にのちゃんとの妄想小説です。BLではありません。女性との絡みがあります。苦手な方はご遠慮ください。
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直生はまだ少し打撲は痛みがあるもののすぐに自分で歩くことを許され、俺が仕事に行っている間はフロア内を散歩することも増えた。
病棟の中には図書室もあり、そこにある本を借りてきて病室に持って帰って来た時、それを見て俺は少し驚いた。
それは文庫本だったからだ。絵本はなかったのかと聞くと、「あるよ?」と逆に不思議そうに返される。
「それ…読めんのか?」
「うん」
何を言っているのか、といったふうに直生は俺を見る。
本当に不思議だ。知識や知性は今のままだということか?でも、ならば診察をひとりで受けなければならないことや、薬を飲めば怖い夢を見ずに眠れることなど簡単にわかりそうなものだ。
こちらから見るとそんな矛盾点をたくさん持ったまま、直生の顔と身体についたアザは薄くなり。打撲の痛みも癒えて。
俺が出社することにも、困らせるほど不機嫌にはならなくなった。ただし。インナーは毎日必要だったけど……
直生の元には代わる代わるだれかが来てくれて感謝しきりだった。城島のおばちゃん、水野、ハルちゃん、坂本さんも松本も来てくれた。
悠介にはあれからすぐに電話で話をした。しかし、悠介は見舞いに来れなかった。
それは、直生が拒んだからだ。
「あの子に心配かけたくない」
そう頑なに見舞いを拒んで。それを伝えると、悠介は寂しそうに言った。
「たまには心配かけていいんだけどな…」
直生の様子はこまめに悠介に伝えることを約束してひとつ相談をした。祖父母に伝えるかどうかだ。
「……おれは言わない方がいいと思う」
「でも、直生の肉親だろう」
「たぶん、おれに言ったのと同じ理由でねえちゃんが嫌がると思うし……見舞いに来ないでくれって伝えるのもじいちゃんたちにはショックだろうから」
「……わかった」
「その代わり、治ったらねえちゃんを連れてってやってくれる?二宮さん」
「どこなんだ?直生は電車に乗ってって言ってたけど」
「長野だよ。りんご農家なんだ。ほんと何回かしか行ったことないけど、ねえちゃんはじいちゃんちが大好きなんだよ」
「わかった。連れて行くよ」
直生をめぐるさまざまな思惑。その全ては、直生のことを心から心配してのこと。
直生。どこでも、どこまでも、どんな状況でも……お前は幸せを掴み取れるんだ。
だから……戻って来い……