに心配だったファンも多いと思います。
その心配を一掃するようなフリーの実施となりました。佳生くんが凄いのはどういう状況であっても何といっても常に全力以上を出そうとするところです。演技をしている時に一切の躊躇がありません。とにかくイケイケドンドンなところを毎回強く印象を残してくれます。

スピードを出すところにもそのような躊躇が見えず、そこから繰り出されるジャンプは本当に爆弾みたいに爆発力のあるものを見せ、特にフリー後半の4T-3Tは圧巻の出来でした。この出来のジャンプは佳生くんにしか出来ませんなぁ。

さらに凄いと感じるのは、このぶん回しスタイルな演技を、毎回ある程度のエレメンツの実施で揃えてくるところです。
見るからに体の動きが安定しなさそうなスケーティングなのに、エレメンツの大きな過失が毎回最小限で収まる点が強みだと思います。
(全日本選手権で上位6選手が素晴らしい演技を見せた中で、世界選手権の代表に選ばれたのはこの点が強みに働いたかなと解釈しております)

そして、だからこそ気になった点としては、そのスピード感の演技だからこそ、演技中に意図した方向とは違う場面に力が掛かってしまうような場面が散見されるところです。今回の全日本で言えば前半の4Sのステップアウトや、滑っている中で出ている動きが少しバランスを崩しかけるように見える場面があるところです。
だからと言って、佳生くんの猛スピードな演技スタイルを崩して欲しいわけでもないし、ファンの人もその点についてはある程度分かって見ていると考えるので、僕としてはこのまま突き進んで欲しいという気持ちがあります。
ただ、今回の全日本で表彰台を分けたポイントにはなってしまうとも思いました。


🍀山本草太選手
(SP2位:94.58、FS3位:192.42、総合3位:287.00)

全日本選手権に長年出場してついに初の表彰台となりました。フリーの競技中に関係者席に座っていた男子選手たちがジャンプを決める度に大きく沸いていたのですが、草太くんの時にはひときわ大きく沸いていたような感じでした。最後の3Lzが決まった時とかほぼ雄叫びに近かったのでは。

草太くんと言えば、2016年に大きな怪我をしてしまい、2017年の中部ブロックでは1回転ジャンプから復帰して、そこから少しずつ積み上げていき昨季GPF銀メダル、世界選手権初出場という経歴で、その苦労は多くのファンの人が知っているものと思います。

一方で、どうしてもジャンプ前に空白が出来てしまい、上位選手に比べるとプログラムの複雑さが削がれてしまうという特徴を持った選手でもあります。
(これは今回の全日本でもPCSのCOの項目が上位6選手の中では低く評価されていることに現れていると思います)
かと言ってその空白を埋めようと技を多くすると足に対する負担も大きくなると思いますし、簡単に「もう少しプログラムを複雑にして欲しい」というのも憚られるところもあります。その点では僕にとっては見ていて非常にもどかしい思いをするところでもあります。

今回の全日本で表彰台に乗ったポイントとしては、最初の4本のジャンプ(4S~4T-3T~4T~3A-1Eu-3S)で、エクソジェネシスの3拍子のテンポから少しもずらすことなく決めたことが決定的なポイントであると思います。
逆に言うと「曲のテンポからずらすことなく足元を動かしたからこそ、曲のテンポと自分のタイミングが合い、ジャンプを綺麗に決めることが出来た」という方がむしろ正しいと思っております。
その後の演技も3拍子と自分のタイミングがピッタリ合い、まさに曲と技が上手く調和した演技が見られました。
繋ぎに入れる技が少ない中で、その少ない技を最大限の質で実施したところが、今回の完璧な演技に繋がったと思います。本当におめでとうございます。


卍ゆまち!!(鍵山優真選手)
(SP3位:93.94、FS1位:198.16、総合2位:292.10)

昨季は全日本のみの出場で、今季は2シーズン分くらい進むスケーティングを披露しているように見えます。ゆまちさんのスケーティングは一歩の伸び効率があまりにも良いのはもはや周知の事実と思って良いと思っております。さらに上半身の動きについても従来から大きく動かすことについては定評がありました。それらの良さに今季磨きが掛かり、「鍵山名人」と呼ばれるくらいにさらに進化したように見えます。

フリーのStSqは一番楽しみにしていた要素ですが、常に深いカーブでありながら、常に激しく動き回る実施です。「目まぐるしく動く」と呼ぶのに相応しいです。

上位6選手の中で4回転ジャンプはフリーでは2本で最も少ないのにも関わらず、フリーは1位となりました。スケートの伸び効率が全てに通じていると思います。


☁宇野昌磨選手

元々達観していた考え方に今季さらに磨きが掛かったように見えます。もはや「悟りを開いた」と思うレベル。
昌磨君は「ジャンプも表現の一部にしたい」とかねがね発言していました。スケーティングそのものが良く、だからこそたくさん4回転ジャンプを跳ぶことも出来、なおかつエレメンツの間の動きにももともとこだわるような選手であった認識です。
僕からしてみたらもう十分すぎるくらいに演技の内容が充実していたように見ていたのですが、昨季までの演技でジャンプに意識が行き過ぎてしまってたことに不満を感じるレベルだったそうです。その意識レベルの高さに驚きを感じました。

その言葉通り、今季の昌磨くんの演技中の動きは、その一つ一つ大きなこだわりが見え、ポジションが動く繋ぎの動きもとても柔らかくなったように見えました。

一方でジャンプという点では今季回転について情報が付くことが多くなり、昌磨くんの意識はエレメンツにとってはリスクにもなり得るのだと感じました。
全日本で現地で見た限りでは、ジャンプを見ると確かにこれまでより僅かにジャンプに高さがなくなったのかなとも思いました。今回大きな過失が無い中でq判定となった後半の4Tについては、3階席から見ると確かに着氷した時にまだ回転の力が残っているように見えました。そしてそこでは僅かに流れが途切れかけ、スピードを出すのに少し動作が見えたことも確かでした。
このあたりは今季の昌磨くんの演技に対する意識と関係する部分もあるのかなと考えています。

とは言え、このハイレベルな戦いの中でも全くマイペースを崩さずに、自分のやるべきことをやり続ける演技は「王者の風格」と呼ぶに相応しかったです。


今回の全日本男子はまさに神大会。
ゆまちさんが「悔しいけど嬉しい、嬉しいけど悔しい」という趣旨の発言をしていましたが、今大会を象徴した言葉ではないかと思います。
これだけノーミスの戦いになると、勝負を分けているのはジャンプ以外のところがやはり大きくなってきます。これだけ難易度が高い構成でも細かい所が大事なのだということにも改めて気付かされた大会でもありました。

見ている側としては、これだけ出し切った演技が続くと、終わった後の疲れがほとんど残らないというのもまた面白い発見でした。


ここまで読んだあなたは本当に根気があります!!
まだ3カテゴリー残っているんだぜ!!!