にのちゃんとの妄想小説です。BLではありません。女性との絡みがあります。苦手な方はご遠慮ください。



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始業時間前に電話が鳴った。直生の番号だ。





「どうした?」




名乗りもせずにそう出る。





「本城です。今から会長のところに行ってきます」




じいちゃんのところに?





「なんかあった?」





「環境部の件で、ご相談したいことがありまして。照子さんも一緒です」





「了解。戻りは?」





「長くはならないと思います」





「わかった」





環境部の方は俺が口を挟む場所ではない。特に何も考えず俺は電話を切った。






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会議の合間。移動中の廊下で直生は話をし出した。




「環境部の活動に、社員が参加できるようにしたいんです」





近頃エントランスで作業することが増えて、社員に声をかけられることも増えたのだと言う。




労いの言葉の中に、土いじりが好きだと言う言葉が思いのほかたくさん聞けたと。





さらに、屋上庭園の存在を知る昔からの社員はそれを懐かしみ、知らない社員からは一度行ってみたいという希望があった。





「会長に、ふたつ提案してまいりました」





「ふたつ?」





「はい。ひとつは屋上庭園の再開放、もうひとつは、環境部への自由参加です」





「…で?会長はなんて?」





「再開放については、衛生の方から維持・警備業務を付けてもらうことを条件に朝8時から夕方17時までの開放の許可をいただきました。




環境部への自由参加については、そこの部分を離業とするかしないかで各部の判断があるから社内の許可が取れれば、と」





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会議の合間合間に直生の提案を聞き、経緯もわかった。




第三開発部時代の同僚が、環境部の活動に興味を持ったのがきっかけだったらしい。





設計開発に関わる部署ではどうしても女子社員が少なく、いたとしても直生のように事務仕事担当になるがその同僚は数少ない設計担当の女子だそうだ。




当時そこそこ仲良くしていたらしく、エントランスでの作業をしているところへ彼女がやってきて、自分もやりたいと言ったとのこと。




無給、つまりタイムカードを切る前にやるからと言うのを押しとどめ、今回の提案に繋がったということだ。





「第三開発部は忙しいわりには部の雰囲気は良い方だと思いますが、それでも、時折息抜きをしたくなると彼女は言っていました。




男性は煙草を吸いに行ったり、連れ立ってコーヒーを飲んだりしているようですが、どうしても女性が少なくて休憩を取りにくいそうで。




土いじりが好きなのもあって、1日のうちのどこか30分でもいいから、フロアを出て環境部の活動をしたいと言っていました」





じいちゃんは活動自体に社員が参加するのはとても嬉しいと言ったそうだ。





「ただ、それを就業時間内だとみなすか、離業つまり無給だとみなすかは、部署によって考え方が異なりそうだと……」





「お前は就業時間内だとみなされてるから、それを考慮に入れれば当然離業にはならない、ってのが普通の考え方だとはおもうけど……各部で忙しさは違うから、この時期に環境部のことやってる場合じゃないっていう時はそれぞれにあるだろうな」





「環境部の活動に時間を割いた分、それが本来業務を圧迫して残業が増えるのも会長は懸念されていました」





国の方針もあり、働き方改革を取り入れいわゆるホワイト企業への道を模索しているのは大宮工業だけではない。




大宮工業はもともと福利厚生は充実しているし、労働組合も大きく、有休は年間で消化する日数を定めているし、残業についても年間の総時間の上限も定めてかなり厳しく管理している。




問題なのは、仕事は減らないのに有休日数が決まり残業時間が決まることで日々の業務に忙殺されがちなことだ。





「残業時間は…去年より上限が引き下げられたからどこの部署も汲々してるよなあ…」





「二宮さん」





急に直生が改まって俺を呼んだ。





「昨日のお話と合わせて考えると、うまくいきそうではありませんか?」





直生の瞳がキラキラ輝いていた。