あの病室がどこだったかなんて判らない。催情丹見上げる病棟の窓はみな同じ顔で並び、いったいどこからどの方向へ殴り飛ばされたのか、見当がつかない。
(どこ。どこなの?)
駐車場から見上げるだけでは、病室の様子など判るはずもない。太陽の光を受けて輝く病棟の窓が、怨めしくさえある。
(焦っちゃダメ、まずは、落ち着かなきゃ)
焦る気持ちをなだめ、はるかは先程感じた呼ばれる感覚を探る。
けれど、どこにもない。どれだけ意識を研ぎ澄ませても、なにも感じられない。
意識が引っ張られるにまかせて、壁や床などすり抜けてあの病室にまっすぐに向かったのが裏目に出た。ちゃんと病棟と階数とを確認さえしていれば、見当くらいはついただろうに。
(いま戻っても……)
波立つ気持ちに、黒いモノがぽつんと生まれる。
いま戻っても、あの暴力的なヴァルドウがいるかもしれない。また、殴られるかもしれない。
どうする? と、身勝手な感情が心を揺らす。
(どうする?)
それに、彼女の病室にすぐに戻れたとしても、間に合うとは思えない。自分のあの経験からすると、ヴァルドウは大鎌で相手の胸を切り裂けばいいだけだ。もう、それだけの時間は過ぎてしまっている。病室を探す時間なんてない。いまこの瞬間に戻らなければ、絶対に間に合わない。
間に合わなくても戻るべきだろうか。それとも、ここは病院だ。ヴァルドウに狙われている他の患者を探すべきか。
(どうする……?)
再度自分自身に問うたとき、ずきんとした衝撃が胸に生まれた。
死に瀕した娘をひたすらに見守る両親の姿に、暮れなずむはるかの部屋で肩を落とす母親の姿が重なったのだ。
悩んだのは数瞬。
左腕をさすり、頭を振る。催情丹
(どこ。どこなの?)
駐車場から見上げるだけでは、病室の様子など判るはずもない。太陽の光を受けて輝く病棟の窓が、怨めしくさえある。
(焦っちゃダメ、まずは、落ち着かなきゃ)
焦る気持ちをなだめ、はるかは先程感じた呼ばれる感覚を探る。
けれど、どこにもない。どれだけ意識を研ぎ澄ませても、なにも感じられない。
意識が引っ張られるにまかせて、壁や床などすり抜けてあの病室にまっすぐに向かったのが裏目に出た。ちゃんと病棟と階数とを確認さえしていれば、見当くらいはついただろうに。
(いま戻っても……)
波立つ気持ちに、黒いモノがぽつんと生まれる。
いま戻っても、あの暴力的なヴァルドウがいるかもしれない。また、殴られるかもしれない。
どうする? と、身勝手な感情が心を揺らす。
(どうする?)
それに、彼女の病室にすぐに戻れたとしても、間に合うとは思えない。自分のあの経験からすると、ヴァルドウは大鎌で相手の胸を切り裂けばいいだけだ。もう、それだけの時間は過ぎてしまっている。病室を探す時間なんてない。いまこの瞬間に戻らなければ、絶対に間に合わない。
間に合わなくても戻るべきだろうか。それとも、ここは病院だ。ヴァルドウに狙われている他の患者を探すべきか。
(どうする……?)
再度自分自身に問うたとき、ずきんとした衝撃が胸に生まれた。
死に瀕した娘をひたすらに見守る両親の姿に、暮れなずむはるかの部屋で肩を落とす母親の姿が重なったのだ。
悩んだのは数瞬。
左腕をさすり、頭を振る。催情丹