にのちゃんとの妄想小説です。BLではありません。女性との絡みがあります。苦手な方はご遠慮ください。
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「ちょっと、お腹を触ってもいいかな?」
促され直生は診察台に横になった。看護師がさっとバスタオルをお腹にかける。
「今からね、お腹の下の方をちょっと抑えるようにします。タオルの中で、履き物をずらせるかな?」
井ノ原先生は直生を怖がらせないようにしっかりと説明し、直生は怖がるそぶりもなくこくんと頷いた。
井ノ原先生はくるりと椅子を回転させて直生から視線をずらし、それを見届けて看護師が少しタオルを持ち上げる。
直生はタオルの下でごそごそとしている。
もうちょっとかな。そうそう。そんなふうに看護師が小さく声をかけて。その間、井ノ原先生はまったく直生の方を見なかった。
「先生、お願いします」
看護師がすっと離れながら声をかけると、井ノ原先生はまたくるりと椅子を回転させた。そして両手のひらを直生に見せる。
「ちょっと抑えるね。痛かったら言ってください」
タオルにそっと差し込まれた手が、直生の下腹部を抑えるたびに直生の体が少し揺れる。直生は軽く目を閉じ、落ち着いていた。
「うん。おしまい。いいよ」
直生が衣服を直す間、先生はこつこつと指先で机を軽く叩きながら何かを考えている。
直生が起き上がり椅子に戻った。
「月経痛がひどいのはいろんな原因があるんだけど、僕たちはまず、子宮内膜症と子宮筋腫を疑います。子宮筋腫も、大きいとお腹をさわってすぐわかるくらいまで育っちゃったりするんです。
ただ、本城さんのお腹を触診したけれど、そういう大きさのものはなかったんだよね。やっぱり、エコーができるといいなあ、って感じかな」
そこで井ノ原先生は俺を見た。
「で、やっぱりさっきのところに戻るんです。おふたりが今すぐにでもお子さんを望むなら、なんとかして診断したい。
子宮筋腫があってもそのまま妊娠継続できることも多いですが危険な場合もあるのでそこはしっかり診たいですし、
子宮内膜症の場合は、妊娠授乳で症状が止まるので、それはそれで診断をした上で妊娠に向かった方がいい」
「僕らは妊娠を望む前の段階だから、無理に診断をしなくても良い、対症療法でいくということですか」
「そう。勉強した?」
「ネットで少し」
「性交前の方もね、そうすることが大半です。まずは鎮痛剤。複数種類があるので、それら全部を試してみてそれでも駄目なら直腸からのエコーをすることもあります。
でもね、あれも検査前は大変だし、やっぱり恥ずかしいものです。僕は、若くして婦人科に来てくれることそのものを大事にしたいので。
一生一緒に過ごす自分の体をね、大事にしながら生きるってことは、検査・治療だけじゃないからね」
井ノ原先生の言葉はすんなりと胸に届いた。直生も、真剣な表情で聞いている。
「直生は、どう思う?」
直生がじっと俺を見た。その瞳には、なんとも言えない色が浮かぶ。そりゃあ、そうだろう…
「私は……やっぱり…怖いです。だから…先生のおっしゃるように、まずは鎮痛剤で様子を見てみたいです」
「わかった。じゃあ、そうしよう。何も焦ることはない。まずは、日常生活をいつもと同じように過ごせるようになることが優先、だな」
井ノ原先生はまたにっこりと笑った。
「頼もしいね、本城さん。こんな素敵な彼がいて」
直生はぽっと顔を赤らめる。その様子に、俺は少し安堵した。時期尚早だったかもしれない、直生の恐怖心を煽ったかもしれない、そう思っていないと言ったら嘘になる。
「よし、じゃあ、鎮痛剤をまず出すね」
薬の説明もしっかり受けて、俺たちは診察室を出た。