刃離裂という刀がある。人を斬れぬ刀であるが、代わりに数多の武器を斬り捨ててきた。その刀は今、一人の少女に継がれている。力多精

 赤白緑と色とりどりに連なり、日差しにかざせば宝石のようにつややかに光る。それでいて触れてみれば繊細かつ滑らかな弾力が快い。少女はその美しさにしばし見惚れていたが、やがて意を決してそのうちの一つを頬張った。
団子屋だ。
特に行く宛てない少女は兎角腹ごしらえと、道中まみえた団子屋にて二串分の団子を頼んだ。軒先に座る彼女の傍らには期待と相違ないものが運ばれ、小さく湯気立つ湯呑みと共に光放っていた。
 団子を頬張る少女とは別に、その団子屋には三人ほどの姿がある。
「相変わらず妙ちゃんの団子は美味いねぇ」
一人は無精髭とボサボサ髪が目につく男。刀を携えているところを見ると侍の類か。
「褒めても何も出しませんし、そもそも団子は私が作ったわけじゃありませんし、何より今日はお代を頂けるんでしょうね」力多精
ぶっきらぼうに腕組みして男に冷ややかな視線を向けるのは団子屋の看板娘、妙
たえ
。先刻団子を頼んだ際はにこやかで可愛らしい娘であったが、男と話している様は別人である。
彼女に言われて男はばつが悪そうに口をつぐみ頭を掻く。その様子から察した妙は大きくため息をつき、奥にいる別の男に告げた。
「今日も文無しみたいだけど、いい加減にどうなのよ」
「その人が持ってねぇというなら貰わねぇ。俺がそう言ってんだからつべこべ言うな」
低い声で確固たる意志をあらわにしながら、黙々と生地をこねる男。団子屋のご主人だ。娘の妙に顔を向けることもせず淡々と仕事に打ち込んでいる。
誰も彼もこの調子では話にならないと妙は再びため息をついた。藏秘男宝