にのちゃんとの妄想小説です。BLではありません。女性との絡みがあります。苦手な方はご遠慮ください。
「和也さん!」
自宅で寛いでいたのだろう。軽自動車からラフな格好の城島がバタバタと降りてくる。
「悪い、急に」
城島はすぐに本城に気付いた。本城は真っ青な顔で城島に頭を下げる。
「直生さん…ひどい顔色で……さあ、乗ってください。申し訳ありませんね、今日はこんな車で…」
「すみません…城島さん…」
本城がもう一度頭を下げようとしたから俺はその肩を押さえた。
頭動かしたら辛いだろうが…。
「お前が謝ることじゃない」
「そうですよ直生さん。悪いのは和也さんです」
「は?」
城島を見ると、城島は険しい顔で俺を見ていた。
「全部翔さんから聞いてますよ?いったい何をしてるんですか。取引先とはいえよその男性とふたりにさせて、そのうえこんなふうになるなんて……」
「後で聞く」
城島のお小言を遮って俺は本城を立たせようとした。
「ちょっと…お手洗いに…」
本城がハンカチを取り出し口に当てた。
駅の名残で時計台の近くにはトイレが残っている。手を引きそこへ連れて行く。
半分小走りで個室へと消えて行くのを見届けて溜め息をつくとそこへ再びお小言がとんできた。
「和也さん!仕事の時のようにどうして先回りできないんですか⁈ 」
「……仕事じゃないからだよ」
「ほんっとに…こういうことになると途端に意気地の無い…」
「……うるせーよ」
「いいえ、言わせてもらいますよ、今回ばかりは。どうしてちゃんと言葉で示してあげないんですか。女の子っていうのは…」
「わかんなかったんだよ、俺にも……」
城島が口を噤んだ。
「俺じゃない奴の隣にいるの見て……やっとわかったんだ……情けないけど」
ぽかんとしていた城島の表情が徐々に柔らかくなり、そして目尻にたくさんの皺が寄った。
「恋なんてものはそういうものですよ。情けなくなんかありません」
何度か水を流す音がした後、本城がふらふらと出てきた。その顔色は紙のように白い。
「す…みませんでした…」
ハンカチを口に当てたまま呟く。
そっと肩を抱き車へと誘導する。腕に触れる本城の首がぐっしょりと濡れて冷たかった。
後部座席に並んで座り頭を自分の方に凭せ掛け、眼鏡を外してやる。
「寝ていいから」
そう告げると本城は素直に目を閉じた。