にのちゃんとの妄想小説です。BLではありません。女性との絡みがあります。苦手な方はご遠慮ください。
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直生の記憶が戻った。
その日は、直生に会えなかった。
本人が会いたくないと言っている、と。
先生は静かに俺に告げた。
「直生ちゃんは全て覚えているよ。今回のきっかけとなったことも。ただ、ここに来てからのことの記憶は消えたようだ」
何故会えないのかと問うと、先生は申し訳なさそうに言った。
「直生ちゃんの中では、まだ暴行を受けた日の翌日なんだ。それと同時に、ここに来てからのことも説明してあるから彼女は今ひどく動揺し混乱している。きみと会うことはなんの問題もないと僕も思う。
ただ、本人が、気持ちの整理をしたいと。命の危険がなく反社会的なことでなければ、患者の希望を尊重することが第一なんだ。わかってほしい」
先生の言うことは至極まっとうで、俺はそれ以上は何も言えなかった。ただ。
肝心な時にいつも俺は直生を支えてやれない。
その思いだけが重く残った。
久しぶりに帰った自宅は着替えを何度も取りに来てくれた城島が整理してくれていた。
ダイニングテーブルには郵便物がきちんと角を揃えて置かれている。
ただ。寝室だけが。
城島が遠慮したのだろう。あの時のまま……シーツには皺が寄っている。近寄ると、枕カバーに小さな赤いシミが付いたままだった。
直生。
直生の空気がない室内で直生を呼ぶ。直生の心は、今…どこにある?
記憶の戻った今。お前を守ってやれなかった俺を、お前は責めているだろうか。
責めてくれたらいい。どんな罵詈雑言を浴びてもいい。直生。お前の中に俺はいるのか……?
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翌日は月曜日。会社に行く気になどまったくなれず、俺は朝から病院へ向かった。
ナースステーションに行くと担当の看護師が俺を見つけ寄って来る。
「二宮さん…まだ、会えるかは……」
「わかってます」
「……先生とお話されますか?」
「はい。でも、診療の空き時間でいいです。あの、直生にこれを渡してもらえませんか」
俺は紙袋を渡した。
「これ…いつも直生ちゃんが持ってた?」
「はい。……これ…俺の、インナーシャツなんですけど…いつも直生が、俺の匂いがするからって欲しがってて…だから……」
「…ごめんなさいね、二宮さん。今は直生ちゃんに渡せないの」