にのちゃんとの妄想小説です。BLではありません。女性との絡みがあります。苦手な方はご遠慮ください。
BLも挑戦しています…。抵抗のない方は「colors」をどうぞ。
オムニバス形式で更新は不定期ですが、更新時刻は0時となってます。どうぞお楽しみください。
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「先に言っとくね。これね、売り物じゃないんだ。全部試作品。だから値段はないんだよ」
「でも。それがあるからこそ、ですよね?大事なものではないんですか?」
「うん、大事だよ。どれも可愛いおれのこどもみたいなもんだよ。本当のこどもはいないけどさっ」
「だったらなおのこと、いただくなんて出来ません」
「カズは本当になんにも直生ちゃんに言ってないんだなあ……」
相葉さんが困った顔で言った。
「カズは今は大宮工業の顧問だけど、元々何やってるか知らない?」
「知りません…」
「そっか……じゃあ話はそこからだな。よし、戻ろう。カズにちゃんと聞いて、それで納得いってからだ。おいでっ!」
ぐいっと手を引っ張られて慌てて立ち上がる。
ずんずんと進んでいく相葉さんを呆気に取られて見上げると、相葉さんは微笑んでいた。
「カズっ!」
硝子障子をガラガラっと開けたその先では、二宮さんと美奈さんがにこやかに談笑していた。
その姿に、ズキンと心が痛む。
二宮さんと美奈さんは、お似合いだった。美男美女。どことなく立ち居振る舞いがスマートで……私なんかよりも美奈さんみたいな美人との方が、二宮さんの美しさがより際立つ。
「カズっ!ちゃんと説明してよ、最初から!」
「やっぱ駄目か」
「もう!わかってるなら最初から話しといてよね?恥ずかしがってる場合じゃないんだよ?無駄に直生ちゃんを不安にさせてるってわかってる?」
「わーかったよ、もう。うるさいなあ」
ポンポンと交わされる会話がふとやんで、二宮さんが私を見据えた。
「ごめんな、直生。別に隠してたわけじゃない。ただ、タイミングがなかっただけだ」
二宮さんが自分の隣をポンポンと叩いて、私は吸い寄せられるようにとなりに座った。
「俺、コンサルやってんだ」
「コンサル…?なんのですか…?」
「最初は写真から始まったんだ」
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新入社員として入社した大宮工業に不満があったわけじゃなかった。仕事は楽しかったしやりがいもあった。
入社してすぐ付き合うことになったふたつ歳上の麻里子とも、特に何も問題なく、ふ普通のおつきあいをしていた。
分岐点になったのは、俺が花形製品の開発に携わるようになったことだ。
社を挙げてのプロジェクト。異例の若さと言われたサブリーダーに就任し、俺は仕事中心の生活になっていった。
平日は深夜まで働き、休日も出勤、そうでなければ体を休めるためにただただ眠った。
麻里子は時折そんな俺に不満をぶつけ、それでも俺は仕事に打ち込んだ。純粋に、楽しかった。
業界初となる機能を織り込んだ製品を作り上げいよいよプレゼンとなり、その時事件は起きた。
門外不出のはずのその新機能に関わる技術が、ライバル社に漏れていた。ライバル社はさらにそこに魅力的なオプション機能を加えてそれなのにうちよりもコストは低い。
プレゼンは完敗だった。
そしてそれよりも俺を打ちのめしたのは、リークしたのは直属の上司、サブリーダーとして俺が付いていたメインリーダーだった。
若かったな、と今ならば思う。当時の俺にかけてやる言葉はいくつもある。
でもあの頃の俺は人生最大といっても過言ではないほどのショックを受けて、組織で働くことに懐疑的になり始めた。
さらに、忙しさにかまけ、そして愛情に甘えて放置していた結果、麻里子は一回り以上年上の会社を営む男性へと心変わりし、電撃結婚をした。
心の拠り所を全て失くした俺は、その頃自暴自棄に陥っていた……