にのちゃんとの妄想小説です。BLではありません。女性との絡みがあります。苦手な方はご遠慮ください。
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直生の治療二日目。先生は朝の回診の時にこう宣言した。
「3日間、集中して取り組もう」
療法には段階的に進めていくやり方と、1日数時間にわたり集中的に行うやり方があるのだという。
通院患者の場合は前者が多く、入院患者は後者に耐えられる環境にあるためそっちが多いのだそうだ。
「うまくいけば4日後には退院だよ」
直生はそれを受け入れた。おそらくその中に、杉本との面会も含まれている。
俺もそんなに休んでばかりはいられず、後ろ髪を引かれながら出社するしかなく……
マッハで仕事をこなし、夕方の会議は欠席して急いで病院へ戻ると直生はぐったりと横になっていた。
「直生……大丈夫か…」
直生は俺の顔を見た途端に目に涙をいっぱいに溜めて。
「……辛いか」
直生は両手を顔に押し当て、黙って頷く。
食欲まで失われてしまったらしくベッドサイドにはほとんど手つかずのままの夕食のトレー。
「…そんなに急がなくてもいいんじゃないかって俺は思うんだけど」
それは朝の時点でも思っていたことだった。
なのに。直生は首を振る。
ぐいぐいと手で乱暴に涙を拭いて。そして、言った。
「早く会社に行きたいです……」
…まったく…どこまでも、直生は直生なんだ。
直生は泣き笑いの顔で。
「ごはん、食べます」
そう言って身体を起こした。
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22時。消灯の時間になった。昨夜は薬のおかげもあり吸い込まれるように眠りについた直生だったが、今日は薬を飲まないと言う。
また怖がるのではと心配ではあったが、その時飲ませればいい、と俺も一緒に横になる。
「おやすみ」
そっと額にキスを落とすと、直生がぎゅうっとしがみついてきた。
「直生……?」
胸元に感じる熱い呼吸。心配で、愛しくて。明日からのことを想い、さらさらの髪を撫でれば。
俺を見上げてくる直生。その瞳に吸い込まれそうになっていると、シャツをぐっと引き寄せられて。
乾いた唇が掠めるように俺の唇に触れひどく驚いた。俺が額や頬にするのすら、あの時以来、大丈夫かと心配しながらだったからだ。
未遂とはいえあれは性被害だ。たとえ俺が相手だとしても直生が恐怖を感じてもおかしくない。俺だってその気になれば力にものを言わせることができる、男だから……
それは覆すことの出来ないれっきとした真実だ。だからこそその真実が重くて。もう二度と直生を抱き、キスすら出来ないのかもしれないと。そこまで思った。
「……直生…?」
思わず探るように目を覗き込む。直生は目をそらさずに俺を見ている。
「だい…じょうぶなのか?」
情けなくもそう確かめれば。直生は返事の代わりにゆっくりと瞬いた。
「直生……」
滑らかな頬に手を添わせ、早鐘のように打つ心臓をなだめながらそっと唇を合わせる。
ただ触れ合うだけの唇。それは次第に、互いに押し付け合い、啄ばむような動きにかわって。
ふいに、直生が俺の頰を両手で挟みゆっくりと唇が離れた。
「直生……怖い…?」
直生は目尻に涙を溜めてゆっくりと首を振り、柔らかく微笑んだ。